【完結】旦那様、離縁後は侍女として雇って下さい!

ひかり芽衣

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29:マストの提案

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「……ちょっとね。家のために覚悟を決めてこの屋敷へやって来たというのに、予想外のことが起こって困っているの」

「そうなのですか……」

ローラは変わらずフリージアを見つめながら、そう言った。

(もう少し深く聞きたいけれど、ローラ様がぼかして言ったのだから、ただの侍女である私はこれ以上口を出すべきではないわね……)

憂いを帯びた表情まで綺麗なローラを見ながら、マリーはそう思った。
そして、その代わりに他の質問をする。

「フリージア様とリリー様に、癒されにいらっしゃったのですか?」

ローラの訪問理由がわからずにモヤモヤしていたマリーは、つい出過ぎた質問をしてしまった緊張にゴクンと唾を飲み込んだ。

「ええ……。それもあるわね……。他の計算もあったりするけれど……」

「……他の計算ですか?」

驚いた顔で尋ねたマリーに、ローラは言う。
そこで初めてローラはマリーの方を見て、悪戯な笑みを浮かべた。

「ええ。子ども達に気に入られたら、伯爵様も結婚に積極的になって下さるのではないかと思って」

マリーは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに眉を落とした。

(ローラ様のこの表情では、本気なのかどうかの判断がつかないわ……)

困った顔のマリーを見て、ローラは苦笑いする。

「このような話をしてごめんなさいね。今日の私は、あまり情緒がよくないようだわ。今日はもう失礼するわね」

ローラが扉の方へ向かうと、ちょうど扉がノックされた。

扉が開き入って来たマストは、ローラを見て驚いた顔をする。
しかしすぐに真顔になり、マリーをチラッと見てからローラへ視線を戻した。

(よりによって何でこの部屋で鉢合わせをするのよ……)

マリーは思わず眉間に皺を寄せる。

「何故君がここにいるのだ?」

「将来私の子供となるかもしれない子達ではありませんが。仲良くなろうと、遊びに来たのでございます」

「……だからそれは……」

そう言いかけてマストは口をつぐんだ。
そして、一つ咳払いをしてから再び口を開く。

「……退室するところだつたのだろう? 足を止めさせて悪かった」

ローラをジッと見るその目は、"早く去れ"とまるで言っているようだった。

そんな二人のやり取りを見ながらマリーは思った。

(今、旦那様が少し狼狽えたわ! このような旦那様、初めて見た……)

マリーは"チクン"と胸が痛むのを感じる。

(4年も一緒にいて、私は一度も旦那様を狼狽えさせたことがないのに……)

なんとも言えない感情がマリーの中に流れ込む。
そしてふと思った。

(旦那様とローラ様はお似合いなのかもしれない……)

マリーがボーっとしていると、マストがマリーの目の前に来ている。

「あっ、申し訳ありません!」

子ども達の元へ行く進路を妨害してしまったと思い、マリーは慌てて謝罪し頭を下げて避けた。

「子ども達は寝ているのだな」

「はい」

マストは訪室時に子供達が寝ている時は、すぐに退室する。
今日も、いつものようにすぐに退室するだろうと思っていたがその気配はなく、マリーは視線を感じて頭を上げた。

すると、ジッとマリーを見るマストと目が合う。

"ドキッ"

一瞬胸が高鳴ったのは気のせいだろうか?
気のせいであって欲しい……

思わずパッと視線を逸らしたマリーに向けて、マストは信じられないことを口にした。

「マリー、私と友達になってはくれないだろうか?」












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