【完結】旦那様、離縁後は侍女として雇って下さい!

ひかり芽衣

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50:マリーとローレル

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「子供達には明日の朝会えば良い。とても喜ぶぞ。私は今から仕事を片付けるから何時に休めるかわからん。マリーは客間でゆっくり休め。明日は一日中家族でゆっくり過ごそう」


"ぐうぅ~……"


マリーの腹の虫は空気を読んだかのように、とても良いタイミングで鳴いてくれる。

「ああ、すまない。すぐに食事の用意をさせよう。準備が出来るまでに風呂に入れ」

「はい……ありがとうございます」

恥ずかしくてはにかんでいるマリーを気にも止めず、マリーの腹の虫の音を聞いてすっかりいつものモードに戻ったマストは、淡々と指示を出すのだった。






「マリー!!!」

マストは執事長とアリスを部屋へ呼んだ。

「マリーは再び私の妻となる。そのつもりでつかえるように。アリス、ローラがいなくなり手が空いたな? また以前のようにマリーつきの侍女を頼む」

「はい、喜んで!!!」

アリスは涙ぐみ、マリーの帰還と再婚を喜んでくれた。



それからマリーは、張り切ったアリスに風呂に入れられた後で着飾られそうになり必死に止めた。

「アリス、もう眠るだけだから……」

「あっ、そうですね! 今日は我慢します! 明日はとびきりお洒落しましょうね! ……しかしすっかり痩せてしまわれたので、服のサイズが合いませんね……。明日は誤魔化せるドレスを……」

アリスがブツブツ言っていると、食事の準備が出来たと声がかかった。

「アリス、私、お腹がぺこぺこなの……」

「あっ、はい! すぐに支度を終わらせます!」




こうしてマリーは久しぶりにきちんとした食事にありつけ、心だけではなく身体の中から満たされていた。

「ふぅ。……あの、まだそれほど遅い時間ではありませんよね? もし可能なら大奥様にお会いしたいのですが、難しいでしょうか?」

「奥様、もう使用人ではありませんよ?」

「あっ、ごめんなさい! あっ、またっ!」

そんなマリーを見て執事長は微笑んだ。

「明日ゆっくり挨拶をされてはいかがですか?」

「明日の時間を作るために、旦那様が今一生懸命仕事を片付けて下さっているの。だから私も、今日出来ることは今日しておきたいなと思って。……あとやはり、大奥様とは少しでも早くお話をしたいの」

マリーの真面目な顔に執事長は頷く。

「わかりました。確認をして参りますね」






マリーが食後のお茶を飲んでいると、執事長は戻って来た。

「大奥様は、お会いなられるそうです」

マリーは真面目な顔で、大きく頷く。






「大奥様、戻らせていただきました」

ローレルの部屋には、ローレルとマリーの二人だけだ。
ローレルは窓際の椅子に腰掛け腕と足を組み、窓の外を見ている。

「勝手に戻って来たのね……」

「……申し訳ありません」

マリーは少し離れた所に立ったままで言う。

「先ほどマストが報告に来たわ。4人で幸せな家族になるから、もう邪魔はするなと」

「……」

「男児は諦めろと。またマリーを虐めたら許さないとも……」

「……」

ローレルの表情はわからないが声のトーンは暗く、落ち込んでいるのが痛いほどに伝わって来る。
ローレルはひたすら、"後継の男児が欲しかった"、ただそれだけなのだ……。

「お茶なんて出さないわよ。言いたいことがあるならさっさと言いなさい。……今なら聞いてあげるから」

ローレルの投げやりな言い方に、ローレルの心痛をマリーは感じる。

「……旦那様とフリージアとリリーと、今度こそ幸せになります。ただ私は、まだ男児を儲けることを諦めてはおりません。しかし、子宝は天からの授かりものです。授かるのも、元気に生まれて来るのも、奇跡です。なので、絶対の約束は出来ません」

そこで一瞬、部屋はシーンと静まり返った。

「……私の機嫌を取るために言っているの?」

「いえ、違います。私の本心です。ただどうなるかはわかりませんので、期待はせずに暖かく見守って頂けると幸いです」

マリーの誠意がローレルに伝われば良いと思い、真剣に言った。

(大奥様のことは嫌いになれないのよね……。なんだかんだ、離縁の時に私を追い出さなかった。そして、ギリギリまで追い出すのを待って下さったわ……。父があんなことをして、本当なら私の顔なんで見たくないでしょうに……。旦那様への接し方を見ても、愛情を感じるし……)

その時ふと、ローレルはマリーを見た。

「……」

ジッと見るだけで何も言わない。

「……もし良ければ、大奥様も私たちと新たな家族を始めませんか?」

「……はっ!? 何を言っているの!?」

ローレルは少し声を荒げた。
マリーは動じず、言いたいことを続ける。

「フリージアとリリーは大奥様の孫です。……とても可愛いですよ? 私は大奥様とも一緒に、子ども達の成長を喜んでいくことが出来たら嬉しいと思っています」

マリーは自分の母親であるマーズには、極力子ども達を合わせたくなかった。
常にマイナス思考で自分の考えを押し付けるマーズが、子ども達に悪影響を及ぼすことがあっても良い影響を及ぼすことはないと思っているからだ。

しかし、ローレルは違う。
確かに今は跡取りの誕生に執着をしている。
しかし、愛情が全くない人にはどうしてもマリーには思えないのだ。

「……もし、良ければ……」

マリーは強制しているように感じて欲しくなくて、控えめに重ねた。

(無理なら無理で良い。仕方がないわ。ただ、思っているだけでは伝わらないから、きちんと伝えないと……)

マリーは今回の再婚にあたり、"相手に伝える努力"をすることを自分に誓ったのだ。


「話が終わったのなら出て行ってちょうだい」

ローレルは再び真っ暗な窓の外を見ると、それだけわ言った……





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