11 / 19
第十二話
しおりを挟む
「マメゾン」の客の一人が、再来年の鉱山の売上で払うからと言い出した。
運転手として屋敷を見た時、破綻を感じた。
出迎えの侍従のお仕着せが体に合ってなかったのだ。
収入が減っても生活を小さく出来ないなんてことではない。
「祖父も父親も好きに金を使っていたんだから、自分も大丈夫。そう思っているのがたくさんいるのだ。
没落していくのは、なにかまずいことをやった連中。普通にやっている自分は大丈夫。
大丈夫なものはないのだ。領地は金の卵じゃないのだ。
「エリザ。シスレー伯爵の前伯爵夫人のことだが」とジークがお茶の時間に話し出した。
「えぇ、病気でしょうか?結婚式で見かけませんでした」
「それが追い出されたそうなんだ」
「追い出された?」
「そうだな、追い出されたって言うのは大げさだな」とジークは言うと
「なんでも、ラーラさんが、言ったそうなんだ『お母様が下品で目立つからわたしが庶子だとみんなが思いだす。お母様がいなければいいのよ』って。これはあそこの使用人からの情報だ。それで領地の屋敷に閉じ込められていたそうなんだが、逃げ出したとか。それでも捕まって王都の屋敷で、閉じ込められているそうだ。まぁそんだけなんだが・・・」
「そうですか?まぁどうしようもないですね、わたしとしては。そうですね。意地悪をされたと言えばそうですが・・・まぁ意見、価値観が違いましたから」
◇◇◇◇
ジーク目線
ラーラの母親のことをエリザに話してみた。過去のことを思っている様子に安心した。
あの母親は、結婚式の頃なんとわたしに金を借りに来たのだ。
衣装を新調する金をテリウスが出さない。ラーラもそれに賛成しているとかで・・・
なんの担保もない女に貸す金はわたしが個人的に出した。
一応、署名も貰ったがなんの役にも立たないだろう。
◇◇◇
テリウス目線
エリザのやつ、貯め込んでいた。確かに領地の利益はまだ確定していない。だが、取り立てればいいだけの話だ。
子供の頃から、父は本家を羨ましがっていた。全て持っていると、言っていた。
そしてわたしが婚約者になると、夢を語り始めた。
曰く、屋敷を立て直そう。いい馬を買おう。王都の夜会に出て王族に挨拶をして・・・領地にお招きしよう。
ところが、現実は違っていた。伯爵は厳しくわたしを評価して後継は、エリザだと決めていた。
王城で文官をしているわたしではなく学院で学んでいるエリザを評価したのだ。
「いいかね、テリウス。今は耐える時代だ。全てを一族で使えた時代は終わった。平民の台頭は止められない。だから出来るだけ、頭を低くして耐えてやり過ごすんだ。
それにこの十年のうちに不作の年がある。それに備えねばならない。
それが過ぎれば領地経営で新しいことをやってもいい。
確かにずっと豊かな実りが続いている。だが、長い領主の記録から判断するとその周期が来るのだ。
だから、手堅い経営をするのが大事だ。だから、ここはエリザが継ぐ。
君はエリザとラーラを守って欲しい。正直、ラーラが可愛い。安心出来る相手を探しているが、どうも上手く行かない。エリザはラーラの面倒をずっと見てくれると思うし、君も大丈夫だろう。だが、それではエリザの負担が大きすぎる。テリウス。君は顔も広いし、人付き合いが上手い。だからエリザを助けてやって欲しい」
ふん、所詮、本家のお坊ちゃんだ。分家の妬みを理解なかった。
貯めていたお金で結婚式を挙げた。豪華な客。まぁ義祖父のおねだりが面倒だったが、それなりの旧家と縁が出来た。
弟の縁談がまとまりそうだと連絡があった。少し顔合わせに見えを張った甲斐があると言うものだ。
大丈夫、持参金で埋め合わせをすれば問題ない。
運転手として屋敷を見た時、破綻を感じた。
出迎えの侍従のお仕着せが体に合ってなかったのだ。
収入が減っても生活を小さく出来ないなんてことではない。
「祖父も父親も好きに金を使っていたんだから、自分も大丈夫。そう思っているのがたくさんいるのだ。
没落していくのは、なにかまずいことをやった連中。普通にやっている自分は大丈夫。
大丈夫なものはないのだ。領地は金の卵じゃないのだ。
「エリザ。シスレー伯爵の前伯爵夫人のことだが」とジークがお茶の時間に話し出した。
「えぇ、病気でしょうか?結婚式で見かけませんでした」
「それが追い出されたそうなんだ」
「追い出された?」
「そうだな、追い出されたって言うのは大げさだな」とジークは言うと
「なんでも、ラーラさんが、言ったそうなんだ『お母様が下品で目立つからわたしが庶子だとみんなが思いだす。お母様がいなければいいのよ』って。これはあそこの使用人からの情報だ。それで領地の屋敷に閉じ込められていたそうなんだが、逃げ出したとか。それでも捕まって王都の屋敷で、閉じ込められているそうだ。まぁそんだけなんだが・・・」
「そうですか?まぁどうしようもないですね、わたしとしては。そうですね。意地悪をされたと言えばそうですが・・・まぁ意見、価値観が違いましたから」
◇◇◇◇
ジーク目線
ラーラの母親のことをエリザに話してみた。過去のことを思っている様子に安心した。
あの母親は、結婚式の頃なんとわたしに金を借りに来たのだ。
衣装を新調する金をテリウスが出さない。ラーラもそれに賛成しているとかで・・・
なんの担保もない女に貸す金はわたしが個人的に出した。
一応、署名も貰ったがなんの役にも立たないだろう。
◇◇◇
テリウス目線
エリザのやつ、貯め込んでいた。確かに領地の利益はまだ確定していない。だが、取り立てればいいだけの話だ。
子供の頃から、父は本家を羨ましがっていた。全て持っていると、言っていた。
そしてわたしが婚約者になると、夢を語り始めた。
曰く、屋敷を立て直そう。いい馬を買おう。王都の夜会に出て王族に挨拶をして・・・領地にお招きしよう。
ところが、現実は違っていた。伯爵は厳しくわたしを評価して後継は、エリザだと決めていた。
王城で文官をしているわたしではなく学院で学んでいるエリザを評価したのだ。
「いいかね、テリウス。今は耐える時代だ。全てを一族で使えた時代は終わった。平民の台頭は止められない。だから出来るだけ、頭を低くして耐えてやり過ごすんだ。
それにこの十年のうちに不作の年がある。それに備えねばならない。
それが過ぎれば領地経営で新しいことをやってもいい。
確かにずっと豊かな実りが続いている。だが、長い領主の記録から判断するとその周期が来るのだ。
だから、手堅い経営をするのが大事だ。だから、ここはエリザが継ぐ。
君はエリザとラーラを守って欲しい。正直、ラーラが可愛い。安心出来る相手を探しているが、どうも上手く行かない。エリザはラーラの面倒をずっと見てくれると思うし、君も大丈夫だろう。だが、それではエリザの負担が大きすぎる。テリウス。君は顔も広いし、人付き合いが上手い。だからエリザを助けてやって欲しい」
ふん、所詮、本家のお坊ちゃんだ。分家の妬みを理解なかった。
貯めていたお金で結婚式を挙げた。豪華な客。まぁ義祖父のおねだりが面倒だったが、それなりの旧家と縁が出来た。
弟の縁談がまとまりそうだと連絡があった。少し顔合わせに見えを張った甲斐があると言うものだ。
大丈夫、持参金で埋め合わせをすれば問題ない。
798
あなたにおすすめの小説
『仕方がない』が口癖の婚約者
本見りん
恋愛
───『だって仕方がないだろう。僕は真実の愛を知ってしまったのだから』
突然両親を亡くしたユリアナを、そう言って8年間婚約者だったルードヴィヒは無慈悲に切り捨てた。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
その言葉はそのまま返されたもの
基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。
親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。
ただそれだけのつまらぬ人生。
ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。
侯爵子息アリストには幼馴染がいる。
幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。
可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。
それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。
父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。
幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。
平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。
うんざりだ。
幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。
彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。
比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。
アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。
まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。
《本編完結》あの人を綺麗さっぱり忘れる方法
本見りん
恋愛
メラニー アイスナー子爵令嬢はある日婚約者ディートマーから『婚約破棄』を言い渡される。
ショックで落ち込み、彼と婚約者として過ごした日々を思い出して涙していた───が。
……あれ? 私ってずっと虐げられてない? 彼からはずっと嫌な目にあった思い出しかないんだけど!?
やっと自分が虐げられていたと気付き目が覚めたメラニー。
しかも両親も昔からディートマーに騙されている為、両親の説得から始めなければならない。
そしてこの王国ではかつて王子がやらかした『婚約破棄騒動』の為に、世間では『婚約破棄、ダメ、絶対』な風潮がある。
自分の思うようにする為に手段を選ばないだろう元婚約者ディートマーから、メラニーは無事自由を勝ち取る事が出来るのだろうか……。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる