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海へ
44 海の離宮
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意外と工房の扉には鍵がかかっていなかった。そっと抜け出し、誰もいない廊下を進む。
廊下は暗くなかった。灯りを灯す魔法が封じ込められているんだろうか?ランプらしきものが並んで照らしている。
俺はあの人に連れてこられた方とは逆に伸びる廊下を進んでみることにした。単なる好奇心からだ!
しばらく行くと、声が聞こえて来た。身を小さくすると、どうやらそれは扉を挟んだ向こう側の話しであるようだった。
そっと聞き耳を立てる。
「まったく、坊ちゃんのわがままにも困ったものだわ」
「本当よね、地上の人間をあんなに誘拐してきて。どうするつもりなのかしら?」
はぁ、とため息が聞こえた。窓がついている。そっと中の様子を覗き込むと、メイドらしき人が2名、野菜の皮むきをしていた。
「人間に食べさせる料理も作らないといけないし」
「面倒よねー。王様にバレたらどうするのかしら?」
ここは厨房だったようだ。
「かなり不味いんじゃないかしら?今でもここに幽閉されているようなものでしょう?」
「わがままが過ぎるのよね。だから誰からも見放されて!下で働かされる私達の身にもなって欲しいわ」
「だよねー」
あの人はどうやらここに幽閉されているらしい。しかも王様の関係者、ってことはかなり偉い人なんだろう。
しかもわがままかー……。
俺はそっとその場を離れた。どうもあの人はみんなに好かれていないみたい。ちょっと可哀想だな。
そっと進んでいくと、兵士が何名か部屋で休憩している。
「ったく、こんな離宮!左遷もいい所だよな!」
「ったく!わがまま坊ちゃんのお供なんて、ついてねーな、俺達も」
「あの人間達どうすんだ?」
「知らねー!ほっとけば?そのうちバレても叱られるのは坊ちゃんだ。俺たちは知らぬ存ぜぬ、命令に従いました、だろ」
「ちがいねーな」
笑い声、あの人は坊ちゃんと呼ばれていて……そして皆んなからあまり慕われていない。
少し可哀想だなぁ……。俺より背も高くて足も長くて……大人なのに、そんな事を思ってしまった。
静かにその場を離れる。ここの兵士は見張りをしないんだ。サボっているのかな……?誰にも襲われたりしないから良いのかな……?
明かりが少なくなり、廊下は薄暗くなる。そろそろ戻らないと帰り道が分からなくなる頃、明かりの付いていない部屋が見えた。
暗い部屋だったが、ガラスで囲まれて外の世界が見える部屋だった。
「!?」
誰かいる!床にうずくまって暗闇の中、誰かが小さな声で歌を歌っている。
あの人だ!
俺は口を押さえて隠れた。静かな空間は呼吸の音さえ響く気がしたから。
何の歌なのか分からなかったが、切ない響きが聴こえて来る。
「……そう。誰も来ないんだね」
小さな呟き。誰と喋っているんだろう?
「父上も、母上も、兄上も……誰も、誰も来ないんだね」
歪んだガラスの向こう側にしましまの魚がいるのがやっと見えた。もしかしてあの魚と話してるの??
「僕は……1人だ」
すらりと長い手足を小さく小さく折り畳んで丸い卵のようにうずくまる。
しばらくするとまた歌が聞こえ始めた。何かを慰めるように、そっとそっと。
廊下は暗くなかった。灯りを灯す魔法が封じ込められているんだろうか?ランプらしきものが並んで照らしている。
俺はあの人に連れてこられた方とは逆に伸びる廊下を進んでみることにした。単なる好奇心からだ!
しばらく行くと、声が聞こえて来た。身を小さくすると、どうやらそれは扉を挟んだ向こう側の話しであるようだった。
そっと聞き耳を立てる。
「まったく、坊ちゃんのわがままにも困ったものだわ」
「本当よね、地上の人間をあんなに誘拐してきて。どうするつもりなのかしら?」
はぁ、とため息が聞こえた。窓がついている。そっと中の様子を覗き込むと、メイドらしき人が2名、野菜の皮むきをしていた。
「人間に食べさせる料理も作らないといけないし」
「面倒よねー。王様にバレたらどうするのかしら?」
ここは厨房だったようだ。
「かなり不味いんじゃないかしら?今でもここに幽閉されているようなものでしょう?」
「わがままが過ぎるのよね。だから誰からも見放されて!下で働かされる私達の身にもなって欲しいわ」
「だよねー」
あの人はどうやらここに幽閉されているらしい。しかも王様の関係者、ってことはかなり偉い人なんだろう。
しかもわがままかー……。
俺はそっとその場を離れた。どうもあの人はみんなに好かれていないみたい。ちょっと可哀想だな。
そっと進んでいくと、兵士が何名か部屋で休憩している。
「ったく、こんな離宮!左遷もいい所だよな!」
「ったく!わがまま坊ちゃんのお供なんて、ついてねーな、俺達も」
「あの人間達どうすんだ?」
「知らねー!ほっとけば?そのうちバレても叱られるのは坊ちゃんだ。俺たちは知らぬ存ぜぬ、命令に従いました、だろ」
「ちがいねーな」
笑い声、あの人は坊ちゃんと呼ばれていて……そして皆んなからあまり慕われていない。
少し可哀想だなぁ……。俺より背も高くて足も長くて……大人なのに、そんな事を思ってしまった。
静かにその場を離れる。ここの兵士は見張りをしないんだ。サボっているのかな……?誰にも襲われたりしないから良いのかな……?
明かりが少なくなり、廊下は薄暗くなる。そろそろ戻らないと帰り道が分からなくなる頃、明かりの付いていない部屋が見えた。
暗い部屋だったが、ガラスで囲まれて外の世界が見える部屋だった。
「!?」
誰かいる!床にうずくまって暗闇の中、誰かが小さな声で歌を歌っている。
あの人だ!
俺は口を押さえて隠れた。静かな空間は呼吸の音さえ響く気がしたから。
何の歌なのか分からなかったが、切ない響きが聴こえて来る。
「……そう。誰も来ないんだね」
小さな呟き。誰と喋っているんだろう?
「父上も、母上も、兄上も……誰も、誰も来ないんだね」
歪んだガラスの向こう側にしましまの魚がいるのがやっと見えた。もしかしてあの魚と話してるの??
「僕は……1人だ」
すらりと長い手足を小さく小さく折り畳んで丸い卵のようにうずくまる。
しばらくするとまた歌が聞こえ始めた。何かを慰めるように、そっとそっと。
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