【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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海へ

43 キューブを作る人達

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「あいつは人じゃない、人魚なんだ」

「えっ!」

 うそ!足があったよ!全然気がつかなかった。

「……人魚は陸に上がる時、ヒレを足に変える魔法が使えるんだ」

「そ、そうなんだ……」

「あいつが使う言霊魔法であいつの命令を聞かされちまうんだ」

「えーー!」

 あの自分の意思で動いてない感じ、やっぱり何か変だと思ったんだ!

「お前もクラーケンに引きずり込まれたクチか?あのクラーケンもあいつに操られてるらしい」

「えーーー!」

 じゃああの怪物はさっきの人……人魚の人(?)が全部原因ってことなのか。

「一体どんな人なんですか?」

「俺たちも良くわからないんだ。ここでガラスを作れって言われてて、時間になったら飯が出てくる。あのわけのわからない魔法で見つかるとすぐにここに戻される」

「皆さん、ここで働きたくて働いてるんじゃないんですね?」

「ああ、お前と一緒で無理やり連れて来られて、ここにいる」

 じゃあみんなで脱出したら良いんだ!

「この宮殿とやらが海の中だっちゅう問題があるがな……」

 ありゃあ。しかもかなり深そうだ。もし、出られる機会があっても何の準備もしないで外に出たら……ううっ考えるのはよそう。大変なことになっている深海魚の映像がよきったが、頭を振って追い出した。

 俺はそれでも地上に帰りたい。だって絶対心配してるもの。もしかしたら、何かに八つ当たりしているかもしれない。海に飛び込もうとしてるかもしれない。

「ギアナ様、泳げないのに」

 あの人、カナヅチなんだ。でも勢いで飛び込んじゃうかもしれない。

「帰らなくちゃ」

 辺りをぐるりと見渡し、何かここから逃げ出せる方法を探そう。あまり仕事を言いつけられていない俺は手がかりを探す。
 工房はその名の通り、ガラスのキューブを作るところだ。

「コレばっかり作るの?」

「ああ、コレばっかりだ。積み上げて、巨大な窓を作るんだ。外が見えて美しい宮殿になるって。そんな事ないと思うんだがなぁ」

「俺もいまいちだと思う……」

 海水の水圧に耐えるためにキューブ状のガラスを積んでいるんだろうけど綺麗にはみえない。無理矢理水中が見える大きな窓を作っても美しい物にはならない。

「水中でガラスを使って見えるようになることが価値が高い、素晴らしい物だと言うことになっているようなんだ」

「じゃあ俺があったあの人も、そう思ってそうしてるってこと?」

「多分な」

 はぁ、とため息をつきながら、型に大量のドロドロガラスを流し込む。きれいに精製しているわけでもない。気をつけて気泡を消している訳でもない。

「帰りてぇなぁ……」

 働かされている彼らも職人ではないし、意欲もない。食事はあるが、給料もないし自由もない。
 そんな環境でまともな物は出来上がってこない。そんな悪循環しかない。

「脱出しなきゃ……」

 俺は工房をくまなく歩き回った。



リトーここ、地面あるよ!

 1番底までついた時、突然ザックが話しかけて来た。

「えっ!海底ってこと?」

そう!掘れば良いって思わない??

「掘れる?凄く長い距離になりそうだよ?」

やってみる!

 ぴょんともぐらの姿で現れて床板をバリバリと壊してしまった。

「イフリート様を連れて帰りたいから、水につからないで外まで出たいんだ」

 俺も水に濡れたくないから、用心して掘ってみるねー!お尻をぷりぷりしながら、ザックは凄い勢いでトンネルを作りながら進んで行った。

「うーん!頼りになるなぁ!」

ザックに感謝しながら、ほかに何かないか、探す事にした。

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