【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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打倒!元実家!

94 ミレイの兄

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「その決断の遅さが、この惨状を加速させたのですよ!自覚はあるのですか!」

「そんな、私は……」

「一体あなた方は何をしたんです?!何をしてこんな事に、全てを失ったのですか?!」

 ドフレ侯爵は尋ね、理由をすっかり聞いてしまった。


「……なるほど。アマリリーとその子供達に無体を……」

「私は良かれと思って……長く平民として暮らして来たのであれば、貴族としてやって行くにはそれ相応の勉強が必要であると……」

「猛虎は優しいのですな。それに比べてあなた方は!」

 ジュディウスは立ち上がり、反論する。

「優しい?!何がですか!ここまで、ここまで我が家を追い詰めて、何が優しいのですか!」

「シュマリエは無傷ですよ!!」

 ジュディウスは、はっとするしかなかった。

「復讐なら、シュマリエを。貴方の大事な一人娘を、まず攻撃するでしょうね。親から引き離し、傭兵に追わせ、斬りつけ、川に落とすでしょう。貴方がアマリリーにしたように!」

 あのウィシュバーグの猛虎はそれができる男だ。何故しなかったか、それは人の心があったからだろう。

「あなた方はもっと誠意を込めてアマリリー一家に謝るべきだったんだ。なのに何をした?何もしなかったんだろう?自業自得と言えるな」

 ドフレ侯爵はジュディウスから、離婚の書類をもぎ取る。少し皺が寄った書類だったが不備はないようだ。
 
「私とて皆を守りたい。ジュディウス殿、爵位を譲ってしまいなされ、そのリト君とやらに。いや、猛虎殿に。」

「な、一介の商人に公爵家をか?!」

「彼は一介の商人の域を既に出ているよ。彼の許しが出たのなら、我が家でジュディウス殿とご両親の面倒くらいはみられるだろう。私から言えることはこれくらいだ」

 ドフレ侯爵は背を向ける。早く書類を出さねば、御用聞きの商会が潰れてしまう。そして一緒にドフレ家も。本当なら一瞬で潰せたのだろうけど、やはりここでも猶予はくれたんだろう。
 元々、生活苦に喘ぐミレイを呼び戻す時に必ず離婚させろと忠告してきたのも、御用聞き商会の頭取だった。

「ディライト公爵はどれだけの慈悲を自らの手で潰して来たのだろうな」

 あれではこの先、貴族としてやっていけぬな、穏和な者が多いウィシュバーグだから公爵でいられたのだろう。

「ああ、私は妹の婿を見る目が無かったのだな……この結婚に賛成したのも間違いだったのかもしれんな」

 ドフレ侯爵は速やかに書類を提出し、正式に2人の離婚は認められた。

 疲れた顔で家に帰ると、泣きながら御用聞きの商会の頭取が走って来て、無事に物が入ってくるようになったと頭を下げた。

「なんと……手回しの良いことだ」

 それでも近隣の領に大きな建物を作るために土地が買われた形跡があるとか、宿泊施設を作っただとかは聞こえて来る。まだまだ油断をしてはいけないし、ミレイやシュマリエには不自由な暮らしをさせねばならない。

「一生残る怪我をさせられないだけ、良いではないか」

 若い、まだ子供と呼べる時に死に目に遭わされ、手を斬られたなど。アマリリーの息子は哀れであり

「強いのだな」

 そんな彼らを恨む気持ちにはなれなかった。


 
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