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第124話 外伝㊴ 養子話 後編
しおりを挟む後日、スーツを着た大雄さんと養子に望まれた組員、そして私の三人が八百屋夫妻と対峙する事となった。
どこから入手したのか、大雄さんのスーツには弁護士バッジが光っていた。
「さて、この文書だけれども、こいつを正式に養子に迎え入れ、こいつを虐げることなく…は当たり前なんだが、実子と同等かそれ以上に可愛がることだな。そして、主人の死後だが遺産はこいつが引き継ぐこととする」
「実子がいるのに何故?」
「それはこちらが聞きたいことです。実子がいるのに、養子に迎えるなどどういうことですか?何か理由があるのでしょう?違いますか?」
「養子の話を聞いた時には子供がいないと言っていたのに、嘘だったのですね?」
嘘ついてたの?サイテー!
「ああ、そうだよ。お前を養子にしてタダで働かせようとしてたんだよ!そして遺産は実子に渡るって寸法さ。既に弁護士先生を通しての遺書まで作成済みだから無駄だ」
「それはどうかな?うちの顧問弁護士の先生によると、嘘を吐いている時点でその契約は無効となるそうだ。だから、あんたがたはこの書類の通りにするほかないんだよ!」
「クッ、お前!弁護士なのか?そのバッジは本物なのかよ?」
本物だろうな。顧問弁護士さんからお借りした。
「バッジは本物だ。ただし、俺は弁護士じゃあない。白虎組の三代目組長白川大雄だ。うちのもんを馬鹿にするような小賢しいやつがいるからわざわざ出向いた」
わざわざ出向いたんだよ?わざわざ。
八百屋夫婦は顔が青白くなったけど、もう手遅れ。自分たちがどんな大きな組織の虎の尾を踏んだのか思い知ったんだろう。
「本来ならばミンチにしたいところなんだが、お前らはカタギだからなぁ。これから毎日無料で新鮮な野菜をうちの屋敷まで届けることで手打ちにしてやるよ」
新鮮な野菜が届くのは助かるなぁ。
「ただし、毎日だ。欠かさず、新鮮なものを!いきなり懲りて八百屋辞めるとは言わないよな?」
脅迫かな?辞めるなよってことだよね?
「引っ越すとかもないよな?お前らはこの街が好きだもんな」
えーと、これも『引っ越すんじゃねーぞ』ってことだよね?
「今回の事、言いふらしたりもしねーよな?噂になったら、真っ先にここを疑うからな?」
こういうのは稀で大体がうまくいった。
「養子とかそういう話は契約だから、必ず私か三代目に話すのよ!」
と組員たちには言いつけておいた。
カタギはこんな人たちばかりじゃないのよ?いい人だっているんだからね?私だって元・カタギだし。
大雄さんは「カタギってのはあんなのばかりなのか?」と言う。大雄さんが接するような人はちょっと足を踏み外している様な人ばかりだからなぁ。
大雄さんは私の両親も見ているし、カタギの人間のいい所は見てないなぁ。
「大雄さん、私もカタギだったんですよ?カタギにもいろんな人がいます。一概にひとまとめにしないで下さい」
と、大雄さんには伝えた。極道の人間もひとまとめにされたくないから。少なくともこの組の人たちはいい人たち!
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