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大学生 編
3人の先輩とオレと狼谷
しおりを挟む「そうだ。今日、部長体調悪いからここには来れないそうです」
みんなの話が一旦落ち着いて、それぞれの活動をはじめた後、そう伝言を伝えた。
「おや、最近は調子良さそうでしたが、そうですか」
八木先輩は、美少女アニメの設定資料集を読みながら、顔もあげなかった。
「まあ、ウマは脚とお腹周りが大変らしいですからな。な、馬渕どの」
根津先輩は神経質そうに、本に透明カバーをかけながら返事をした。
「まあ、ウマはウマでも、有馬どのの家は名家ですからな。吾輩のようなベータの家は、そこまで大変じゃないでござるよ。しかも有馬どのは、純血でござる。余計そういったものが出やすいのでござろう」
「そうなんだ」
馬渕先輩の言葉に、狼谷が驚いたように相槌を打った。
純血、といのは、現代では珍しい、別の種族を入れなかった家系の事だ。
有馬部長のように、ウマならウマだけと結婚し、子を残す。
それを次代にも受け継いでいく。
そうして、家系図にも、遺伝子的にも、他種族を入れない。
名家はやりがちだが、いかんせん、現代ではそうも言ってられなくなっている。
別の種族同士が子供を産んだ場合、より濃い方の遺伝子が出やすいのがわかっているのだが、そこに、神の気まぐれというか、たまたま、が存在する。
実際、オレもウサギ獣人なのだが、両親がウサギとイタチである。
オレしか生まれなかったからわからないけど、兄弟姉妹がいたら、イタチになっていたかもしれない。今だけは、イタチが良かったぜ……。
肉食だろうが草食だろうが、子供がどっちになるかはもはや神のみぞ知る、だ。
だから、余計純血の家は、他種族を入れたがらない。
だが純血も減ってきており、婚姻、その先の子孫が残せなくなって往生している、らしい。
上の階級の事はよく知らないが、いつか狼谷が教えてくれた。
「そういえば、狼谷氏は純血のオオカミなのでござるか?」
根津先輩が、そう言ったあとハッと口を押さえた。
いくら、気安くしてくれるとはいえ、肉食のアルファである。
失礼、と取られてしまったら、何をされてもオレたち草食じゃ束になっても勝てない。
ハッと、八木先輩の前に立ちふさがろうとしたが、狼谷は特に気にした様子もなく、
「いや、母さんがヒョウですね。でも、オオカミってなんか遺伝子強いらしくて、オオカミの血が入ると、オオカミになりやすいらしいんスよ。オレの兄貴もオオカミっス」
あっけらかんと教えてくれた。
ヒョウが入っているから、ちょっとネコっぽいのか。
狼谷の様子に、一同ホッとしたのは言うまでもない。
「だから多分、うちに草食が入ってもオオカミになるんじゃないスかねえ」
「こわ、オオカミの血……」
オレが思わずそういうと、狼谷は笑ってオレの肩に腕をまわしてきた。なんだ。
「まっ、センパイもいつかうちに遊びに来てよ、見事にオオカミだらけだから。でもきっと、みんなセンパイのこと気に入ると思うよ」
「流石に、肉食の家に草食一人で行くの憚られるから!そん時はみんな一緒に頼むよ!」
楽しそうにそう言う狼谷に、一生懸命当たり障りのない範囲で断る。
助けを求めるように三人の先輩を見ると、三人とも首を振っていた。助けてよ! 口には出さないが怖いに決まってるだろ!!
狼谷はそんな様子を見て、楽しそうに笑っていたのだった。
納得いかない!
「ああ、そうだ。有馬部長が来ないなら、二人に言っておかなければならない事があったんでした」
ふと、副部長もしている、八木先輩が口を開いた。
「来週、残念ながら我々は4人とも研究会に顔を出せないんですな。就職説明会やら卒論やら、みんな忙しくなってしまいまして。寂しいでしょうが、鍵は宇佐木氏に預けておきますぞ」
そうだ、この3人を含めて、部長たちは4年生。
もうそんな時期か。
別れの時期が近づいてきている寂しさと、また、自分もニ年後にはそうなるのかという実感が押し寄せてくる。
まあ、この時期までサークルに顔を出しているのもおかしくはあるのだが。
「わかりました。鍵預かりますね」
「二人とも、喧嘩せずに仲良く過ごすのですぞ」
「うむうむ、まあ、真面目な宇佐木氏なら大丈夫でしょう」
「そうですぞ、我々が居ないからと言って、神聖な部室に、じょ、女子を連れ込んだりしてはなりませんぞ、狼谷氏」
「わかってますよ。っていうかオレをなんだと思ってるんスか」
和やかな雰囲気の中、オレは鍵を預かった。
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