異世界追放《完結》

アーエル

文字の大きさ
1 / 7

前編:1

しおりを挟む

私の世界の神を迎えるためと連れてこられた神殿。
そこに居並ぶ各国の代表者たち。

「これはどういうこと?」

周りを見回すと、祭壇の前に神官長が真っ白な法衣を着てニコニコして待っていたが、私の言葉を聞いて「おや?」と不思議そうな表情をした。

「どうもこうも、迎えに来られる神にこの世界に残ると申し出て、そのままライナス王子と結婚なさるとお聞きしましたよ」
「そんなこと言ってない!!! 私は帰る! 帰るわ!」

そう叫んだ私にこの国の王子が無理矢理抱きしめてくる。

「そなたを元の世界に帰したくない」
「離して……‼︎」
「私がそなたの家族の分まで愛する。それではダメか?」
「離して……」
「そなたを愛しているんだ。このまま私のすべてを受け入れて……」
〈いい加減にせぬか!〉

私を抱きしめて離さないライナス王子を突然姿を現したエンリーが引き離した。
いつものように私や神官長だけが見える姿ではなく、実体をもって降臨された状態のエンリーに周りは驚いた。
私がこの世界に召喚という形で連れ去られてから、ずっと私のそばでライナス王子たちから私を守り続けてくれたこの世界の神。
それがエンリーだ。
このままでは私の世界の神が近づけないと教えてくれて、私は神殿で保護してもらい世界の脅威を退けることに成功した。

神殿から私が見えない壁で出られないことが幸いした。
そして、誰も私を触れないことも。
さっきも私は卵型の透明の膜に覆われてライナス王子には触られていない。
ただ、エンリーに膜は効かない。
エンリーが私を守るために付けてくれた加護だからだ。
それがなかったら、私は既成事実のために襲われていたのだろう。

「何をする!」
〈何、だと? お前は何を言っているかわかっているのか〉
「私は愛している、離したくない。そう言っているだけだ!」
〈そんな都合のいい話があると思っているのか?〉

エンリーにため息混じりに言葉を吐くと、ライナス王子は今度は私を標的ターゲットに選んだようだ。

「私を愛している。そうだろ?」
「ありえない」
「そんなことはない。お前は私に抱かれたいと願っているはずだ」
「そんなこと絶対ない」
「その男に騙されているだけだ。さあ、私の手を取って。『私を永遠とわに愛する』、そういえば今までの無礼をすべて許してやろう。さあ、今すぐ神の前でそう宣言しろ! 早くそう言え、私を愛したから元の世界に帰る気はないと」

ライナス王子が縋るように、甘えるように私に声をかけてくる。
しかし、エンリーが私を離さず、私もエンリーの腕から離れようとしないことに苛立っているようだった。

「帰して……私を家族のところへ帰して……」
「私がそなたのそばにいる。それではダメなのか⁉︎」
「……あなたが私の家族の、この世界が私の世界の代わりになると……?」
「ああ、そうだ」
「ふざけないで。あなたが、たとえ国王だろうと神だろうと、私の愛した家族の代わりになんかなるわけないじゃない!」

私の声が静かな会場に大きく広がった。

「なぜ、わからないの? 私を家族から、元の世界から誘拐して。帰られるってわかっていたのに、私の意思を無視して無理矢理結婚させようとして……」
「私はそなたを愛しているんだ。だから」
「私は、私は、あなたなんか好きでもない‼︎ この世界だって大っ嫌い! だいたい、私を誘拐した犯人たちを誰が好きになるもんかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】この年までほっといたのに、おっさんに用があるなんて碌なことじゃないよな。

BBやっこ
ファンタジー
冒険者として過ごしていた。 年くっただけだって 頼れるベテラン。ちょっと口うるさいとつく。 そんな日々を送っていた男に元にやってきた怪しい人物達? 俺は冒険者仲間を連れて、すぐに兄貴の領地へ向かった。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

元異世界転移者だけど、質問ある?

一樹
ファンタジー
かつて異世界転移したスレ主は、色々思うところがあってスレ建てをして、自分の身に何が起きたのかを語っていく。

転生ヒロイン

うめまつ
ファンタジー
乙女ゲーム、始まらなかったヒロイン

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

閉じ込められた幼き聖女様《完結》

アーエル
ファンタジー
「ある男爵家の地下に歳をとらない少女が閉じ込められている」 ある若き当主がそう訴えた。 彼は幼き日に彼女に自然災害にあうと予知されて救われたらしい 「今度はあの方が救われる番です」 涙の訴えは聞き入れられた。 全6話 他社でも公開

召喚された聖女はこの世界の平民ですが?家に帰らせていただきます!

碧井 汐桜香
ファンタジー
召喚された聖女は、この世界の平民でした。 バレないように異世界から召喚された聖女のふりをしながら、家に帰る機会を見計らって……。

よくある風景、但しある特殊な国に限る

章槻雅希
ファンタジー
勘違いする入り婿、そしてそれを受けてさらに勘違いする愛人と庶子。そんなお花畑一家を扱き下ろす使用人。使用人の手綱を取りながら、次期当主とその配偶者の生きた教材とする現当主。それをやりすぎにならないうちに収めようと意を痛める役所。 カヌーン魔導王国では、割とよくある光景なのである。 カヌーン魔導王国シリーズにしてしまいました(笑) 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

処理中です...