閉じ込められた幼き聖女様《完結》

アーエル

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後編

それは神の思し召しだろう。

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「はぁぁぁぁ」
「お疲れ様でした」

やっと神官長就任の儀式が終わり、思わず大きく息を吐き出した私を補佐官が労いの言葉をかけてくれる。
彼は前神官長・前前神官長・前前前神官長と長年補佐をしていた。
別に神官長が短命というわけではなく、ただの転任なだけだ。

「珍しいですね。最長任期を望まれるなんて」
「まあ……罪滅ぼしというか」

私はそう言いながら執務室へと向かう。
神殿で神に祈りを捧げていられるのは下の者だけ。
神官長や補佐となれば、神殿の運営や業務など様々な事務がある。

「私は、彼らの罪を摘発した神官の義弟の末裔だ。神官が神子みこ候補に選ばれて、まあ……2年後に辞退したんだけどね。後継者に親戚の子を養子にしていたことで義兄は神官になったんだが……。文官だった義弟、私の先祖は貴族籍をもっと厳しく管理していたら乗っ取りに気付けたんではないか。行方不明との報告を金で握り潰した文官をもっと早く捕まえられたのではないか。ずっとそのことを後悔していてね」
「……たしかに、被害者は祖父母と5歳の聖女候補。ちょっと調べれば、簒奪者が聖女様の家系ではないことがわかったでしょうね」

補佐はウンウンと繰り返し頷く。
そう、収賄事件こそがそもそもの発端。
そして、私欲にまみれた貴族たちが『男爵家の聖女様』に縋り、弱みを握られて……

「あの若き当主が善人であったから。彼の告発があって、あの事件が明るみになった」
「彼だけではないよ」
「え? ですが公式記録には」
「簒奪者のひとり娘も告発者だ」

そう、彼女も学園に入学して自身の家族が異常だと知った。
しかし、周囲の貴族たちは彼女の告発で聖女様の恩恵が受けられなくなると困るため、彼女の告発を妨害した。
そんな彼女が告発に使ったのが神殿の告解。
彼女はそれでも神官を信じていなかった。

「わたくし、今日も父や母に嘘をついてしまいました」

彼女の告白はその言葉から始まった。
おざなりの助言をする神官には、ほかの意地悪をしたなどという罪を懺悔した。
そして……先祖の義兄が彼女の告解に触れる。
親身に助言をする神官に彼女は両親の罪を告発した。
神官は約束した、「その少女のことなら気になっていた。私も調べてみよう」と。

そしてのち、件の若き当主が神殿で一心に祈りを捧げていた。
彼は娘と同じく少女の解放を望んでいた。
それは神の思し召しだろう。
彼に声をかけたのが娘と解決を約束した神官だった。
彼のさらに詳しい話から神官は義弟と動かぬ証拠を集めた。
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