手に入らないモノと満たされる愛

小池 月

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幸せと共存する不安

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 幸せと共存する不安
 先輩が車を買った。国産のコンパクトカー。どの家庭にもありそうな、黒の車。
「海外の車じゃないんですね」
「うん。運転のしやすさと、学生って言う自分の立場を考えて十分すぎる車だよ」
「高級車は自分で稼いで買いなさい」
小掠院長先生が笑って話す。
「あはは。確かに。父さん母さん、ありがとう。車があると便利で助かるよ。僕には十分すぎる車だよ」
先輩が大学入学前の春休みに車の免許を取ったことは知っていた。自分の車を持つなんて、本格的に大人だ。また先輩が知らない場所に行ってしまいそうで、心がチクリと痛む。助手席、可愛い女の人が乗っていたらどうしよう。
「斗真、乗って」
助手席を開けた先輩が、僕に声をかける。
「え、乗っていいんですか?」
「当然。助手席一番は斗真だろ」
「おい、お父さんじゃないのか」
「お母さんでもないわけね~」
「ごめんね。でも斗真って決めていたんだ」
斗真君には負けるわ~、と先生夫婦が笑っている。僕は、先輩の輝く笑顔にノックアウトされそうだった。これは、嬉しい。緊張して助手席に座る。
「ちょっと出かけてくる」
先生に先輩が声をかけている。運転席に乗ってくる先輩。
「デートに行こう」
いつもの優しい顔が、なんだか特別に見える。先輩は運転免許を取ってから、先生の車を練習として運転していた。一緒に乗っていなかったけれど、小掠先生が上手だと言っていたから安心できる。
「どこに行くんですか?」
「初めてだからね。斗真と一緒にランチでも行きたいな。市内の大型ショッピングセンターでどう?」
「僕、行ったことないから嬉しいです」
休日には時々デートしていたけれど、車デートは初。運転する先輩の横顔にドキドキするし、ハンドルを握る手の大きさにドキドキする。
「緊張している? 安全運転で行くから、安心して」
前を向いたまま、先輩が声をかけてくれる。
「き、緊張していない、あ、緊張しています。あの、先輩の運転は上手だと思います。そうじゃなくて、その、車って言う特別な空間で、運転中の隆介君を見ると、なんか、ドキドキします」
前を向いたまま、小さな声で「かっこいいから」とつぶやくと、沈黙。
「……想像以上の効果だよ」
しばらくして先輩が一言。横を見ると、隆介君は真っ赤だった。それを見て、僕も顔が火照る。ハンドルを握る腕の筋肉。血管。そんなところから色っぽさが漏れている。そっと横顔を見て、やっぱりカッコいいと思った。

 順調にショッピングモールに着いた。駐車場が広くて停めやすくて助かると先輩が言っていた。車を止めて、降りる前に車内でキス。どこかから見られているんじゃないかとドキドキした。「柱の陰に停めたから大丈夫」僕の心を読むように先輩が耳元で話す。イケナイ事をしている。でも、この車の中とゆう特別な空間が、僕たちを大胆にさせていたのかもしれない。

 二人でショッピングモールを歩いた。僕にコレが似合う、と買い与えようとする先輩をなだめて、レストラン街に向かう。ちょうどお昼過ぎ。多少空いてきている。一緒にパスタを食べた。半個室でオシャレな店内。先輩とランチセットにデザートも付ける。大盛りをぺろりと食べる先輩。一口の大きさに、いつも見ているはずなのに笑いが漏れた。いつものことが、特別に楽しく見える。そんな僕を見て、楽しそうな先輩。

 車で帰る途中、バラ園に寄った。本当にデートだと思った。沢山の種類の花の庭園。有料なだけあって、英国風というのか、噴水や彫刻と薔薇で整備されている。遊歩道も順路があった。外で男同士手をつなぐのは控えている。でも、ちょっと触れていたい。先輩の袖をちょっと掴む。先輩に近づいて、見えないようにそっと。気が付いた先輩が、ニコリとする。頬が赤い。心がポッと温かくなり嬉しくて頬が緩む。
「綺麗だね」
あ、バラ園に居るんだった。花より先輩ばかり見ちゃった。
「そうですね」
あわてて、周りのバラに目線を移す。
「斗真が、綺麗だね」
途端に、恥ずかしくて驚いて顔が熱くなる。いつもは可愛い、なのに。急にどうしたんだろう。
「外で見る斗真の目は特別綺麗。俺を真っすぐ澄んだ瞳で見られると、心臓が射貫かれたようになる。ため息の出る綺麗さだよ」
リアル王子だ。そんなセリフを、バラをバックに言うなんて。顔の熱が引かない。恥ずかしくなり先輩が見られない。袖を持っていた手を、大きな手が包む。
「これだけ近づいていれば、見えないよ」
車の中のキスといい、ちょっと大胆な行動に胸がドキドキした。車デート、すごい。バスや電車よりも、二人だけの特別感がある。

 夕食後の先輩の部屋。唇を重ねる。何も言わないけれど、その先を考えると、心臓がドキドキする。キスをしながら、鼻息が荒くなってしまう自分が恥ずかしい。先輩が顔を離すと、唇に唾液の糸が繋がっている。下に垂れて、切れていく様子を目で追う。

 優しく服を脱がされる。上半身が露になると、隆介君は必ず首元に顔をうずめて、僕の匂いを吸い込む。耳の裏とか、顎の下とか。嗅いだ場所を舐めていく。自分でも知らなかった皮膚の敏感な部分。息がかかるだけでゾクリとする。舐められるときに、我慢できず小さく声が出てしまう。それがすごく恥ずかしい。
 優しく触るのは、そこまで。鎖骨から下に手を伸ばすと、「可愛い」と言いながら、胸の飾りにしゃぶりつかれる。そこを触る先輩は、激しい。噛んで潰して、僕の背中が反るほど吸い上げる。たまらず、声が上がってしまう。ジュポンと口を離し、赤く充血した飾りに、芯が出来たことを歯で挟んで確認される。涙と悲鳴とともに、僕の全身がビクビクすると、満足したように一度キスをする。キスの間も両手で固くなった飾りを触る。爪で、先端をグリグリされると、一気に腰が揺れる。隆介君のキスに嬌声が飲み込まれて、発せられない声に、また興奮する。
 だんだん、僕の自由が利かなくなる身体。触られた皮膚から隆介君が徐々に侵入してきているのが分かる。ゾクリとする欲望。キモチヨクナロウヨ、色っぽい誘いが流れ込む。神経が、侵される。
 最近は、挿れる前に一回イかせてもらえる時と、「我慢してみて」と限界まで我慢を強いられる時がある。
 今日は後者だった。僕のをいじりながら後ろから前立腺を指で押される。それをされると強烈に沸き上がる射精感。耐えられなくて、「無理、むりぃ」と泣くけれど、「可愛い。もう少し頑張って」とイかせてもらえない。こうなると、頭がチカチカ酩酊して「あ~~、あ~~」と恥ずかしい声を上げ続けてしまう。はしたなく腰を突き出して、変な声出しているのに、何度も「可愛い」「すきだ」と声が降ってくる。クラクラする頭に、優しい声だけが響く。隆介君がいいって言うまでイっちゃダメ、それだけを必死で考える。
 「あぁ、もう、もう、出ちゃう!」
僕の中に挿った隆介君の大きさを粘膜で感じる。少量ずつ出てしまっているが、必死でこらえている。すっきり出したい気持ちだけが膨れ上がる。中を擦り上げられて頭の中まで入り込まれるような圧迫。閉じるに閉じられなくて、侵入物を食むしかない場所から、背筋をゾクゾク走り抜ける快感。僕を翻弄する動きに、悲鳴が連動する。
 隆介君の膝の上に乗せられる。これ、マズイ。待って、お願い、とはっきりしない声を上げたと思う。初めてコレをした時、僕の奥が拓く感覚を初めて味わった。悲鳴も涙も全部押し出される強烈な刺激。奥に入り込んだ先輩に心臓を潰されるような、生命の危機を感じる感覚。そこから先は、真っ白になる。気持ちいいのか、怖いのか分からなくなる。その後は、完全征服して満足そうな隆介君の顔と、グポグポと鳴り響くいやらしい音、悲鳴のような嬌声が、頭に残る。

 気が付くと、身体が綺麗になっていた。いつもの事だ。ちょっと申し訳ない。エッチの後はほとんど意識が飛んでしまう。今日は自分がいつイったのかさえ分からなかった。僕を撫でて満足そうな先輩。
「今日も可愛かったね」
とても返事が出来なくて、困ってしまう。顔が一気に熱くなる。
全然、可愛いとは思えない痴態だと思うのに、先輩の感覚は僕と違うのだと思う。ただ、エッチの最中は全てが満たされて、少しも不安にならない。隆介君は僕の恋人で、僕の居場所はココにあると満足いくまで実感する。
隆介君が大学に入ってから、自由に大学を謳歌してほしい気持ちと、不安や嫉妬が共存していて苦しいときがある。幸せなのに、不安になる。エッチの時は、全て忘れて二人だけの世界になる。先輩が入り込んで支配される、すべてを明け渡す瞬間。絶対の安心。最近は忙しいこともあり週に一~二回になった行為。もっとしたいな、なんて自分の考えに恥ずかしくなる。
 今は満たされた幸せな状況なのに、どこかに不安がつきまとう。どうしてか、無性に元の家を見たくなる。コレは絶対に隆介先輩には言えない。
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