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Ⅳ 停滞期
⑦
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「は? え? り、んたろう? なに? どうして?」
酒井の顔がみるみる怖くなる。
「何があった!? どうした?」
酒井が駆け寄り凛太朗の肩に手を回してきた。
凛太朗はパニックがおさまらず、酒井の手を振りほどいた。
大丈夫だ、と言いたいのに息が切れて声にならない。ハクハクする呼吸のまま、どうにかその場を立ち去ろうとした。しかし頑張っても立てるわけがなく、床に這うように酒井から逃げた。
「凛太朗、本当に待って! そんな姿で出たら、部活やってるやつらに見られるって!」
酒井の言葉に凛太朗は動きを止めた。今は酒井に頼ってはいけない気がして、教室のドア近くにうずくまった。
何度も自分に「落ち着け、落ちつかなきゃ」と良い聞かせるが、凛太朗の思いに反して一向に息が楽にならない。冷や汗が出る。苦しさに服の上から胸元を掻きむしった、そのとき。フワリと何かが背中にかけられた。
(なに?)
意識が呼吸から少し逸れて、掛けられた物を見た。
(制服?)
酒井の半そでシャツだ。
「ゆっくり、呼吸して。俺もなったことあるから分かる。苦しいよな。凛太朗、ゆっくり、吸って、吐いて」
何度も酒井が「吸って、吐いて」と繰り返した。
それを聞いていると、徐々に息が整った。
気がついたら凛太朗は掛けられた制服を思いっきり握りしめていた。縋るモノがあって良かったと思えた。
しばらくして、ぎゅっと握った手から力が抜けて、苦しさが和らいだのが分かった。
「……ごめ、ん」
何か言おうとしてやっと出た言葉は謝罪だった。
「凛太朗……」
いつもなら凛太郎に触れてくる酒井が距離をとっている。
もう酒井は凛太朗に関わりたくないのだろう。酒井には笑い合う友人ができている。凛太朗と居なくても大丈夫なのだ。
「僕、帰る、から」
一言を伝えて立ち上がると、膝が笑ってよろけた。慌てて壁に手をついて自分を支えた。
「凛太朗、送る。それから、支えるために触れても、大丈夫?」
酒井が心配してくれるのは分かったが、今は一緒に居るのは無理だと思った。
「一人で、帰る。支えなくて、いい。それから、もう、弁当は作れない」
酒井を見ずに伝えた。酒井の表情は分からないが、張り詰めた雰囲気だった。
「分かった。でも、これからも、一緒に居ても、良い?」
弱々しい声だった。その声音に胸がズキリと痛んだ。それでも、どうしても酒井に向き合えなかった。
凛太朗は下を向いたまま、首を横に振った。
酒井の顔がみるみる怖くなる。
「何があった!? どうした?」
酒井が駆け寄り凛太朗の肩に手を回してきた。
凛太朗はパニックがおさまらず、酒井の手を振りほどいた。
大丈夫だ、と言いたいのに息が切れて声にならない。ハクハクする呼吸のまま、どうにかその場を立ち去ろうとした。しかし頑張っても立てるわけがなく、床に這うように酒井から逃げた。
「凛太朗、本当に待って! そんな姿で出たら、部活やってるやつらに見られるって!」
酒井の言葉に凛太朗は動きを止めた。今は酒井に頼ってはいけない気がして、教室のドア近くにうずくまった。
何度も自分に「落ち着け、落ちつかなきゃ」と良い聞かせるが、凛太朗の思いに反して一向に息が楽にならない。冷や汗が出る。苦しさに服の上から胸元を掻きむしった、そのとき。フワリと何かが背中にかけられた。
(なに?)
意識が呼吸から少し逸れて、掛けられた物を見た。
(制服?)
酒井の半そでシャツだ。
「ゆっくり、呼吸して。俺もなったことあるから分かる。苦しいよな。凛太朗、ゆっくり、吸って、吐いて」
何度も酒井が「吸って、吐いて」と繰り返した。
それを聞いていると、徐々に息が整った。
気がついたら凛太朗は掛けられた制服を思いっきり握りしめていた。縋るモノがあって良かったと思えた。
しばらくして、ぎゅっと握った手から力が抜けて、苦しさが和らいだのが分かった。
「……ごめ、ん」
何か言おうとしてやっと出た言葉は謝罪だった。
「凛太朗……」
いつもなら凛太郎に触れてくる酒井が距離をとっている。
もう酒井は凛太朗に関わりたくないのだろう。酒井には笑い合う友人ができている。凛太朗と居なくても大丈夫なのだ。
「僕、帰る、から」
一言を伝えて立ち上がると、膝が笑ってよろけた。慌てて壁に手をついて自分を支えた。
「凛太朗、送る。それから、支えるために触れても、大丈夫?」
酒井が心配してくれるのは分かったが、今は一緒に居るのは無理だと思った。
「一人で、帰る。支えなくて、いい。それから、もう、弁当は作れない」
酒井を見ずに伝えた。酒井の表情は分からないが、張り詰めた雰囲気だった。
「分かった。でも、これからも、一緒に居ても、良い?」
弱々しい声だった。その声音に胸がズキリと痛んだ。それでも、どうしても酒井に向き合えなかった。
凛太朗は下を向いたまま、首を横に振った。
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