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Ⅳ 停滞期
⑧
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あの日から凛太朗は酒井と一緒にいるのを止めた。朝の学級委員として自主的に行っていたことも止めた。目立たないように一日を静かに過ごしている。
別にこれでいい。凛太朗には一人が合っている。これが凛太朗らしい学校生活だと感じている。
凛太朗は酒井を気にしないように心がけている。だけど、自然と頭に酒井のことが浮かぶ。食事は大丈夫かな、とか、ダイエット続いているかな、と心配ばかりしてしまう。
凛太朗といなくなり、酒井は新たな友人たちと過ごすのだろうと思った。彼女を作って陽キャの一員になるのだろうと想像していた。けれど、酒井は独りになった。
以前のように女子は話しかけていないし、リレーの練習で笑い合っていた男子たちとも距離を置いている。色々気になるけれど、凛太朗は酒井に関して深く考えるのをやめている。
(もう、僕には関係ない)
そう考えても、酒井の優しい手の感触や包みこむような抱擁がふとした時に蘇る。そのたびに胸が痛いような苦しいような感覚がして辛かった。
この体育祭が終われば凛太朗は学級委員から解放される。そうすれば全て楽になるはずだ。
もともと酒井と仲良くしたのも学級委員としての責任感からだ。凛太朗には、どう頑張っても大役過ぎただけだ。気負うべきではなかったのだ。でも、それでも、楽しかった。
考えると悲しみに涙が零れそうになる。
体育祭の日が来た。晴青高校の体育祭は白組・赤組に分かれて勝敗を点数にして競う。
「晴れて良かったな」
「曇りくらいが良かったけどなぁ」
クラスメイトのそんな会話をぼんやり聞いた。
体育祭は学校近くの市営競技場を借りて行う。熱中症リスク回避のため体育祭は午前で終了だ。半日で帰れるのは嬉しい。
(酒井はリレー、大丈夫かなぁ)
酒井は凛太朗といなくなり、途端に笑わなくなった。少し怒りを滲ませて独りでいる。独りでいるのなら凛太朗が傍にいてもいい気がするが、凛太朗は自分の存在価値の低さに気が付いたから傍に行かない。
どんなに頑張ってもクラスの不要物である自分が酒井の傍にいたらいけない。酒井は凛太朗と違って輝く存在だから。
『各クラス学級委員は状況報告を本部までお願いします』
競技場に放送が流れた。凛太朗は学級委員として体育祭までは頑張ろうと思い席を立った。
ふと気になって振り返れば、一番後ろの応援席に酒井がいた。酒井は寂しそうな顔をしていた。数秒間、凛太朗と目が合った。ここ数日、酒井を避けていてしっかり顔を見ていなかった。酒井の顔色が良くないかも、と思った。酒井は凛太朗から目をそらさなかった。
その訴えるような視線が苦しくて凛太朗はフイっと顔を背けた。そんな小さな動作で、酒井に申し訳ないような罪悪感が芽生える。
(気にするな! 僕は体育祭の仕事に集中するんだ!)
最近毎日感じているチクリとした痛みに言い訳をした。
酒井を振り返りたいのに、その勇気が無くて気持ちが落ち込む。どんなに言い訳をしても、悲しさとやるせなさが凛太朗の心にくすぶった。
(酒井は、僕のことをどう思っているんだろう)
酒井と距離を置いたのは自分なのに、そんなことを考えるなどおかしい。
『凛太朗に、嫌われたくない』
急に酒井が泣いた時の言葉が浮かんだ。苦しいような胸の痛みが生じた。
別にこれでいい。凛太朗には一人が合っている。これが凛太朗らしい学校生活だと感じている。
凛太朗は酒井を気にしないように心がけている。だけど、自然と頭に酒井のことが浮かぶ。食事は大丈夫かな、とか、ダイエット続いているかな、と心配ばかりしてしまう。
凛太朗といなくなり、酒井は新たな友人たちと過ごすのだろうと思った。彼女を作って陽キャの一員になるのだろうと想像していた。けれど、酒井は独りになった。
以前のように女子は話しかけていないし、リレーの練習で笑い合っていた男子たちとも距離を置いている。色々気になるけれど、凛太朗は酒井に関して深く考えるのをやめている。
(もう、僕には関係ない)
そう考えても、酒井の優しい手の感触や包みこむような抱擁がふとした時に蘇る。そのたびに胸が痛いような苦しいような感覚がして辛かった。
この体育祭が終われば凛太朗は学級委員から解放される。そうすれば全て楽になるはずだ。
もともと酒井と仲良くしたのも学級委員としての責任感からだ。凛太朗には、どう頑張っても大役過ぎただけだ。気負うべきではなかったのだ。でも、それでも、楽しかった。
考えると悲しみに涙が零れそうになる。
体育祭の日が来た。晴青高校の体育祭は白組・赤組に分かれて勝敗を点数にして競う。
「晴れて良かったな」
「曇りくらいが良かったけどなぁ」
クラスメイトのそんな会話をぼんやり聞いた。
体育祭は学校近くの市営競技場を借りて行う。熱中症リスク回避のため体育祭は午前で終了だ。半日で帰れるのは嬉しい。
(酒井はリレー、大丈夫かなぁ)
酒井は凛太朗といなくなり、途端に笑わなくなった。少し怒りを滲ませて独りでいる。独りでいるのなら凛太朗が傍にいてもいい気がするが、凛太朗は自分の存在価値の低さに気が付いたから傍に行かない。
どんなに頑張ってもクラスの不要物である自分が酒井の傍にいたらいけない。酒井は凛太朗と違って輝く存在だから。
『各クラス学級委員は状況報告を本部までお願いします』
競技場に放送が流れた。凛太朗は学級委員として体育祭までは頑張ろうと思い席を立った。
ふと気になって振り返れば、一番後ろの応援席に酒井がいた。酒井は寂しそうな顔をしていた。数秒間、凛太朗と目が合った。ここ数日、酒井を避けていてしっかり顔を見ていなかった。酒井の顔色が良くないかも、と思った。酒井は凛太朗から目をそらさなかった。
その訴えるような視線が苦しくて凛太朗はフイっと顔を背けた。そんな小さな動作で、酒井に申し訳ないような罪悪感が芽生える。
(気にするな! 僕は体育祭の仕事に集中するんだ!)
最近毎日感じているチクリとした痛みに言い訳をした。
酒井を振り返りたいのに、その勇気が無くて気持ちが落ち込む。どんなに言い訳をしても、悲しさとやるせなさが凛太朗の心にくすぶった。
(酒井は、僕のことをどう思っているんだろう)
酒井と距離を置いたのは自分なのに、そんなことを考えるなどおかしい。
『凛太朗に、嫌われたくない』
急に酒井が泣いた時の言葉が浮かんだ。苦しいような胸の痛みが生じた。
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