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Ⅳ 停滞期
⑥
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放課後、酒井は運動部のリレーメンバーと走りに行った。
凛太朗は体育祭実行部から指示のあった当日参加保護者の最終報告をして、ゆっくりと教室に戻るところだった。
その途中、校庭の隅でリレー練習をする酒井が目に入った。バトンの練習をして、運動部の数名と笑い合っている。口を大きく開けて楽しそうな声が凛太朗まで聞こえてきそうだった。凛太朗は、ただぼんやりとそれを眺めた。
涙が静かに凛太朗の頬を伝った。
教室に入る直前で凛太朗は立ち止まった。誰も残っていないと思った教室から女子の声が響いている。
「だからぁ、今ってチャンスじゃん」
「え、理香子マジで狙うの?」
「ガチだよぉ。酒井君みたいなイケメン二度と会えないしぃ」
「ま、それは同意するぅ。いいなぁ。理香子みたいに可愛ければ、あたしも酒井、狙いたい」
「えへへ。今日は酒井君に胸くっつけてみたぁ。谷間でぇ、腕をぉ挟んでみた! 反応めっちゃカワユス!」
「わ、でた! 理香子のデカパイ! 落とせそう?」
「落とすってぇ。男のエロ心を突くよぉ」
「あはは! 突かれるのはどっちだっての!」
女子の笑い声が響いた。凛太朗は会話についていけなくて少しよろけた。ガタンとドアが音をたてた。
「だれ!」
途端に鋭い声が飛んだ。逃げることはできず、凛太朗は彼女たちの冷たい目線に捉えられた。
「なに? 盗み聞き?」
さっきまでの高い声とは真逆の低い声だ。怖くて凛太朗は数歩下がった。
「おい、逃げてんじゃねぇよ」
急に距離を詰めて来た女子に腕を捕らわれて教室内に放り込まれた。それほど強い力じゃない。それなのに、恐怖心で従わなくてはいけないと強烈に思った。
教室に転がり込んだ凛太朗は、床にへばったまま彼女たちを見上げた。
「風見じゃん」
「理香子ぉ、どうする? 聞かれちゃったね」
「うん。どぉしよ」
女子四人に囲まれて凛太朗はゴクリと唾を飲んだ。立ち上がることなど到底出来なかった。
「あ、あの、僕は、カバンを取りに来ただけで……」
この場から離れたくて凛太朗は必死に言葉を探した。
「あ~~、風見ぃ、あんた、ホント、邪魔」
「あは! ウケる。ストレートぉ」
「てか、あんた、二度と酒井に近づくなよ。まじ、コバエ化すんなっての」
「バカじゃなきゃ言いたい事わかるよねぇ? 酒井君といても不釣り合いだっての。ちょっとわきまえて欲しいの」
「ほんと、何の役にも立たないんだから、せめて邪魔すんな」
「あはは! それね。空気読めって。そんなんだから嫌われ学級委員なんだよ!」
嫌われ学級委員という言葉が槍のように凛太朗の心を突き刺す。こんなに必死になっているのに、皆のために早朝から頑張っているのに。
「もう、お前クラスにいらないんだわ。不要物的な?」
その後も降り注ぐ言葉たちを受け止めきれず、気が付いたら凛太朗は泣いていた。
「あ――、泣くとか、ウザ」
「マジ、話しにならん」
ガタガタと彼女たちが教室を去っていった。凛太朗は何も言えず、ただ、苦しい呼吸と止まらない涙に混乱して座り込んでいた。
(落ち着け、落ち着け!)
口を押えてひたすら自分をなだめていた時。ガタンと音が鳴った。
ハッと音の方を見れば、酒井が立っていた。
凛太朗は体育祭実行部から指示のあった当日参加保護者の最終報告をして、ゆっくりと教室に戻るところだった。
その途中、校庭の隅でリレー練習をする酒井が目に入った。バトンの練習をして、運動部の数名と笑い合っている。口を大きく開けて楽しそうな声が凛太朗まで聞こえてきそうだった。凛太朗は、ただぼんやりとそれを眺めた。
涙が静かに凛太朗の頬を伝った。
教室に入る直前で凛太朗は立ち止まった。誰も残っていないと思った教室から女子の声が響いている。
「だからぁ、今ってチャンスじゃん」
「え、理香子マジで狙うの?」
「ガチだよぉ。酒井君みたいなイケメン二度と会えないしぃ」
「ま、それは同意するぅ。いいなぁ。理香子みたいに可愛ければ、あたしも酒井、狙いたい」
「えへへ。今日は酒井君に胸くっつけてみたぁ。谷間でぇ、腕をぉ挟んでみた! 反応めっちゃカワユス!」
「わ、でた! 理香子のデカパイ! 落とせそう?」
「落とすってぇ。男のエロ心を突くよぉ」
「あはは! 突かれるのはどっちだっての!」
女子の笑い声が響いた。凛太朗は会話についていけなくて少しよろけた。ガタンとドアが音をたてた。
「だれ!」
途端に鋭い声が飛んだ。逃げることはできず、凛太朗は彼女たちの冷たい目線に捉えられた。
「なに? 盗み聞き?」
さっきまでの高い声とは真逆の低い声だ。怖くて凛太朗は数歩下がった。
「おい、逃げてんじゃねぇよ」
急に距離を詰めて来た女子に腕を捕らわれて教室内に放り込まれた。それほど強い力じゃない。それなのに、恐怖心で従わなくてはいけないと強烈に思った。
教室に転がり込んだ凛太朗は、床にへばったまま彼女たちを見上げた。
「風見じゃん」
「理香子ぉ、どうする? 聞かれちゃったね」
「うん。どぉしよ」
女子四人に囲まれて凛太朗はゴクリと唾を飲んだ。立ち上がることなど到底出来なかった。
「あ、あの、僕は、カバンを取りに来ただけで……」
この場から離れたくて凛太朗は必死に言葉を探した。
「あ~~、風見ぃ、あんた、ホント、邪魔」
「あは! ウケる。ストレートぉ」
「てか、あんた、二度と酒井に近づくなよ。まじ、コバエ化すんなっての」
「バカじゃなきゃ言いたい事わかるよねぇ? 酒井君といても不釣り合いだっての。ちょっとわきまえて欲しいの」
「ほんと、何の役にも立たないんだから、せめて邪魔すんな」
「あはは! それね。空気読めって。そんなんだから嫌われ学級委員なんだよ!」
嫌われ学級委員という言葉が槍のように凛太朗の心を突き刺す。こんなに必死になっているのに、皆のために早朝から頑張っているのに。
「もう、お前クラスにいらないんだわ。不要物的な?」
その後も降り注ぐ言葉たちを受け止めきれず、気が付いたら凛太朗は泣いていた。
「あ――、泣くとか、ウザ」
「マジ、話しにならん」
ガタガタと彼女たちが教室を去っていった。凛太朗は何も言えず、ただ、苦しい呼吸と止まらない涙に混乱して座り込んでいた。
(落ち着け、落ち着け!)
口を押えてひたすら自分をなだめていた時。ガタンと音が鳴った。
ハッと音の方を見れば、酒井が立っていた。
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