真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉

小池 月

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Ⅳ 停滞期

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 クラス対抗の大玉ころがしは一年から三年までの各クラスから十名ずつ参加する競技だ。単純な競技なのに、思わぬ方向に転がっていく大玉を追いかける姿に周囲から笑いが起きる。

 勝敗が決まるころには歓声が上がっていた。その歓声をぼんやりと聞きながら凛太朗は居心地が悪いなぁとため息をついた。

 次は凛太朗が出場する大繩飛びだ。大繩は二学年の学年競技であり、各クラスから十五名が参加する。
 応援席から出場者待機場所に行く時に、軽く肩を叩かれた。見上げれば酒井がいた。心臓がドキリと音をたてた。

「凛太朗、本当に、大丈夫?」
 優しい声が心地良い。凛太朗は少しだけ微笑みを返した。

「うん。スポドリ飲んだから、大丈夫。サンキュ」
 無視するわけにもいかず言葉を返せば、会話をするのが久しぶりだと思った。酒井は軽く目を見開くようにしてから弱々しく笑った。

「そっか。そっか。良かった。その、無理はしないで。ほら、運動は苦手、だろ?」
 つい凛太朗は「ははっ」と笑った。運動は苦手だけど、夏休みに筋トレや体力作りを一緒に頑張った。前より少しはマシなはずだ。

「おぉ、苦手だけど、夏の筋トレ効果を発揮してくるわ」
 懐かしさに凛太朗の頬が緩んだ。一瞬だけど胸がジンと温かくなった。

「凛太朗……」
 酒井が泣きそうな顔をした。何て顔してんだよ、と声を掛けようとしたが。

「はぁ、縄跳びとかメンド」
「サボりたいよねぇ」
 横を通り過ぎる女子の声に凛太朗の背すじがビクっと伸びた。途端に心臓が冷えるような恐怖が蘇った。

(酒井と一緒にいたらダメだ!)
 全身に震えが来そうな感覚がして、凛太朗は酒井から顔を背けた。

「あ、僕、もう行かなきゃ」
 下を向いたまま凛太朗は足を進めた。

「凛太朗、頑張って」
 凛太朗の背中に温かい声が届いた。きっと酒井は悲しそうな微笑みを浮かべている。そう思うと凛太朗の胸がズキっとした。

 酒井を振り返らずにコクリと頷いて、『ゴメン』と心で謝った。



 大縄跳びは参加十五人のうち二人が大繩を回し、十三人で飛ぶ。運動が苦手な人は大玉ころがしと大繩に参加することが多い。だから凛太朗だけが足を引っ張ることは無いだろう。

「せーの」
「イ―チ、ニーイ、サーン…」

 大繩を回す人が声を掛けてくれて飛び始めたが、三回も飛ばずに縄が止まった。

 凛太朗の前にいる女子が縄に引っかかっている。すぐに仕切り直して飛ぶが、どうやら前の女子は飛ぶタイミングがズレてしまうようで凛太朗のクラスは三回以上続かない。

 そんな事を繰り返すと、「おい、だれ?」「五回は飛ぼうぜ」と声が上がる。やり始めれば結構夢中になるものだ。

 しかし、次も二回で縄が止まった。

「マジ、勘弁しろって」
 誰かの一言に、凛太朗の前の女子がビクっとした。

「ご、ごめんなさい」
 咄嗟に凛太朗が謝っていた。

 前の女子が必死に飛んでいるのは分かる。運動が苦手だと仕方がないのだ。凛太朗にはその気持ちがよく理解できた。だからこそ、そう言う時に責められる心の痛さも知っている。

「風見かよぉ。ま、しゃーねぇ」
「風見君、こんなの、緊張しなくていいって。ジャンプすれば良いだけだし」

「ま、ダメならダメでいいっしょ」
 冷たい言葉を覚悟したのに、クラスメイトからは励ますような声が聞こえた。その言葉に身体を固くしていた前の女子の力が抜けたのが分かった。

 凛太朗自身も責められないことに安堵した。
「うん。ご、ごめん」

 もう一度謝ると、大繩を回す人の「せーの」の号令で大縄跳びが再開した。

 結果は大縄跳び五回の記録で最下位だった。けれど「三回より伸びたじゃん」とか「ま、こんなもんだな」という言葉が飛んだ。そう言いながら笑顔になっている皆を見て凛太朗は嬉しかった。
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