『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月

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Ⅱ②

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 壱兎を襲った四人は厳重注意となり別クラスに移った。

 襲ったとはいえ、シャツを脱がしたことと追いかけたことくらいで実質の性的暴行とは言えない、というのが学校の回答だった。『行き過ぎたオフザケ』として処理された。

 だけど壱兎はそのことがトラウマになり卒業まで登校できなくなった。壱兎はオメガである自分が嫌でたまらなかった。

 高校は通信教育と対面授業が自由に選べるところを選んだ。
 これまで壱兎はオメガであっても普通に生きて行けると思っていた。でも現実は違った。オメガは社会の中から弾かれる存在だと痛感した。

 中学の同級生から距離を置かれ孤独を感じて分かった。中三の襲われた件でオメガの社会的立場も理解した。
 ベータの皆と肩を並べられないのだと壱兎は悟った。

 そんな状態で普通の高校に通う気持ちなど、とても持てなかった。

 壱兎は高校生活のほとんどを通信教育で過ごした。オメガである自分は世の中の輪には入れてもらえないのだと諦めていた。

 成績、進路、その様々な岐路で『壱兎君はアルファと番になればいいから』と言われる言葉に心が疲弊した。自分の生きる道を決めつけられている様で苦しかった。

 高校生活を引きこもって過ごすなかで壱兎がたどり着いた答えがある。

 それは、オメガだけどアルファにもベータにも頼らずに一人で生きたいという自分の気持ち。オメガとしてではなく一人の人として生きたい。

 そう決意を固め、病院のバース科を受診した。そして、壱兎は『アルファ拒食症』の診断をもらった。

 これでフェロモン抑制剤を限界量まで投与してもらえる。徹底的に発情期を抑え込むことができる。そう喜んだが、厳しい顔をした主治医から薬剤耐性と副作用の説明を受けた。

 デメリットの方が大きい事、最悪バースホルモン不調になり日常生活が送れなくなるケースがあることの説明をされた。本当に『アルファ拒食症』で良いいのかと何度も確認をされた。
 それでも壱兎は『アルファ拒食症』でいることを選んだ。

 高校三年の十八歳を過ぎてからアルファ拒食症として本格的な内服治療が開始された。通常はオメガの発情期を弱める程度が目的として抑制剤処方量が決められている。
 それに対してアルファ拒食症の抑制剤使用目的は発情期を無くすこと。だから抑制剤使用量がぐんと増量される。その分、副作用による倦怠感、眩暈、吐き気、低血圧、貧血症状、動悸、消化管症状などに苦しむ事になる。

 壱兎はフェロモン抑制剤を倍量にしてから三か月は苦しかった。毎日身体が鉛のように重く感じた。動くと眩暈と吐き気が強く、毎日寝たきりのように過ごした。

 三か月を過ぎると体調不良にも慣れてきた。
 症状が楽になったわけではないけれど、身体の不調に合わせて生活するコツが分かってきた。

 苦しい副作用より、『もうオメガじゃない! ベータとして生きていける!』という喜びが大きかった。壱兎にとって副作用の苦しさは耐える価値のある苦痛だった。

 そしてオメガフェロモンを抑えたことで身長が伸びてベータらしい体格になった。そんな目に見える自分の変化が誇らしかった。
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