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Ⅲ章 ロンと片耳の神の御使い
9 生きていくために〈side:ロン〉
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「ほら、イメージするんだ。一度出しているから身体に羽がある感覚は分かるだろう? その感覚を思い出して」
「はい。やってみます」
三分ほど首を傾げたりしていたミーの背中に白い大きな羽がバサッと出現する。
「できました」
「うん。いいね。じゃぁ、その羽が身体に吸収されるイメージをしてみて。普段の尻尾だけの背中をイメージするんだ」
またしても首をかしげているが、ミーの背中の羽が戻らない。
「戻すほうが大変です」
「じゃ、一休みだな」
第七区基地の庭でルーカス様と羽の出し入れを練習していたミーが、トコトコっと俺に走ってくる。背中に羽があるままで走るから、まるで天使だ。
近くでふわりと飛んで上から俺に楽しそうに抱きつく。天使がはしゃいでいるようで本当に可愛い。
「ミー君、愛らしいね。本当に天使だね」
横でタクマ様が感動している。タクマ様の素直な言葉に「ですよね」と頷きたくなる。
「そうだな。王家の小型獣人は生まれる例がないが、このような形で王家の白き羽が出るとは驚きだ。完全に獣化する俺たち獅子には出来ないことだな」
ゆっくり歩いて来るルーカス様。
「ま、羽の出し入れも上手になってきた。よくできているよ。そうだなぁ、羽があるからな。飛んで逃げられないようにしないとなぁ、ロン」
ニヤニヤしながら俺に話を振るルーカス様。この方は全て見透かしているようで、なんというか、敵わないと実感する。
「飛んで逃げられないように腕の中に閉じ込めておきます」
「ははは。そうだな。愛しい恋人は閉じ込めたいよな。大型獣人の習性だ。だけど俺たちは損だよな。神の子が恋人だ。隠すわけにもいかないんだよな。俺はこの葛藤が分かち合える相手ができて嬉しいよ」
軽快に笑うルーカス様。タクマ様は俺の腕から降りたミーと話している。
タクマ様とミーは気が合うようですっかり仲良くなっている。同じような背丈の可愛い二人がニコニコ話をすると、周囲の誰もが頬を染めて笑顔になってしまう。
「この笑顔を、守りたいよな」
二人を見ながらルーカス様が言う。
「はい。ミーもタクマ様も、周りの優しい獣人の微笑みも、ずっと続くように願います」
「そうだな。そこで、ロンは神の御使いとしての立場に加えて、この国で国防に関わってもらおうかと思っている。ルドからミーを守れ。タクマとミーは神の子として崇められる存在で良い。ロンは、王都で俺と共に国を支えてくれるか?」
陽の光の中で輝くルーカス殿下。
膝をついて忠誠を示す。
「喜んでお受けします」
「それでいい。国政に参加して俺の右腕になれ。お前はなかなか見所があるからな」
いつか聞いたことがあるようなルーカス様の言葉。この方は、この国を、国民を導く方だ。
「何より大切なミーを守るために、ルーカス殿下に忠誠を誓います」
殿下に忠誠を誓うとともに、自分にも必ずミーを守ると誓う。
「おーい、ロン、食べているよ」
木陰に用意した茶席から声がする。愛おしい声だ。
「さて、我々も一休憩しよう」
遅くなってすまない、と茶席に向かうルーカス様に続く。
優しい陽の光に包まれて大切な人が笑顔でいる幸せ。その幸せのために精一杯生きてゆこう。この先、まだまだ問題は残されている。だけど、きっと大丈夫だ。自分が最強になったかのような温かい自信が満ちる。いや、待てよ。最強の、変態か。思い出して笑いがこみ上げる。
美味しそうにお菓子を頬張るミーを見て優しい微笑みがこぼれた。
Ⅲ章 完
「はい。やってみます」
三分ほど首を傾げたりしていたミーの背中に白い大きな羽がバサッと出現する。
「できました」
「うん。いいね。じゃぁ、その羽が身体に吸収されるイメージをしてみて。普段の尻尾だけの背中をイメージするんだ」
またしても首をかしげているが、ミーの背中の羽が戻らない。
「戻すほうが大変です」
「じゃ、一休みだな」
第七区基地の庭でルーカス様と羽の出し入れを練習していたミーが、トコトコっと俺に走ってくる。背中に羽があるままで走るから、まるで天使だ。
近くでふわりと飛んで上から俺に楽しそうに抱きつく。天使がはしゃいでいるようで本当に可愛い。
「ミー君、愛らしいね。本当に天使だね」
横でタクマ様が感動している。タクマ様の素直な言葉に「ですよね」と頷きたくなる。
「そうだな。王家の小型獣人は生まれる例がないが、このような形で王家の白き羽が出るとは驚きだ。完全に獣化する俺たち獅子には出来ないことだな」
ゆっくり歩いて来るルーカス様。
「ま、羽の出し入れも上手になってきた。よくできているよ。そうだなぁ、羽があるからな。飛んで逃げられないようにしないとなぁ、ロン」
ニヤニヤしながら俺に話を振るルーカス様。この方は全て見透かしているようで、なんというか、敵わないと実感する。
「飛んで逃げられないように腕の中に閉じ込めておきます」
「ははは。そうだな。愛しい恋人は閉じ込めたいよな。大型獣人の習性だ。だけど俺たちは損だよな。神の子が恋人だ。隠すわけにもいかないんだよな。俺はこの葛藤が分かち合える相手ができて嬉しいよ」
軽快に笑うルーカス様。タクマ様は俺の腕から降りたミーと話している。
タクマ様とミーは気が合うようですっかり仲良くなっている。同じような背丈の可愛い二人がニコニコ話をすると、周囲の誰もが頬を染めて笑顔になってしまう。
「この笑顔を、守りたいよな」
二人を見ながらルーカス様が言う。
「はい。ミーもタクマ様も、周りの優しい獣人の微笑みも、ずっと続くように願います」
「そうだな。そこで、ロンは神の御使いとしての立場に加えて、この国で国防に関わってもらおうかと思っている。ルドからミーを守れ。タクマとミーは神の子として崇められる存在で良い。ロンは、王都で俺と共に国を支えてくれるか?」
陽の光の中で輝くルーカス殿下。
膝をついて忠誠を示す。
「喜んでお受けします」
「それでいい。国政に参加して俺の右腕になれ。お前はなかなか見所があるからな」
いつか聞いたことがあるようなルーカス様の言葉。この方は、この国を、国民を導く方だ。
「何より大切なミーを守るために、ルーカス殿下に忠誠を誓います」
殿下に忠誠を誓うとともに、自分にも必ずミーを守ると誓う。
「おーい、ロン、食べているよ」
木陰に用意した茶席から声がする。愛おしい声だ。
「さて、我々も一休憩しよう」
遅くなってすまない、と茶席に向かうルーカス様に続く。
優しい陽の光に包まれて大切な人が笑顔でいる幸せ。その幸せのために精一杯生きてゆこう。この先、まだまだ問題は残されている。だけど、きっと大丈夫だ。自分が最強になったかのような温かい自信が満ちる。いや、待てよ。最強の、変態か。思い出して笑いがこみ上げる。
美味しそうにお菓子を頬張るミーを見て優しい微笑みがこぼれた。
Ⅲ章 完
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