生きることが許されますように

小池 月

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Ⅲ章 ロンと片耳の神の御使い

8 愛する者※〈side:ロン〉

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 「あ、今日は違う匂い」
「分かる? 気候が暑くなってきたから爽やかな柑橘系にしてみたよ」
「これも、良い匂い」
ベッドでコロリと身体を横たえて尻尾を預けてくるミー。

手足を丸めて気持ちよさそうにモゾモゾ動く。可愛らしいな。優しくブラッシングして、フワフワな尻尾に心がほっこり満たされる。


 天の川に落ちてから三日後、俺とミーは沿岸第七区に流れ着いた。

あのまま沈んだかと思っていたけれど、気が付いたら光の玉の中にいた。ミーを抱き締めたまま、川の上に浮いていた。沿岸から俺たちを崇めている獣人たちが見えた。はっとした。リリアに行かなくては。ルドに入ったら、ミーを守れない! 

必死で天の川に「リリアにしてください!」と祈った。願い通りにゆっくりとリリアに導いてくれた天の川に感謝した。そして、母にも。

川に落ちた時に母さんの声が聞こえた。きっと母が助けてくれた。いつも俺が抱きしめていた母に、抱きしめてもらったような温かさが残っていた。第七区の沿岸にミーを抱いたまま自分の足で降り立った。

川から助かると、獅子に噛まれたミーの怪我は綺麗に消えていた。周囲の警備隊隊員や集まっていた獣人たちに「神の御使いさま」と膝をつかれて、困ってしまった。

「第三区警備隊新人のロンです」
身分を伝えると、すぐに連絡してくれた。だが、隊に戻る事は出来なさそう。俺も、神の御使いという立場になってしまったから。

天の川の神に助けられて分かる。神は助けてくれるだけで、特別な何かを授けてくれるわけじゃない。俺の何かが変わったわけじゃない。あの優しい神の存在に触れただけ。やっとタクマ様やルーカス様の気持ちが分かった。

ちなみに、ルドの獅子皇子は三人とも川にのまれた。水の竜巻が起こり吸い込まれていったらしい。やはり川の上を飛ぶことを神は許さなかった。そして皇子たちは浮かんできていない。神の力に触れ、やはり天の川は偉大な神の川であると再認識した。

 天の川から生還するって今考えてもスゴイ経験をしたと思う。あの底の見えない水。奥に沈んでいったルドの獅子皇子たち。


 「何、考えているの?」
ミーの声。こちらに背を向けていたから、ブラッシングで寝てしまったのかと思っていた。

「何でもないよ」
「……タクマ様の、こと?」
「あぁ、今日はルーカス様とタクマ様のご訪問がある日か」
モゾリと起きあがり、じっと俺を見るミー。

「尻尾、もういいの?」
「いい」
いつの間にか羽が消えていて愛らしい尻尾だけが背中に見えている。少し逆毛だった尻尾がゆらりゆらり。嬉しいときの動きじゃない。

「何を不安になっているの?」
「……別に、何でもない」
「ミー」
呼び止めるが、トコトコと歩いていく。

部屋を出て四階の廊下を真っすぐ歩く。廊下に出ると獣人たちが嬉しそうに俺たちを見る。

ついていくと「一人で良い」と歩みを速める。速くなっても小型のスピードだ。余裕でついていく。相変わらずに不安げに揺れる尻尾。そうだ。タクマ様とルーカス様が来た日。ミーが窓から飛び出した。もしかして、会いたくない?

「ミー、タクマ様とルーカス様が苦手?」
歩みを止めるミー。大きな尻尾が弓なりになり、鞭のようにブンブンと揺れる。イラつきか。どうしたんだろう。

「……苦手じゃ、ない」
一言を言うと、尻尾が一気にしょんぼり垂れてしまう。立ったままのミーをそっと抱き上げる。泣いているのかな。チラリと見た顔は、ギリギリ泣くのを我慢するような顔だった。

 第三区に滞在していたルーカス殿下とタクマ様が七区基地に訪問された。

 「ロン、ミー、久しぶりだ。数日ぶりだが、天の川の神に助けられて良かった。お前たちが上ってこないときには基地の皆が泣いたぞ。諦めて第三区の皆の活気がなくなったころ、第七区にお前たちが現れたと一報が入った。三区基地の皆は大喜びだ。一気にお祭りムードだったぞ。お前たちに見せたかったな」

「ロン君、良かった。本当に心配したよ。ミー君も、良かった。また、会えて嬉しい」
ニコニコと挨拶してくれるルーカス様に、涙を滲ませて声を震わすタクマ様。二人の気持が嬉しくて、膝をついて感謝の意を伝える。

「ありがとうございます。俺も川底に沈んだと思いました。ですが、天の川の神と、死んだ母に助けられたと思います」
「そっか、あのお母さんが。ロン君の事、見守ってくれているんだね」
感動で涙を流すタクマ様を見る。優しい方だ。

ふと視線を感じて横を見ると、俺の横で同じように膝をついているミーが俺をじっと見ている。いつもクルリと可愛い背中にある尻尾が、クタンと床にしょげている。左のリス耳も下がっている。

「さて、二度、神に助けられた神の子ミー。話が出来るかな? それとも俺が獅子なのが、怖いかな?」
ルーカス様の言葉に、はっとする。俺はなぜ気が付かなかった? ルドの獅子皇子たちのミーの扱い。思い出すと怒りが湧くような扱い。ルーカス様は同じ獅々だ。怖いのは当然だ。すぐにミーに向き合う。

「そうか。ミー、気が付かなくてゴメン。ルーカス様が獅子だから、会うのは辛かった?」
俺の言葉にミーが顔を上げる。驚いたようなまん丸の目。俺を見て、ルーカス様とタクマ様を順番に見る。

「いえ、ルーカス殿下は怖くありません。助けていただき、ありがとうございました」
「じゃ、どうしてこの間も俺たちを避けたのかな?」
ルーカス様のストレートな質問。困ったようにリス尻尾が揺れる。

「ロンが、見る、から。……それを、見たくないから」
下を向いて小さな声。意味が分からない。

「そうか。そう言うことか」
何故か納得がいったようなルーカス様。

「ねぇ、どういうこと? ルーカス様は、分かったの?」
小さな声でルーカス様に聞いているタクマ様。俺も知りたい! 

「ま、ちゃんと座ってお茶にしながら話そうよ」
ひとり楽しそうなルーカス殿下にちょっとイライラした。

 ソファーセットに座り、お茶と焼き菓子、ゼリーが並べられる。
「あ、これ氷入りのゼリーだ。十三区で初めて食べたやつ」
「うん。タクマが喜ぶかと思って用意してもらったよ」

見せつけるように、タクマ様の頭にキスを落とすルーカス様。そのままタクマ様の腰を抱き寄せて密着して座る二人。急に変わったルーカス様の態度に真っ赤になっているタクマ様。

「タクマ、食べさせてあげよう」
「ル、ルーカス様! 人前です!」
「いいじゃないか。俺たちは恋人だ。伴侶のような関係じゃないか」
さらに真っ赤になるタクマ様。

「ミー、タクマが俺以外を見ることは、ない。誰がタクマを恋焦がれて見ようが、俺は誰にもタクマを譲らない」
宣言するように、ミーに向かってルーカス様が言う。訳が分からず、ミーを見る。真っ赤になりコクコク頷くミー。

「じゃ、今日は俺たちも七区基地に泊まるから、明日以降ゆっくり話そう。今日はロンとミーでしっかり話すといい」

「え? 本当に、どういうこと?」首をかしげるタクマ様の肩を抱いて、「それじゃ」と退室していくルーカス様。正直、俺にも何が何だか分からない。



 部屋に残された、俺とミー。
「ねぇ、本当に分からないんだ」
途方に暮れてミーを見る。

ミーは真っ赤になりプルプルしている。茶色のフワフワの髪の毛を撫でる。右耳があった付近には触れないように、そっと。

「ロンが、タクマ様を、す、好きって目で見るから。それを見るのが、嫌、なんだ。僕には、大型獣人の本能で欲情するだけって言うくせに……すごく、イライラするんだ」

下を向いてプルプルするミー。待て、コレは。そう言うことか!

「ミー、もしかして俺がタクマ様に片想いしていると思っている?」

床を見て、コクリと頷くミー。小さな身体をそっと抱きしめる。腕の中に収めれば今日使った柑橘オイルの良い匂い。

「ミー、俺のタクマ様への想いは憧れだ。そりゃ昔はコレが恋か、なんて思ったりもした。でも違うって分かった。本当に愛おしい恋しい存在を知れば、あんなのはただの憧れだったって気が付く。自分の命より、自分の幸せより、何より大切で愛する存在を知ればね」
腕の中のミーの緊張が伝わってくる。

「ミー、愛している」
抱き締めながら、ちゃんと伝える。

「この気持ちが初めてで、大型獣人の本能と指摘された時には、そういうものなのか、と思った。でも違うって分かった。タクマ様を見て感じる可愛い、とミーを見た時に心が躍り出すような可愛い、は本質が違う。きっと他のどの小型獣人を見てもミーに思うような気持ちにならない」

ふえ~ん、とミーが泣き出す。腕の中でモゾモゾ動き向きを変え、俺にしがみ付いてくる。ヨシヨシと背中を撫でると俺の腕に寄り添ってくるフカフカな尻尾。甘えるような仕草が愛らしい。

「僕は、僕は、ロンの優しさが、本能なだけって思ったら辛かったんだ。本当はタクマ様が好きなんだって思ったら、心が苦しくて……ごめんなさい」
背中を撫でながら、大切な事を聞く。

「ミーは、俺が好き?」
「うん。大好きだよ。ロンが、好きだよ」
わ~ん、と泣くミーを優しく抱きしめ、そっとキスをする。

触れるだけのキスを繰り返し、ミーを見る。涙が止まり頬を染めてフフっと笑うミー。あぁ、可愛い。心臓のドキドキが「可愛い、舐めたい、食べつくしたい!」って訴えてくる。

思わず後頭部を押さえて深く口を貪る。「うぐっ」小さく鳴る喉が可愛い。舌を吸い口の粘膜を嘗め回し、上あごの柔らかい部分を舌でヌロヌロと突く。目の前がキラキラする。愛らしい愛おしいミーしか目に入らない。何度も口を貪ると「う、く、るし……」と小さな訴え。はっとする。

「あぁ! ゴメン! 本当に、ゴメン」
すぐに口を離し、涎だらけの顔を袖で拭く。少し息を整えたミーがふわりと笑う。最高に、可愛い!

「いいよ。ロンならいい。僕もロンのカッコいい熊耳を舐めたいな、とか考えるし」
モジモジ伝えてくれる愛おしさ。

「ミー、ひとつ伝えておく。獣耳や尻尾は恋人同士しか触り合わないし、性的な意味を含んだ誘いになるんだ。熊耳を舐めたいとか、本当に心にズドンと来るから、我慢できなくなるから、ね」

「いいよ。じゃ、なおさらロンの耳を舐めつくしたい。僕にしか舐めさせないで。僕だけの特権だ」

「言っている意味、分かっている? セックス、しちゃうよ? 俺、ミーが考えているより性欲強いと思うよ。ミーのココに奥深くまで入り込んで、ミーが悲鳴上げても突き上げちゃうよ?」

お腹をトントン触ると、真っ赤になってコクリと頷くミー。いいよ、照れたような囁く一言を聞き、たまらずにミーを抱き上げて寝室に運ぶ。



 何度も嘗め回したいと欲した肌。白くて滑らかで小さい。愛おしくて丁寧に味わう。時々笑い身体をビクつかせるミーが可愛い。ピンクの乳首をキュッとつねると「あぅっ」と声を出して震える身体。ぴょこんと立ち上がる乳首。たまらずにしゃぶりついて舌でツンツン刺激する。

「ひゃぁっ」と可愛い声。そっとミーの陰茎に触れる。勃起している! 見たい! 可愛い乳首にチュッとキスをして離れ、ミーの足の間に移動する。何て綺麗な起立なのだろう。

じっと見つめ優しく形を確かめるように手で撫でる。ささやかな陰毛もこの小さな起立も、張っている袋も、ピクピクする穴も全て脳に焼き付けるように見入る。興奮して鼻息が荒くなる!

「ロン、ねぇ、ちょっと恥ずかしい……」
股間から少し離れてミーを見れは、真っ赤になって少し涙目。心臓が打ち抜かれる! 

「ミーが可愛らしすぎる。この一生懸命起ちあがるペニスも、小さな穴も、全部俺が食べていいと思うと、俺はただの変態になってしまいそうだ」

「あはは、変態って。でも、僕にだけなら変態でもいいよ」

照れたように話すミー。ミーの心が俺に向いているのが分かる。隠すことのない愛情を、安心を向けてくれる。互いに大好きだという通じる気持ち。心が通じるってこれ程に幸せなことなのかと感動する。ミーがひたすら輝いて綺麗に愛おしく思える。

「ミーにだけは変態になっても許して。ミーを大好きな変態だから」
そっとキスをして、股間に戻る。ピンクのペニスを手でしごきながら先端をぱくりと食んでみる。

途端に「やぁ!」と声がする。ビクンと揺れる腰がイイ。もっと揺れればいい。もっと興奮すればいい。なりふり構わず乱れればいい。それを、見たい。変な欲望が俺を支配する。

「やぁあ! もう、ソコ、やめてぇ!」
高い嬌声にビクつく身体。二回目の射精。最高な痴態。カクカク止まらない腰。嫌と言いながら喜びに震える身体。もっと、もっと見たい! 後ろに入れた指で、もう一度ぐっと前立腺を押す。途端に「ひぃぃ!」と悲鳴を上げて腰を突き出す。搾り取るようにペニスを舐め上げる。余韻に痙攣する身体。いやらしくて可愛い。後ろに三本入れている指を、ぐぱぁっと広げる。「あぁ、やぁ! 変、変だから」と高い声。

「ちょっと苦しいかもだけど、許して」
耳元に囁いて、俺のペニスをそっと後ろに押し当てる。入り口は蕩けていてチュッと迎え入れてくれる。射精後でミーが息を整えている間に、ズンっと押し入る。

「あぁ~~!」
目を見開いて身体を反らして衝撃を逃している。あまりのいやらしさに我慢できない!
「ゴメン!」
そう告げながら、腰を進める。キモチイイ! 

狭い締め付けにビクビク跳ねるミーの身体。萎えてしまったクタっとしたペニスが痴態に花を添えている。ぞくぞくと興奮が高まる。そのまま突き上げるたびに漏れる嬌声。ミーのペニスがビチャビチャと液体を溢すのも愛おしい。狂ったように快感を求めてミーの中を貪りつくした。

 意識を手放したミーを撫でまわす。快感にブワリと膨らみ、ユラユラ揺れていたリス尻尾。精液でベタベタにしてしまった。洗ってしっかりブラッシングしなくては。

途中、小休憩で俺の熊耳を食んでいたミー。レロレロして甘噛みされるとビクンと起ちあがる俺のペニス。もう一回だけ、そう思いながら三回も挑んでしまった。

そりゃ意識も飛ばすだろう。それにしても可愛かった。もう一度、事後のミーを見る。精液や色んな体液でドロドロ。赤いキスマークが散っている。ペニスが少し腫れぼったくなっている。いじりすぎたかも。艶めかしい全てを目に焼き付ける。可愛い声を上げていた唇にそっとキスをする。心が満たされる。最高だ。

冷静になると大変な負担をかけてしまったと反省する。申し訳なさにミーの身体を綺麗に洗い、新しいシーツにそっと寝かせる。可愛い寝息。

 ベッドに一緒に入り、大切な恋人を抱き締めて眠る。肌を合わせる幸福に満たされて。

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