その令嬢は祈りを捧げる

ユウキ

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側近候補は目を硬く瞑る

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 その上から目線な訴えに、フランクリンの後ろからずいっと前に出て来たのは、側近候補の伯爵家次男だ。
 以前エイディアーナに「見た目淑女」と罵倒した、眼鏡をかけたいけ好かない男だった。


「言い逃れはできませんよ、彼女のノートや教科書を破って捨てたり、大事なブローチを破壊して焼却炉に捨てたり、噂を流して彼女を貶めた。証人はいる……あ、あれ?」
「どうしたの、ティー君?」
「いや、ちょっと……事件のあった日と証言者リストの紙が……あれ?あ!」


 夜会衣装をパタパタと冷や汗をかきながら弄っていた伯爵家次男ティーダは、思い出していた。


 馬車を降りて会場入りをする寸前に、ポトっと言う音が近くから聞こえた。「なんだ?」と思えば肩に鳥の糞が落ちて来たのだ。

 慌てて上着を脱いだのだが、黒いジャケットには真っ白な糞がベットリと付き、とても目立っていて着れたもんじゃない。これでは入場どころではないので、仕方なく馬車まで戻って予備で持って来ていたジャケットに着替えると、付いてきていた侍従へ「洗濯しとけ」とだけ言って押し付けたのだった。

 最前へと出て来たが、目をぎゅっとつぶって口を真四角に開け放ったまま固まったティーダだったが、それを無視してエイディアーナは口を挟むことにした。


「何を仰りたいか分かりませんが、私、妃教育も佳境、実践として公務も一部お任せいただいておりましたので、授業後は即王宮に向かっておりましたの。どこかの誰かの噂を流したり物を探して壊すことなんてこと、時間が全くございませんし出来ませんし、そんな面倒な事やりませんわよ」

「この期に及んで言い逃れを!!」
「だったらその証言者でしたかしら?私がやったと言ったのでしょう?連れて来て下さる?
 私は私で証人をすぐにでもご用意できましてよ?」
「なっ」

「私の護衛と監視を兼ねておりましたの。
 王家より遣わされておりますので、疑う…なんて事ございませんわよね?」

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