至高のオメガとガラスの靴

むー

文字の大きさ
28 / 53

全部取っ払って

しおりを挟む
学校をサボった日。
マサキとトーマに送られて家に帰ると、お父さんとお母さんが玄関で待っていた。

「「おかえり」」

2人は僕が学校をサボったことを知ってるはずなのに、何も言わず優しく出迎えてくれた。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

『朝晩ちゃんと消毒するんだぞ。あと、あんま触んな。ウッカリ触ったら消毒しとけ。あと、暫くは左を下にして寝んなよ』

他にもいろいろ言われた気がするけど、覚えきれなかった。

綿棒に消毒液を染み込ませて、ピアス周辺を優しく撫でる。

ピアスホールを開けて3日経った。
消毒中にピリッと痛みがあると思ったら、綿棒に少し血がついていた。
着替えの時、シャツを引っ掛けてしまったのかもしれない。

鏡に写るピアスを見る。
マサキが意図して選んだ訳ではないと思うけど赤い石が付いたピアスだ。

ヒロの色だと言ったアカリちゃん。
それはきっと……。

「はああぁぁぁぁ」

長いため息が出てしまう。
あれから3日経つのにまだ答えが出せていない。

アカリちゃんが好きなのは間違いない。
好きよりもっとだ。
逢えない日々が僕にそれを教えてくれた。


全部取っ払うことは、想像以上に難しい。

アカリちゃんのことを考えると必ず「ヒロ大好き」って言う満面の笑顔を思い出す。
僕も、と思っている。
毎日「おはよう」の挨拶の様に交わされたやり取りも、アカリちゃんが好きだからしてて、刷り込まれたものではない…はず。
なのに、アルファらしからぬポンコツな自分に自信が持てない。

三日間そんな調子だから、一個も取っ払えていない。
おかげで月火となかなか寝つけなくて、目の下にはうっすら隈もでき始めた。

今日もベットに潜り込み、オレンジ色の小さな明かりが点いた天井を見る。

そこに答えがあったら良いのに。

答えが見えなくて、苦しくて、ちょっとだけそう思ってしまう。

「アカリちゃん……」

ご飯何食べたかな?

今日は寒かったから僕の家はキムチ鍋にしたんだよ。

楽しいことあったかな?

トーマがクシャミしたら鼻ちょうちん出来たんだよ。

もう眠ったかな?

僕はまだ眠れない。

泣いたりしていないかな?

怒ったりしていないかな?

無理して笑ってないかな?

僕は今日もそんなことを考える。
昨日も一昨日もその前もずっと。

だからかな、子供の頃の夢ばかり見る。
たぶん、6歳の頃の僕たちの夢。

夢の中のアカリちゃんはずっと笑っていて、そんなアカリちゃんに僕もずっと笑っている。

なんで忘れていたんだろう。
アルファとオメガとか、
そんなしがらみを知る前の僕たちは、
ずっと傍にいて、
ずっと手を握りあって、
ずっと笑い合っていて、
素直な気持ちを伝え合っていた。

でも、夢の最後は怯えた顔で僕を見るアカリちゃんなんだ。
そこで飛び起きる。

あの顔をさせたのは僕だ。

僕の心の弱さがアカリちゃんを傷つけた。

マサキはこの気持ちを取っ払えって言ったけど、簡単に取っ払えない。

底なし沼のようにどこまでも沈んでしまう。

トーマもまだ時間はあるって言ったけど、僕には足りない。

それだけじゃ足りないくらいの時をずっと一緒にいたから。

僕には全然足りない。

それだけの愛情をアカリちゃんからもらったから。

なんで、あと2日しかないんだ……。

__________________

ヒロの気持ち、迷走してます。
書いてる私も迷走してます。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

あなたは僕の運命なのだと、

BL
将来を誓いあっているアルファの煌とオメガの唯。仲睦まじく、二人の未来は強固で揺るぎないと思っていた。 ──あの時までは。 すれ違い(?)オメガバース話。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【本編完結】期限つきの恋

こうらい ゆあ
BL
神崎葵は、聖桜病院の特別病棟で静かな日々を送っていた。 Ω性特有の難病『フェロモン崩壊症』に冒された彼は、かつてイラストレーターとして活躍していたが、今では病室でひとり、スケッチブックに心を刻む。 余命わずかな時間の中、担当医・佐藤悠真との出会いが、閉ざされた白い病室に温かな光を灯す。 葵の海への憧れ、恋への憧憬が色鮮やかに花開くが、時間は無情にも迫ってくる。 限られた時間の中での、儚い恋のお話。

処理中です...