32 / 53
僕の闘い
しおりを挟む
そこは広い会場にも拘らず、10人程掛けれるような大きなテーブルがひとつだけだった。
「だ、誰だっ」
よくあるお決まりのセリフが飛ぶ。
「待たせたな」
「ああ、待ったよ」
涼しい顔で会話するお父さんと蒼さん。
僕は……
両親にガッシリと両脇を抱えられていた。
さながら、囚われの宇宙人。
ゆっくり降ろされ、フラつきつつ自分の足で立つ。
ちょっとカッコ悪い登場にも関わらず、それを笑う人は1人もいなかった。
背筋を伸ばししゃんとすると、大きく目を見開いたアカリちゃんと目が合った。
「……ひ、ろ…」
「アカリちゃん………逢いたかった」
僕は嬉しくて笑顔になった。
体は自然にアカリちゃんに向かって一歩また一歩足を進めるが、その歩みは突然、胸ぐらを掴まれ阻まれた。
「何でお前が来てるんだ?邪魔だ、出て行け」
「ヒロっ!」
僕は絨毯の敷かれた床に肩から落とされた。
「かはっ……」
「出て行けよ」
衝撃で息が詰まりうまく呼吸ができない僕を見下ろし、一城先輩は告げる。
「い、やだ」
「何?」
「嫌だ。僕はアカリちゃんに逢いにきたんだ……だから、出て行かない」
一城先輩の目を見据えて言った。
「ふざけんなっ」
痛みでまだ立ち上がることができない僕は、一城先輩に蹴られて倒れた。
弾みで掛けてた眼鏡が外れた。
衝撃で頭がクラクラして、口の中にジワリと鉄の味が広がる。
「アカリは僕の番でもう僕の物だ。今更お前の出番はないんだよ」
ニヤリ口角を上げて僕を見下す一城先輩の言葉に、プツンと何かが切れる音が頭の中に響いた。
肩と頬の痛みが遠のき、僕は立ち上がって一城先輩を真っ直ぐ睨む。
「アカリちゃんは物じゃない。……項を噛んだからといって、貴方がアカリちゃんの番とは限らない。だって、アカリちゃんの番はアカリちゃんが決めることだから」
「はっ、そんな屁理屈……ぇ……な、なんだ、その眼は…?」
一城先輩が一歩後退する。
それを追うように僕は一歩前に出る。
「僕は………僕は、貴方と比べたらアルファとして出来損ないで欠陥品かもしれません。……でも、僕は……たとえアカリちゃんが僕以外の人を好きになっても……」
視線をアカリちゃんに移して続ける。
「それでも、僕は……アカリちゃんの一番近くにいたい……誰よりも近くにいたい」
「ヒロ……」
「僕はずっとアカリちゃんだけが好きで、アカリちゃんだけしか見ていなかった……だから……アカリちゃんが誰を選んだとしても、僕はこれからもずっとアカリちゃんだけしか見えないし、アカリちゃんしか好きじゃない」
そうだ。
それはとっても単純なことだった。
僕は今も昔もずっとアカリちゃんだけだった。
アカリちゃんだけが好きだった。
好きだから、ずっと一緒にいた。
だってーー
初めて会った時から、ずっと……。
アカリちゃんは僕の……。
パズルのピースがピタッと嵌った感じにスッキリして、「ふふふふっ」ってつい笑ってしまう。
なんでこんなに悩んでいたんだろう。
「なに、笑ってんだ………おま、え……ふざけんなっ」
「ヒロっ!」
アカリちゃんの声にハッとした僕は再び胸ぐらを掴まれ、目の前に一城先輩の振り上げた拳が迫ってきた。
けど、その拳はもう少しのところで僕には届かず、一城先輩が真横に吹っ飛んだ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
スローモーションでも見ているかのようだった。
胸ぐらを掴まれた瞬間、テーブルに飛び上がるアカリちゃんの姿が視界に入った。
すぐ一城先輩の体で見えなくなって、次に見えたのは飛び蹴りをかましたアカリちゃんだった。
かっこいいいな……でも。
「テーブルの上に土足で乗るなんて行儀悪いよ」
目の前に着地したアカリちゃんを注意をする。
「えー、今それ言うとこ~?」
「うん……」
クスッと小さく笑いあう。
「うん………逢いたかった」
僕は壊物を扱うようにそっとアカリちゃんを抱きしめる。
そうすると、フワリとアカリちゃんの"いい匂い"に包まれた。
僕の好きなアカリちゃんの匂いだ。
「ヒロ………」
「アカリちゃん、大好きだよ」
アカリちゃんの耳元で囁く。
やっとわかった僕の気持ちを伝えると、ズッと鼻を啜る音が聞こえた。
「ボクも………ボクもヒロが大好き………ずっと…ずっと逢いたかった」
アカリちゃんの腕が僕の背中に回り、ぎゅうっと僕の体を抱きしめる。
それを返すように僕も強く抱きしめた。
__________________
ヒロ、頑張りました。
実はここまでヒロはアカリに「大好き」って言葉を直接口にしていなかったんです。
(最近、そのことに気付いて私が焦りました)
「だ、誰だっ」
よくあるお決まりのセリフが飛ぶ。
「待たせたな」
「ああ、待ったよ」
涼しい顔で会話するお父さんと蒼さん。
僕は……
両親にガッシリと両脇を抱えられていた。
さながら、囚われの宇宙人。
ゆっくり降ろされ、フラつきつつ自分の足で立つ。
ちょっとカッコ悪い登場にも関わらず、それを笑う人は1人もいなかった。
背筋を伸ばししゃんとすると、大きく目を見開いたアカリちゃんと目が合った。
「……ひ、ろ…」
「アカリちゃん………逢いたかった」
僕は嬉しくて笑顔になった。
体は自然にアカリちゃんに向かって一歩また一歩足を進めるが、その歩みは突然、胸ぐらを掴まれ阻まれた。
「何でお前が来てるんだ?邪魔だ、出て行け」
「ヒロっ!」
僕は絨毯の敷かれた床に肩から落とされた。
「かはっ……」
「出て行けよ」
衝撃で息が詰まりうまく呼吸ができない僕を見下ろし、一城先輩は告げる。
「い、やだ」
「何?」
「嫌だ。僕はアカリちゃんに逢いにきたんだ……だから、出て行かない」
一城先輩の目を見据えて言った。
「ふざけんなっ」
痛みでまだ立ち上がることができない僕は、一城先輩に蹴られて倒れた。
弾みで掛けてた眼鏡が外れた。
衝撃で頭がクラクラして、口の中にジワリと鉄の味が広がる。
「アカリは僕の番でもう僕の物だ。今更お前の出番はないんだよ」
ニヤリ口角を上げて僕を見下す一城先輩の言葉に、プツンと何かが切れる音が頭の中に響いた。
肩と頬の痛みが遠のき、僕は立ち上がって一城先輩を真っ直ぐ睨む。
「アカリちゃんは物じゃない。……項を噛んだからといって、貴方がアカリちゃんの番とは限らない。だって、アカリちゃんの番はアカリちゃんが決めることだから」
「はっ、そんな屁理屈……ぇ……な、なんだ、その眼は…?」
一城先輩が一歩後退する。
それを追うように僕は一歩前に出る。
「僕は………僕は、貴方と比べたらアルファとして出来損ないで欠陥品かもしれません。……でも、僕は……たとえアカリちゃんが僕以外の人を好きになっても……」
視線をアカリちゃんに移して続ける。
「それでも、僕は……アカリちゃんの一番近くにいたい……誰よりも近くにいたい」
「ヒロ……」
「僕はずっとアカリちゃんだけが好きで、アカリちゃんだけしか見ていなかった……だから……アカリちゃんが誰を選んだとしても、僕はこれからもずっとアカリちゃんだけしか見えないし、アカリちゃんしか好きじゃない」
そうだ。
それはとっても単純なことだった。
僕は今も昔もずっとアカリちゃんだけだった。
アカリちゃんだけが好きだった。
好きだから、ずっと一緒にいた。
だってーー
初めて会った時から、ずっと……。
アカリちゃんは僕の……。
パズルのピースがピタッと嵌った感じにスッキリして、「ふふふふっ」ってつい笑ってしまう。
なんでこんなに悩んでいたんだろう。
「なに、笑ってんだ………おま、え……ふざけんなっ」
「ヒロっ!」
アカリちゃんの声にハッとした僕は再び胸ぐらを掴まれ、目の前に一城先輩の振り上げた拳が迫ってきた。
けど、その拳はもう少しのところで僕には届かず、一城先輩が真横に吹っ飛んだ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
スローモーションでも見ているかのようだった。
胸ぐらを掴まれた瞬間、テーブルに飛び上がるアカリちゃんの姿が視界に入った。
すぐ一城先輩の体で見えなくなって、次に見えたのは飛び蹴りをかましたアカリちゃんだった。
かっこいいいな……でも。
「テーブルの上に土足で乗るなんて行儀悪いよ」
目の前に着地したアカリちゃんを注意をする。
「えー、今それ言うとこ~?」
「うん……」
クスッと小さく笑いあう。
「うん………逢いたかった」
僕は壊物を扱うようにそっとアカリちゃんを抱きしめる。
そうすると、フワリとアカリちゃんの"いい匂い"に包まれた。
僕の好きなアカリちゃんの匂いだ。
「ヒロ………」
「アカリちゃん、大好きだよ」
アカリちゃんの耳元で囁く。
やっとわかった僕の気持ちを伝えると、ズッと鼻を啜る音が聞こえた。
「ボクも………ボクもヒロが大好き………ずっと…ずっと逢いたかった」
アカリちゃんの腕が僕の背中に回り、ぎゅうっと僕の体を抱きしめる。
それを返すように僕も強く抱きしめた。
__________________
ヒロ、頑張りました。
実はここまでヒロはアカリに「大好き」って言葉を直接口にしていなかったんです。
(最近、そのことに気付いて私が焦りました)
42
あなたにおすすめの小説
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【本編完結】期限つきの恋
こうらい ゆあ
BL
神崎葵は、聖桜病院の特別病棟で静かな日々を送っていた。
Ω性特有の難病『フェロモン崩壊症』に冒された彼は、かつてイラストレーターとして活躍していたが、今では病室でひとり、スケッチブックに心を刻む。
余命わずかな時間の中、担当医・佐藤悠真との出会いが、閉ざされた白い病室に温かな光を灯す。
葵の海への憧れ、恋への憧憬が色鮮やかに花開くが、時間は無情にも迫ってくる。
限られた時間の中での、儚い恋のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる