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第二十四話 鳥
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ようやく陽が登り始めた頃、船体後方部が開き、カリーナ達が帰ってきた。カリーナの声の抑揚とその足取りの軽さから、何か良い出来事があったのだとすぐに分かった。
「みんなー!良い知らせを持ってきたわよ」
カリーナは大きな声で元気よくみんなに話しかける。
「はぁあ……待ちくたびれたぜ」
ブルーは大きく背伸びをすると、そのまま大きなあくびをした。
「何だか、みんな疲れてそうね」
「朝方とはいえ、まだ陽が昇っていないからな。夜みたいなもんだ。良い子はまだ、ねんねの時間よ」
「そう、それなら良かったわ」
カリーナはみんなを集合させると、王都であった出来事を居残り組に説明した。
「兵長が作った反乱軍か……」
ブレイブはカリーナの説明を咀嚼する。
「というわけで、明日、私たちは反乱軍と一緒に王国を奪還するわよ」
「作戦は?」
「まず反乱軍が王都を攻めて、正規兵達の足止めを行ってもらう手筈になっているわ。私たちはその隙に王城に乗り込んで、敵を倒して王様と女王様を奪還!簡単でしょ?」
「確かにそれは簡単だ」
朝食のパンを齧りながらブルーが答える。
「反乱軍に正規兵を抑えられるだけの人数がいるんだな」
「兵長の声かけのおかげで、元正規兵だった人達を大勢集める目処がたったからね」
「まだこの国を諦めていない奴が多いってわけか」
ブレイブは手に握る蛇の胸章を指でなぞった。
「そうだ!カルも誘いましょう!味方は一人でも多い方がいいわ」
カリーナの一言に空気が重くなる。
「何よ、急に黙っちゃって」
「ほらよ」
ブレイブは蛇の胸章をカリーナに投げる。
「これは?」
「カルが死に際に掴んだ敵の正体だ」
「死に際って何よ……」
「カルは死んだ」
「死んだ!?」
前のめりになったカリーナを静めながら、ブレイブがことの経緯を説明する。
説明中、カリーナは怒りと悲しみで表情が定まっていなかった。
「その蛇の胸章が、敵の手掛かりだ……というより正体だな」
ブレイブは一呼吸おくと見解を述べた。
「カリーナが説明してくれたクラリオって貴族と赤蛇をシンボルとした盗賊団、彼らが手を組んだってことだ……敵が明確になれば戦いやすくはなるか」
「ところでよ、カリーナ。明日は思い切り暴れていいんだろ?怒りでやきぐいが止まらなくてな」
ブルーは、何個目かのパンを口に運ぶ。
「もちろん!思う存分暴れて結構よ!」
カリーナは両頬をパチンと叩くと気合を入れる。
「ワクワクしてきたぜ」
「そうだ、ブルー」
「何だ?ブレイブ」
「やき食いじゃなくてやけ食い、な」
◆◇◆◇
反乱軍の地下基地の一室で、レオンハートは項垂れていた。
「たった一日の間に、このようなことになるとは……」
この日は、各地に散らばっていた元正規兵達が集う日であった。しかし、待ち合わせ場所に指定した丘に集まった同志の人数は、想定よりもずっと少なかったのである。
先ほど届いた伝令によるところ、クラリオの手により元正規兵が住む村々は焼かれてしまったらしく、その生き残り、もしくは偶々その存在がバレていなかった元正規兵達しか集結することが叶わなかったのだ。
作戦の決行日が明日に迫る中、起こった突然の出来事にレオンハートは苦悩していた。
(先手を打たれたか)
レオンハートは、ウロウロと部屋を右往左往している。
このような事態を受けて、部下の一人がレオンハートに打診する。
「兵長!作戦決行日をズラした方が良いのでは?」
最もな考えであったが、それをできない理由があった。
「奴らは、俺たちの存在を知った上でこのようなことを起こしたのだ。先手を取られていることは、この反乱軍の中に奴らの手に落ちた者がいても不思議ではない。決行日をズラせば、俺たちのスキになりかねない」
(ここが攻められていないということは、こちらの全てを敵が掴んでいるわけではないということだが、この場所がバレるのも恐らく時間の問題だろう。残された時間は少ない)
「作戦決行日の変更はなしだ。明日、俺たちはこの国の日の出を見にいく」
◆◇◆◇
王城の最上階に、クラリオとグルードの姿があった。
「反乱軍の存在を突き止めた優秀な私の部下達が、反乱分子になり得る元正規兵が住む村々を焼き尽くしましたよ」
「兵長は?」
グルードのひと睨みにクラリオは表情を崩さずに答える。
「居場所は特定していますよ。しかしあえて泳がせているだけです」
「すぐに殺せ」
「まぁまぁ落ち着いて下さい。反乱軍は明日、この国を取り戻そうと、向こう側からノコノコとやってきますから」
「そうなる前に倒せばいいだろ」
「はぁ。相変わらず……つまらない男ですね。手に入れた新兵器、あれを使って民衆の前で兵長を血祭りにあげるのですよ。彼らの希望が目の前で無惨に打ち砕かれる……それにより国民の支配はよりしやすくなるでしょうから」
「なるほど、それなら結構だ」
「私も無策じゃないですよ。万が一、反乱軍が隣国に助けを乞いていた場合も想定しております。隣国の増援に備え、すでに貴方がた『赤蛇』を各地から呼び寄せていますよ。長期戦になっても万全です」
俺に断れも入れず勝手に部下に指示を飛ばしやがってとグルードは一瞬思ったが、計算づくされたクラリオの策略とその不気味な表情に押し黙ったのだった。
「さぁ貴方たちの希望が打ち砕かれた時の表情が待ち遠しい!さぞ美しいことでしょう」
クラリオは大声で宣言をし振り返る。
手足と口を縛られ、牢に閉じ込められたこの国の王と王妃の歪んだ顔を見て口角を上げた。
◆◇◆◇
『スターダッシュ号』の船内が寝静まった頃、プシューッという音を立て、後方のハッチが開く。アリスは一人、船外へと出ていった。
「ん……アリス?」
機械音で目が覚めたカリーナは、寝ぼけた目をこすりながら、アリスが船外へ出ていくのを見つける。
心配になったカリーナは、アリスの後を追って外へ出ていった。
外に出ると、ホーホーと鳴く夜の鳥の鳴き声と微かな風音が耳に聞こえてくる。月明かりに照らされた船体近くの丸太にアリスは座っていた。
夜空を見上げて、物思いにふけるアリスを見つけたカリーナは、ゆっくりとアリスに近づいた。
「どうしたの?眠れない?」
アリスは、突然の人の声にビクッと体が小さく跳ねたが、カリーナの顔を見てホッと胸を撫で下ろした。
「びっくりしました。カリーナ様」
「ごめんね」
そう言うとカリーナはアリスの隣に腰を下ろした。
「わたくし……戦いが怖くて……もし負けてしまったらと考えてしまって……とてもとても不安なのです」
そう言って、ぎゅっと手に力を込めるアリスの小さな握り拳を、カリーナはそっと手で包む。
「そうね……私だって戦うのは勇気がいる。でも、戦って取り戻さないといけないなら戦うしかないの。そうなった時に、負ける心配をするんじゃなくて、どうやったら勝てるかを考える」
カリーナはアリスの顔をじっと見つめる。
「どうやったら勝てるか……」
「後ろじゃなくて前を見ろ、負けじゃなくて勝ちを考えろ」
「カリーナ様って賢い言葉をお知りなのですね」
「これはね、ギャンブルで負けて落ち込んだ時にブレイブから教わったの」
「まぁブレイブ様が」
カリーナは、そっとアリスを抱き寄せる。
「アリスは強い!本当に本当に強い!」
カリーナはアリスの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「わたくし、みんなみたいに強くないです。全く戦えないですから」
「武力だけがその人の強さじゃないのよ、知力も心も立派なその人の強さよ」
「アリスが行動したから、今私たちは一緒にいる。心配しないで、貴女は強いから」
カリーナはポンとアリスの胸を叩いた。
◆◇◆◇
アリスとカリーナが外に出ていった頃、目を覚ましたブレイブはじっと考え事をしていた。
やがて自分の中で答えが出ると目を開け、誰かに向けて手紙を書き、その手紙を小さな筒の中に入れた。
ブレイブは船体後方の小窓を開けると、窓の縁に筒を置いた。しばらくすると、一羽の白い鳥がその筒を取りに来て、そして空高く飛び去っていった。
「誰に書いたんだ?ブレイブ」
ブレイブの行動をずっと見ていたサラマンダーが尋ねる。
「腐れ縁だよ」
ブレイブは鼻でフッと笑うと、操縦席に戻り、目を閉じた。
◆◇◆◇
「……鳥が空に」
月明かりに照らされた白い鳥が空高く飛び立っていくのをアリスは指で追う。
「風邪ひくといけないし、そろそろ戻りましょうか」
カリーナはアリスの手を引いて、一緒に船内へと戻っていった。
「みんなー!良い知らせを持ってきたわよ」
カリーナは大きな声で元気よくみんなに話しかける。
「はぁあ……待ちくたびれたぜ」
ブルーは大きく背伸びをすると、そのまま大きなあくびをした。
「何だか、みんな疲れてそうね」
「朝方とはいえ、まだ陽が昇っていないからな。夜みたいなもんだ。良い子はまだ、ねんねの時間よ」
「そう、それなら良かったわ」
カリーナはみんなを集合させると、王都であった出来事を居残り組に説明した。
「兵長が作った反乱軍か……」
ブレイブはカリーナの説明を咀嚼する。
「というわけで、明日、私たちは反乱軍と一緒に王国を奪還するわよ」
「作戦は?」
「まず反乱軍が王都を攻めて、正規兵達の足止めを行ってもらう手筈になっているわ。私たちはその隙に王城に乗り込んで、敵を倒して王様と女王様を奪還!簡単でしょ?」
「確かにそれは簡単だ」
朝食のパンを齧りながらブルーが答える。
「反乱軍に正規兵を抑えられるだけの人数がいるんだな」
「兵長の声かけのおかげで、元正規兵だった人達を大勢集める目処がたったからね」
「まだこの国を諦めていない奴が多いってわけか」
ブレイブは手に握る蛇の胸章を指でなぞった。
「そうだ!カルも誘いましょう!味方は一人でも多い方がいいわ」
カリーナの一言に空気が重くなる。
「何よ、急に黙っちゃって」
「ほらよ」
ブレイブは蛇の胸章をカリーナに投げる。
「これは?」
「カルが死に際に掴んだ敵の正体だ」
「死に際って何よ……」
「カルは死んだ」
「死んだ!?」
前のめりになったカリーナを静めながら、ブレイブがことの経緯を説明する。
説明中、カリーナは怒りと悲しみで表情が定まっていなかった。
「その蛇の胸章が、敵の手掛かりだ……というより正体だな」
ブレイブは一呼吸おくと見解を述べた。
「カリーナが説明してくれたクラリオって貴族と赤蛇をシンボルとした盗賊団、彼らが手を組んだってことだ……敵が明確になれば戦いやすくはなるか」
「ところでよ、カリーナ。明日は思い切り暴れていいんだろ?怒りでやきぐいが止まらなくてな」
ブルーは、何個目かのパンを口に運ぶ。
「もちろん!思う存分暴れて結構よ!」
カリーナは両頬をパチンと叩くと気合を入れる。
「ワクワクしてきたぜ」
「そうだ、ブルー」
「何だ?ブレイブ」
「やき食いじゃなくてやけ食い、な」
◆◇◆◇
反乱軍の地下基地の一室で、レオンハートは項垂れていた。
「たった一日の間に、このようなことになるとは……」
この日は、各地に散らばっていた元正規兵達が集う日であった。しかし、待ち合わせ場所に指定した丘に集まった同志の人数は、想定よりもずっと少なかったのである。
先ほど届いた伝令によるところ、クラリオの手により元正規兵が住む村々は焼かれてしまったらしく、その生き残り、もしくは偶々その存在がバレていなかった元正規兵達しか集結することが叶わなかったのだ。
作戦の決行日が明日に迫る中、起こった突然の出来事にレオンハートは苦悩していた。
(先手を打たれたか)
レオンハートは、ウロウロと部屋を右往左往している。
このような事態を受けて、部下の一人がレオンハートに打診する。
「兵長!作戦決行日をズラした方が良いのでは?」
最もな考えであったが、それをできない理由があった。
「奴らは、俺たちの存在を知った上でこのようなことを起こしたのだ。先手を取られていることは、この反乱軍の中に奴らの手に落ちた者がいても不思議ではない。決行日をズラせば、俺たちのスキになりかねない」
(ここが攻められていないということは、こちらの全てを敵が掴んでいるわけではないということだが、この場所がバレるのも恐らく時間の問題だろう。残された時間は少ない)
「作戦決行日の変更はなしだ。明日、俺たちはこの国の日の出を見にいく」
◆◇◆◇
王城の最上階に、クラリオとグルードの姿があった。
「反乱軍の存在を突き止めた優秀な私の部下達が、反乱分子になり得る元正規兵が住む村々を焼き尽くしましたよ」
「兵長は?」
グルードのひと睨みにクラリオは表情を崩さずに答える。
「居場所は特定していますよ。しかしあえて泳がせているだけです」
「すぐに殺せ」
「まぁまぁ落ち着いて下さい。反乱軍は明日、この国を取り戻そうと、向こう側からノコノコとやってきますから」
「そうなる前に倒せばいいだろ」
「はぁ。相変わらず……つまらない男ですね。手に入れた新兵器、あれを使って民衆の前で兵長を血祭りにあげるのですよ。彼らの希望が目の前で無惨に打ち砕かれる……それにより国民の支配はよりしやすくなるでしょうから」
「なるほど、それなら結構だ」
「私も無策じゃないですよ。万が一、反乱軍が隣国に助けを乞いていた場合も想定しております。隣国の増援に備え、すでに貴方がた『赤蛇』を各地から呼び寄せていますよ。長期戦になっても万全です」
俺に断れも入れず勝手に部下に指示を飛ばしやがってとグルードは一瞬思ったが、計算づくされたクラリオの策略とその不気味な表情に押し黙ったのだった。
「さぁ貴方たちの希望が打ち砕かれた時の表情が待ち遠しい!さぞ美しいことでしょう」
クラリオは大声で宣言をし振り返る。
手足と口を縛られ、牢に閉じ込められたこの国の王と王妃の歪んだ顔を見て口角を上げた。
◆◇◆◇
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「ん……アリス?」
機械音で目が覚めたカリーナは、寝ぼけた目をこすりながら、アリスが船外へ出ていくのを見つける。
心配になったカリーナは、アリスの後を追って外へ出ていった。
外に出ると、ホーホーと鳴く夜の鳥の鳴き声と微かな風音が耳に聞こえてくる。月明かりに照らされた船体近くの丸太にアリスは座っていた。
夜空を見上げて、物思いにふけるアリスを見つけたカリーナは、ゆっくりとアリスに近づいた。
「どうしたの?眠れない?」
アリスは、突然の人の声にビクッと体が小さく跳ねたが、カリーナの顔を見てホッと胸を撫で下ろした。
「びっくりしました。カリーナ様」
「ごめんね」
そう言うとカリーナはアリスの隣に腰を下ろした。
「わたくし……戦いが怖くて……もし負けてしまったらと考えてしまって……とてもとても不安なのです」
そう言って、ぎゅっと手に力を込めるアリスの小さな握り拳を、カリーナはそっと手で包む。
「そうね……私だって戦うのは勇気がいる。でも、戦って取り戻さないといけないなら戦うしかないの。そうなった時に、負ける心配をするんじゃなくて、どうやったら勝てるかを考える」
カリーナはアリスの顔をじっと見つめる。
「どうやったら勝てるか……」
「後ろじゃなくて前を見ろ、負けじゃなくて勝ちを考えろ」
「カリーナ様って賢い言葉をお知りなのですね」
「これはね、ギャンブルで負けて落ち込んだ時にブレイブから教わったの」
「まぁブレイブ様が」
カリーナは、そっとアリスを抱き寄せる。
「アリスは強い!本当に本当に強い!」
カリーナはアリスの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「わたくし、みんなみたいに強くないです。全く戦えないですから」
「武力だけがその人の強さじゃないのよ、知力も心も立派なその人の強さよ」
「アリスが行動したから、今私たちは一緒にいる。心配しないで、貴女は強いから」
カリーナはポンとアリスの胸を叩いた。
◆◇◆◇
アリスとカリーナが外に出ていった頃、目を覚ましたブレイブはじっと考え事をしていた。
やがて自分の中で答えが出ると目を開け、誰かに向けて手紙を書き、その手紙を小さな筒の中に入れた。
ブレイブは船体後方の小窓を開けると、窓の縁に筒を置いた。しばらくすると、一羽の白い鳥がその筒を取りに来て、そして空高く飛び去っていった。
「誰に書いたんだ?ブレイブ」
ブレイブの行動をずっと見ていたサラマンダーが尋ねる。
「腐れ縁だよ」
ブレイブは鼻でフッと笑うと、操縦席に戻り、目を閉じた。
◆◇◆◇
「……鳥が空に」
月明かりに照らされた白い鳥が空高く飛び立っていくのをアリスは指で追う。
「風邪ひくといけないし、そろそろ戻りましょうか」
カリーナはアリスの手を引いて、一緒に船内へと戻っていった。
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