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第二十三話 火の知らせ
しおりを挟むチィン……チィン……。
王都へ出掛けたカリーナ達の帰りを待つブレイブ、ブルー、アリスの三人は、『スターダッシュ号』の船内で暇を持て余していた。
「ブレイブ、お前のそのコイン癖はどうにかならねぇのか?」
「コインが飛びたがっているから無理だ。俺の意思じゃない」
「くだらね」
ブルーはまともに耳を貸さないブレイブに呆れた。
「おい、アリス。お前も、ウジウジしてないで姫ならドンと構えてろ」
ブルーは、心配そうに船体後方の小窓から外を眺めているアリスに言った。
「ったくどいつもこいつも……」
ブルーは、アイに取り上げられていた芋を口に頬張った。
「あ!」
小窓を見ていたアリスが何かを見つけ、小さく反応する。
「どうした、アリス。白馬の王子様でもやってきたか?どれどれ……この俺が、アリスに相応しい相手かどうか見定めてやろう」
ブルーがアリスの見ている小窓を覗こうと立ち上がろとした時、ブレイブが弾くコインの音が止んだ。
「おい、ブルー」
「ああブレイブ、空が焼けてるな」
小窓の外、黒い雲に覆われた空の一部がぼんやりと淡い赤色で照らされていた。その方角にはカルの村があった。
嫌な予感がしたブレイブ達は、急いでカルの村へと向かった。
◆◇◆◇
村の家々が焼かれ、あちらこちらに血溜まりが出来ている。人の声なんて何一つ聞こえてこない。
ブレイブ達が駆けつけた頃には、村は息絶えていた。
「何が起きたんだよ、ここで!」
ブレイブは、目の前に広がる見るに絶えない惨状に叫んだ。
アリスは目を伏せ、ブルーは静かに佇む。
「そばを離れるな」
ブルーはアリスに囁く。
村の火は所々消えておらず、まだ敵が近くにいるかもしれない状況であった。ブルーは、アリスの「私も連れていって」という我儘に従い、渋々連れ出したのを後悔し始めていた。
散らばった木片の上を歩きながら、一縷の望みをかけて、カルを探す。
しかし、残念な形でカルと再会することとなった。
「……」
ブレイブは折れた剣を握ったまま地面に倒れているカルを見つけてしまった。
苦悶の表情を浮かべながら静かに横たわるカルを見て、ブレイブは拳を強く握る。
「もっと早くに気づいていれば……」
カルが戦士としてこの地で無念に散った。その事実がブレイブの心を強く痛めつけた。
「ひでーことしやがる」
後から歩いてきたブルーが村の惨状を見て、そしてカルの死体を横目に呟いた。
「誰がやったんだろうな」
ブルーは屈むと、剣を握っていない方のカルの握り拳から、はみ出ている布を引っ張り出した。
「それは?」
ブレイブが尋ねる。
「……蛇だ」
ブルーは蛇の胸章をブレイブに手渡す。
ブレイブは胸章を強く握ると、うつ伏せになったカルの方を向いた。
カルが掴んだ敵の正体、それはブレイブ達に確かに伝わっていた。
アリスは、カルの胸に付けられた海鳥の胸章に気づくと、カルの安らぎを祈った。
(貴方の死を絶対に無駄にはさせません)
◆◇◆◇
ブルーとブレイブは周りを警戒しながら、死体を一箇所に集めると、火をつける。
ゴウゴウと立ち昇る火柱を眺めながら、村の無念を噛み締めた。
「なぁアリス」
ブレイブは、両手を組んで祈り続けるアリスに伝える。
アリスはゆっくりと目を開けると、火柱を見つめるブレイブを見上げた。
「これで最後だ、約束する」
「……はい、そうしましょう」
アリスは目元を拭うと空高く火柱を目に焼き付け、覚悟を決めた。
「肩の力を抜け、肩が凝るぞ」
ブルーは、体に力が入っていたアリスの肩をポンと叩くと、白い牙を見せつけてやった。
◆◇◆◇
「蛇か……」
船内に戻ったブレイブ達は、カルが握っていた胸章を机に置いて眺めていた。
「村を焼いた連中が、あの盗賊団だと答え合わせが出来たわけだ」
「そう言うことになるな」
「国を乗っ取ったのが赤蛇だとして、村を燃やす理由って何だ?言葉を選ばずに言うが、小さな村をわざわざ燃やすなんて愉快犯がすぎるだろ」
「重要なものが隠されていたとか?」
ブルーが顎に手をあてる。
「そんなもの無さそうだったけどな」
「あー難しいことを考えるのはやめだ、やめだ。分かったのは、あの村は敵に燃やされた。俺たちはこれから敵を倒す、単純な話だ」
頭をフル回転させ考えていたブルーの頭が爆発寸前だった。このままだとブルーの体が怒りで紅くなってしまうと悟ったブレイブは話を切り上げる。
「そうだな、単純だった。……敵を潰せばいいだけの話」
ブレイブは操縦席に座り、椅子をくるりと回転させる。ブルーに難しいことを聞くのは野暮であったと思い出して、小さく笑った。
「今はカリーナ達の知らせを待とう」
ブレイブは、静かに風に揺れる木の枝を見ながら、コインを宙に放った。
この日、カリーナ達は帰って来なかった。
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