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第二十二話 謎の兵器
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翌朝、カルファス王国の空は、黒い雲に覆い尽くされていた。
自警団のカルは、いつものように日課の見回りに出かけるために、玄関で靴を履き替えていた。
玄関の戸を開け、外に出た時、村の入り口がやけに騒がしくなっていることに気づいたカルは、村の入り口へ足早に駆けていった。
村の入り口に到着した彼を出迎えたのは、武装した大勢の正規兵とその中心に優雅に立つ貴族――クラリオ・ビザカルの姿であった。
カル以外の自警団の団員達もその場に集合しており、その異様な雰囲気に、村人は隠れようにそれぞれの家へと帰っていった。
「おやおや、あなた方がこの村を守る兵士たちでしょうか?」
クラリオはひざまづく自警団を見下ろした。
「はっ!クラリオ様」
カルは自警団のまとめ役として、クラリオに返事を返す。
「それは良かった。探す手間が省けましたよ」
クラリオの言葉で自警団に緊張が走る。
「クラリオ様、この辺鄙な村に何用でございますでしょうか?」
「大したことではないですよ。実は今、私たちの国が何者かに脅かされていまして。反乱分子になり得る存在を消しにきたんですよ、兵器の実験も兼ねて」
クラリオは淡々と感情なく、目の前の国民に向けて邪魔だと言ってみせた。
「クラリオ様!私たちは決してそのような叛意は……」
カルの必死の言葉は、クラリオの手に遮られる。
「大丈夫です。賢いあなた達がそんなことをしないことぐらい分かっていますよ。大変苦しいですが……これは、王都に迫る不確定要素をゼロにするためには仕方のない犠牲なのです」
それはクラリオによる突然の処刑宣言であった。
「クラリオ様!!私には家族がいます。どうかどうか命だけも!!」
自警団の一人が懇願する。
クラリオは何も言わず手を振ると、背中を向けた。
「それでは、反乱分子の諸君には、王国の発展の為の犠牲になって頂きたい」
クラリオの姿は正規兵の集団に隠れていった。
◆◇◆◇
村はあっという間に正規兵の集団に囲まれ、封鎖された。
正規兵の数に対して、自警団の人数差は明らかに少なく、自警団だけでの対処が不可能なのは火を見るより明らかであった。
「どうしますか?」
自警団の一人がカルに尋ねる。声の節々の震えから恐怖が伝わってくる。
「……剣を……取るしかない。一点集中で、包囲をこじ開けて村人を何としてでも逃す」
「了解しました!」
「全員、村人を村の裏側に誘導させるんだ!」
カルの指示で村人達が自警団の誘導に従い、村の裏側へと歩いていく。
ガシャン、ガシャン、ガシャン。
地響きと共に村に近づく大きな金属音が、カルの耳に聞こえてきた。
始まる……。そう感じたカルは自分を鼓舞し、自警団に目配せをする。
近づいてきたそれは巨大な金属の塊だった――
「おい、何なんだあれは……」
クラリオが言っていた兵器であるのは推測出来るが、それが何なのか、カル達は全く見当もつかなかった。しかし、この兵器がこの村に最悪をもたらすことだけは理解に容易かった。
ドン!
突然、金属の塊から炎の球が放たれる。その火球は村の家々を呑み込むと、音を立てて燃やしつくした。
「いくぞ、自警団!」
カル達は剣を抜くと、兵器に向かって走り出した。
金属の塊に向かって剣を振るが、弾かれてしまう。刃が通らず、自警団の団員の一人が金属の足に踏み潰されてしまった。
「ぐぎゃぁぁ!!」
踏み潰された足を抑える団員を、他の団員が抱え、戦線から離脱しようとするが、逃がさまいと金属の塊から放たれた火球に瞬く間に呑み込まれてしまった。
金属の塊の中からクラリオの悦びが聞こえてくる。
「素晴らしい、素晴らしい」
「クソッタレが!」
カルは思い切り剣を振りかざす。だが……
ギィィン!!
その一振りは、鈍い金属音を鳴らすだけに留まり……剣は不覚にも根元からへし折れてしまった。
「邪魔な羽虫だこと」
金属の塊はカルを蹴り飛ばす。勢いよく飛ばされたカル体は村の家の壁を突き破る。カルは意識を失った。
金属の塊の行進は止まらない。包囲網を突破するはずだった自警団は、迫り来る金属の塊を抑えることに少ない人員を割かれてしまい、作戦が止まっていた。
自警団の数が一人、また一人と減らされ、追い詰められた村人達は村の端にある村長宅へ避難し、身を寄せ合って無事を祈ることしか出来なくなっていた。
◆◇◆◇
カルが意識を取り戻した頃には、村のほぼ全てが焼かれ、村人達ひいては自警団の生存は絶望的であった。
壁に開いた穴から見える金属の塊が、村を蹂躙している姿はカルを酷く痛めつけた。
蹂躙している筈なのに人の叫び声は聞こえて来ず、ただボウボウと燃える炎の音だけが耳に残る。
(このまま意識を手放して、何も分からず死んでしまう方が楽だろう……目を閉じて楽しき過去の夢でも見ようか)
カルは、徐に胸のポケットにしまってあった胸章を取り出す。それは、正規兵として任命されたものに与えられるものであった。
(このまま眠って……いや違うか)
カルは折れた剣を見やると、ゆっくりと立ち上がり、胸章を胸に付けた。
扉を開けると、村の家々を壊す金属の塊へとゆっくりと歩み始める。
(まだ戦えるぞ……俺は)
カルは折れた剣を強く握る。
(まだこの国は……終わっていない)
カルは金属の塊の目の前に立った。
「あらあら、まだ生き残りがいたのですか」
金属の塊から聞こえる面倒くさそうな声が、カルの脳を揺らす。
「我が名はカル!誇り高きカルファス王国正規兵である!!」
カルは剣を金属の塊に向かって振り上げ、何度も叩く。ガンゴンと音は出るが、傷一つつけることは出来なかった。
「気が済みましたか?」
クラリオはカルの体を蹴り飛ばす。地面を何度かバウンドした後、カルは地面に横たわった。
クラリオは兵器の性能に満足し、地面に降りると、とどめを刺すために剣を抜いてカルに近づく。
「まだだ……!」
カルは油断して近づいてきたクラリオに飛び掛かった。
「醜いものですね」
クラリオは服を掴んできたカルを地面に押し倒すと、剣を振り翳した。
「届きませんよ、あなたの剣は」
◆◇◆◇
クラリオは力無く倒れたカルを冷たく一瞥した。
それを見て、村を取り囲んでいた正規兵達が村の中へと足を踏み入れ始める。
「生き残りがいたら殺せ!」
正規兵の隊長は部下へ指示を飛ばすと、クラリオへと歩み寄った。
「実験は成功ですよ」
結果に満足げなクラリオは、ひざまづいた隊長を見下ろした。
「それは大変喜ばしいことでありますな、クラリオ様」
「他の村の反乱分子についてはどうなっていますか?」
「全て、順調で御座います。かつての正規兵達が王国の脅威になることはあり得ないでしょう」
「兵長(レオンハート)の居所は見つかりましたか?」
クラリオは優しい口調で隊長を脅す。
「いえ……それは残念ながら」
「王国の統一はすぐそこまで来ているのですよ。この新兵器が私たちの元にあるにせよ、最善を尽くさないといけません。期待していますよ、隊長殿」
クラリオは、首を垂れている隊長の顔を持ち上げると、その頬を優しく撫でた。
「ではでは、この素晴らしき成果を共有する為に王都へ帰還しますよ」
クラリオは、生存者を探し終えて待機している兵士たちに呼びかけた。
自警団のカルは、いつものように日課の見回りに出かけるために、玄関で靴を履き替えていた。
玄関の戸を開け、外に出た時、村の入り口がやけに騒がしくなっていることに気づいたカルは、村の入り口へ足早に駆けていった。
村の入り口に到着した彼を出迎えたのは、武装した大勢の正規兵とその中心に優雅に立つ貴族――クラリオ・ビザカルの姿であった。
カル以外の自警団の団員達もその場に集合しており、その異様な雰囲気に、村人は隠れようにそれぞれの家へと帰っていった。
「おやおや、あなた方がこの村を守る兵士たちでしょうか?」
クラリオはひざまづく自警団を見下ろした。
「はっ!クラリオ様」
カルは自警団のまとめ役として、クラリオに返事を返す。
「それは良かった。探す手間が省けましたよ」
クラリオの言葉で自警団に緊張が走る。
「クラリオ様、この辺鄙な村に何用でございますでしょうか?」
「大したことではないですよ。実は今、私たちの国が何者かに脅かされていまして。反乱分子になり得る存在を消しにきたんですよ、兵器の実験も兼ねて」
クラリオは淡々と感情なく、目の前の国民に向けて邪魔だと言ってみせた。
「クラリオ様!私たちは決してそのような叛意は……」
カルの必死の言葉は、クラリオの手に遮られる。
「大丈夫です。賢いあなた達がそんなことをしないことぐらい分かっていますよ。大変苦しいですが……これは、王都に迫る不確定要素をゼロにするためには仕方のない犠牲なのです」
それはクラリオによる突然の処刑宣言であった。
「クラリオ様!!私には家族がいます。どうかどうか命だけも!!」
自警団の一人が懇願する。
クラリオは何も言わず手を振ると、背中を向けた。
「それでは、反乱分子の諸君には、王国の発展の為の犠牲になって頂きたい」
クラリオの姿は正規兵の集団に隠れていった。
◆◇◆◇
村はあっという間に正規兵の集団に囲まれ、封鎖された。
正規兵の数に対して、自警団の人数差は明らかに少なく、自警団だけでの対処が不可能なのは火を見るより明らかであった。
「どうしますか?」
自警団の一人がカルに尋ねる。声の節々の震えから恐怖が伝わってくる。
「……剣を……取るしかない。一点集中で、包囲をこじ開けて村人を何としてでも逃す」
「了解しました!」
「全員、村人を村の裏側に誘導させるんだ!」
カルの指示で村人達が自警団の誘導に従い、村の裏側へと歩いていく。
ガシャン、ガシャン、ガシャン。
地響きと共に村に近づく大きな金属音が、カルの耳に聞こえてきた。
始まる……。そう感じたカルは自分を鼓舞し、自警団に目配せをする。
近づいてきたそれは巨大な金属の塊だった――
「おい、何なんだあれは……」
クラリオが言っていた兵器であるのは推測出来るが、それが何なのか、カル達は全く見当もつかなかった。しかし、この兵器がこの村に最悪をもたらすことだけは理解に容易かった。
ドン!
突然、金属の塊から炎の球が放たれる。その火球は村の家々を呑み込むと、音を立てて燃やしつくした。
「いくぞ、自警団!」
カル達は剣を抜くと、兵器に向かって走り出した。
金属の塊に向かって剣を振るが、弾かれてしまう。刃が通らず、自警団の団員の一人が金属の足に踏み潰されてしまった。
「ぐぎゃぁぁ!!」
踏み潰された足を抑える団員を、他の団員が抱え、戦線から離脱しようとするが、逃がさまいと金属の塊から放たれた火球に瞬く間に呑み込まれてしまった。
金属の塊の中からクラリオの悦びが聞こえてくる。
「素晴らしい、素晴らしい」
「クソッタレが!」
カルは思い切り剣を振りかざす。だが……
ギィィン!!
その一振りは、鈍い金属音を鳴らすだけに留まり……剣は不覚にも根元からへし折れてしまった。
「邪魔な羽虫だこと」
金属の塊はカルを蹴り飛ばす。勢いよく飛ばされたカル体は村の家の壁を突き破る。カルは意識を失った。
金属の塊の行進は止まらない。包囲網を突破するはずだった自警団は、迫り来る金属の塊を抑えることに少ない人員を割かれてしまい、作戦が止まっていた。
自警団の数が一人、また一人と減らされ、追い詰められた村人達は村の端にある村長宅へ避難し、身を寄せ合って無事を祈ることしか出来なくなっていた。
◆◇◆◇
カルが意識を取り戻した頃には、村のほぼ全てが焼かれ、村人達ひいては自警団の生存は絶望的であった。
壁に開いた穴から見える金属の塊が、村を蹂躙している姿はカルを酷く痛めつけた。
蹂躙している筈なのに人の叫び声は聞こえて来ず、ただボウボウと燃える炎の音だけが耳に残る。
(このまま意識を手放して、何も分からず死んでしまう方が楽だろう……目を閉じて楽しき過去の夢でも見ようか)
カルは、徐に胸のポケットにしまってあった胸章を取り出す。それは、正規兵として任命されたものに与えられるものであった。
(このまま眠って……いや違うか)
カルは折れた剣を見やると、ゆっくりと立ち上がり、胸章を胸に付けた。
扉を開けると、村の家々を壊す金属の塊へとゆっくりと歩み始める。
(まだ戦えるぞ……俺は)
カルは折れた剣を強く握る。
(まだこの国は……終わっていない)
カルは金属の塊の目の前に立った。
「あらあら、まだ生き残りがいたのですか」
金属の塊から聞こえる面倒くさそうな声が、カルの脳を揺らす。
「我が名はカル!誇り高きカルファス王国正規兵である!!」
カルは剣を金属の塊に向かって振り上げ、何度も叩く。ガンゴンと音は出るが、傷一つつけることは出来なかった。
「気が済みましたか?」
クラリオはカルの体を蹴り飛ばす。地面を何度かバウンドした後、カルは地面に横たわった。
クラリオは兵器の性能に満足し、地面に降りると、とどめを刺すために剣を抜いてカルに近づく。
「まだだ……!」
カルは油断して近づいてきたクラリオに飛び掛かった。
「醜いものですね」
クラリオは服を掴んできたカルを地面に押し倒すと、剣を振り翳した。
「届きませんよ、あなたの剣は」
◆◇◆◇
クラリオは力無く倒れたカルを冷たく一瞥した。
それを見て、村を取り囲んでいた正規兵達が村の中へと足を踏み入れ始める。
「生き残りがいたら殺せ!」
正規兵の隊長は部下へ指示を飛ばすと、クラリオへと歩み寄った。
「実験は成功ですよ」
結果に満足げなクラリオは、ひざまづいた隊長を見下ろした。
「それは大変喜ばしいことでありますな、クラリオ様」
「他の村の反乱分子についてはどうなっていますか?」
「全て、順調で御座います。かつての正規兵達が王国の脅威になることはあり得ないでしょう」
「兵長(レオンハート)の居所は見つかりましたか?」
クラリオは優しい口調で隊長を脅す。
「いえ……それは残念ながら」
「王国の統一はすぐそこまで来ているのですよ。この新兵器が私たちの元にあるにせよ、最善を尽くさないといけません。期待していますよ、隊長殿」
クラリオは、首を垂れている隊長の顔を持ち上げると、その頬を優しく撫でた。
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