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第4章 迷宮都市
第53話 中級ダンジョン
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一夜明けて、本日。
「さて、今日は予定通り中級ダンジョンへと挑戦するぞ」
どうやら、俺は勘違いしていたらしいのだが、昨日探索した"闘流門"は通常、シリスティラビンにある初級ダンジョンを全て探索し終えてから、挑む最後の初級ダンジョンだったみたいだ。他の初級ダンジョンでダンジョンとは何か、どういうものなのかセオリーを学びつつ、制覇していき、最終的に最後の初級ダンジョンとして"闘流門"が待ち構えているらしい。別に挑む順番などは特に決められている訳ではなく、めんどくさがって、いきなり挑む者も中にはいるらしいのだが、俺達みたいに何となくで探索するのはかなり珍しいことだったみたいだ。だが、結果的にはそれで良かったと思う。最後の初級ダンジョンということで初級で出てくる全ての要素が全20階層にわたって、こちらを待ち受けているらしく、簡単に言えば、制覇できさえすれば、他の初級ダンジョンを全て制覇したのと同じ扱いになるみたいだ。だから、俺達はたまたま超効率的な探索を行うことができ、これで気持ち良く次の中級ダンジョンへと向かえるということなのだ。
「ちなみに中級ダンジョンはどこを?」
「"篩の園"。これまた、最後の中級ダンジョンみたいだ」
――――――――――――――――――――
「アイアンスパイダーがそっちに行ったぞ」
現在、20階層目。虫型の魔物が多く登場するエリアに俺達はいた。今、対峙しているのは鋼鉄の身体を持つ蜘蛛の魔物でスピードは他の魔物に比べると遅いが、防御力はかなり高い。見た目の鈍重さから、舐めてかかるとあっという間に足元を掬われてしまう程、危険な魔物みたいだ。
「絶望の森程ではないにしろ、こいつらも十分強い。油断は禁物だぞ」
一応、注意は飛ばしておくが、仲間達にとってはどうやら、そんなこと関係ないらしい。何故なら…………
「分かっています、主君!くらえ、"首落とし"!」
「主殿のご心配、痛み入ります!"拳骨見舞い"!」
今、まさにケンタウロス族のケープと巨人族のヒュージがアイアンスパイダーを一瞬の内に物言わぬ骸へと変えていたからだ。ヒュージに至っては身体中に糸が巻き付きついたまま、あちこちを動き回っている。動きにくくはないのだろうか?
「このエリアにはもう、探索すべきものがない。キリが良くなったら、行くぞ」
――――――――――――――――――――
中級ダンジョン"篩の園"、最後の階層である40階層目。ここに来るまでに適度な休憩や食事、睡眠などを挟んでいる為、全員体調に問題はない…………どころか、むしろ絶好調であった。敵からしたら、疲れた俺達を全力で叩き潰してやりたいと思っているはずであるが、そうは問屋が卸さない。何も相手のペースに乗ってやる必要がないのだ。こちらは万全の態勢で相手を迎え撃つだけである。ちなみにそんな絶好調な俺達を相手に戦う最後のボスは毒大蛇である。全員で話し合った結果、俺達の中から出撃するのは…………
「ご主人にいいところ、見せてぇな」
魚人族、龍魚種のフェンドに決まった。妙にやる気に満ちた表情をしている。
「一体、何があいつをそこまで駆り立てるんだ………?」
そう呟いた瞬間、何故か全員から呆れた顔で見られたのが納得いかなかった。
「来い、受け止めてぇやるぞ!」
「シャーーーッ!」
自分の身の丈程もある銛を軽々と振り回しながら、挑発するフェンド。それに対し、言葉は通じていないはずではあるが、雰囲気から自分が格下と認定されたと感じた大蛇は凄い勢いで向かっていく。大きく開いた口から覗く牙からは毒液が滴り落ち、通り過ぎた床を溶かしていく。あれに噛みつかれてしまっては並大抵の者では対処できず、そのまま全身に毒が回りきって、いずれは亡くなってしまうだろう。
「ふんっ!」
「シャ、シャ、シャッ………?」
しかし、それならば、直に触れなければいいだけの話である。俺がフェンドの為に製作した武器ならば、毒で溶かされるといった心配もないし、何より彼は自身の武器を使っている時が一番生き生きとしているのだ。これで彼も満足であろう……………まぁ、俺達には全員、状態異常が効かない為、直に触れても何の問題もないんだけどな。
「"串獲り"!」
「グワワァァワァァーー!!」
大蛇の大口を防いでいた銛を一旦手離したフェンドは直後、床と大蛇の隙間へと潜り込み、重力落下してきた銛を掴んで真下から上へと向かって、突き刺した。その大口を串刺しにする形で。すると、これには流石に堪らんと感じたのか、口が塞がってしまって、結果的にはくぐもった声となってしまったが、大きな奇声を発しながら、ダンジョンの壁へと一目散に頭から突っ込んでいった。
「これで終いだ………"高波"!」
だが、そこで終わらないのがフェンドという男。放っておけば、もうじき息絶える大蛇を逃してなるものかと今、ここで確実に仕留めにいく。生物の生存本能は時として、逆境を乗り越えて、予想もつかない行動を起こすことがある。その為、戦闘の最中での油断・過信など以ての外。相手が確実に息絶えるその時まで決して警戒を怠ってはならないのである。その点で言えば、フェンドのこの行動は合格といえるだろう。得意の水魔法もよく使いこなせていた。これも評価に値する。
「ご主人、終わりました!」
「良くやったな……………さて、探索はこれで全て終了だし、帰るか」
俺の合図で各々が帰り支度を始める。帰りはボス部屋にある帰還の魔法陣の上に乗って、ダンジョンの外へと出る仕組みなのだが、これを初級ダンジョンで初めて体験した際は驚いた。独特の感覚と好奇心がない混ぜになって、なんとも言えない気持ちになるのだ。まぁ、兎にも角にもギルドへと戻って報告と換金をしなければならない。明日はいよいよ、上級ダンジョン。今からワクワクが止まらないのだった。
「さて、今日は予定通り中級ダンジョンへと挑戦するぞ」
どうやら、俺は勘違いしていたらしいのだが、昨日探索した"闘流門"は通常、シリスティラビンにある初級ダンジョンを全て探索し終えてから、挑む最後の初級ダンジョンだったみたいだ。他の初級ダンジョンでダンジョンとは何か、どういうものなのかセオリーを学びつつ、制覇していき、最終的に最後の初級ダンジョンとして"闘流門"が待ち構えているらしい。別に挑む順番などは特に決められている訳ではなく、めんどくさがって、いきなり挑む者も中にはいるらしいのだが、俺達みたいに何となくで探索するのはかなり珍しいことだったみたいだ。だが、結果的にはそれで良かったと思う。最後の初級ダンジョンということで初級で出てくる全ての要素が全20階層にわたって、こちらを待ち受けているらしく、簡単に言えば、制覇できさえすれば、他の初級ダンジョンを全て制覇したのと同じ扱いになるみたいだ。だから、俺達はたまたま超効率的な探索を行うことができ、これで気持ち良く次の中級ダンジョンへと向かえるということなのだ。
「ちなみに中級ダンジョンはどこを?」
「"篩の園"。これまた、最後の中級ダンジョンみたいだ」
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「アイアンスパイダーがそっちに行ったぞ」
現在、20階層目。虫型の魔物が多く登場するエリアに俺達はいた。今、対峙しているのは鋼鉄の身体を持つ蜘蛛の魔物でスピードは他の魔物に比べると遅いが、防御力はかなり高い。見た目の鈍重さから、舐めてかかるとあっという間に足元を掬われてしまう程、危険な魔物みたいだ。
「絶望の森程ではないにしろ、こいつらも十分強い。油断は禁物だぞ」
一応、注意は飛ばしておくが、仲間達にとってはどうやら、そんなこと関係ないらしい。何故なら…………
「分かっています、主君!くらえ、"首落とし"!」
「主殿のご心配、痛み入ります!"拳骨見舞い"!」
今、まさにケンタウロス族のケープと巨人族のヒュージがアイアンスパイダーを一瞬の内に物言わぬ骸へと変えていたからだ。ヒュージに至っては身体中に糸が巻き付きついたまま、あちこちを動き回っている。動きにくくはないのだろうか?
「このエリアにはもう、探索すべきものがない。キリが良くなったら、行くぞ」
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中級ダンジョン"篩の園"、最後の階層である40階層目。ここに来るまでに適度な休憩や食事、睡眠などを挟んでいる為、全員体調に問題はない…………どころか、むしろ絶好調であった。敵からしたら、疲れた俺達を全力で叩き潰してやりたいと思っているはずであるが、そうは問屋が卸さない。何も相手のペースに乗ってやる必要がないのだ。こちらは万全の態勢で相手を迎え撃つだけである。ちなみにそんな絶好調な俺達を相手に戦う最後のボスは毒大蛇である。全員で話し合った結果、俺達の中から出撃するのは…………
「ご主人にいいところ、見せてぇな」
魚人族、龍魚種のフェンドに決まった。妙にやる気に満ちた表情をしている。
「一体、何があいつをそこまで駆り立てるんだ………?」
そう呟いた瞬間、何故か全員から呆れた顔で見られたのが納得いかなかった。
「来い、受け止めてぇやるぞ!」
「シャーーーッ!」
自分の身の丈程もある銛を軽々と振り回しながら、挑発するフェンド。それに対し、言葉は通じていないはずではあるが、雰囲気から自分が格下と認定されたと感じた大蛇は凄い勢いで向かっていく。大きく開いた口から覗く牙からは毒液が滴り落ち、通り過ぎた床を溶かしていく。あれに噛みつかれてしまっては並大抵の者では対処できず、そのまま全身に毒が回りきって、いずれは亡くなってしまうだろう。
「ふんっ!」
「シャ、シャ、シャッ………?」
しかし、それならば、直に触れなければいいだけの話である。俺がフェンドの為に製作した武器ならば、毒で溶かされるといった心配もないし、何より彼は自身の武器を使っている時が一番生き生きとしているのだ。これで彼も満足であろう……………まぁ、俺達には全員、状態異常が効かない為、直に触れても何の問題もないんだけどな。
「"串獲り"!」
「グワワァァワァァーー!!」
大蛇の大口を防いでいた銛を一旦手離したフェンドは直後、床と大蛇の隙間へと潜り込み、重力落下してきた銛を掴んで真下から上へと向かって、突き刺した。その大口を串刺しにする形で。すると、これには流石に堪らんと感じたのか、口が塞がってしまって、結果的にはくぐもった声となってしまったが、大きな奇声を発しながら、ダンジョンの壁へと一目散に頭から突っ込んでいった。
「これで終いだ………"高波"!」
だが、そこで終わらないのがフェンドという男。放っておけば、もうじき息絶える大蛇を逃してなるものかと今、ここで確実に仕留めにいく。生物の生存本能は時として、逆境を乗り越えて、予想もつかない行動を起こすことがある。その為、戦闘の最中での油断・過信など以ての外。相手が確実に息絶えるその時まで決して警戒を怠ってはならないのである。その点で言えば、フェンドのこの行動は合格といえるだろう。得意の水魔法もよく使いこなせていた。これも評価に値する。
「ご主人、終わりました!」
「良くやったな……………さて、探索はこれで全て終了だし、帰るか」
俺の合図で各々が帰り支度を始める。帰りはボス部屋にある帰還の魔法陣の上に乗って、ダンジョンの外へと出る仕組みなのだが、これを初級ダンジョンで初めて体験した際は驚いた。独特の感覚と好奇心がない混ぜになって、なんとも言えない気持ちになるのだ。まぁ、兎にも角にもギルドへと戻って報告と換金をしなければならない。明日はいよいよ、上級ダンジョン。今からワクワクが止まらないのだった。
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