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第4章 迷宮都市
第54話 上級ダンジョン
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冒険者の適正ランクで言えば、B~Aなのが上級ダンジョンである。ギルドの受付嬢曰く、ここを制覇できるかどうかで冒険者としての格が大きく変わってくるらしい。また、俺達が探索しようと思っている本来は最後に挑戦するのが王道だという上級ダンジョンは階層毎に気候が変わり、初級・中級のセオリーが全く通用しない場合もあるようだ。確かにこれだけ聞くと上級冒険者としての素質があるのかどうかを計られている気がしないでもない。だが、俺達はとても楽しみだった。見たことのない魔物や地形に風景、感じたことのない気候を体感できるのだ。特に俺達の仲間には好奇心が旺盛な者が多い。受付の列に並んでいる間、ウズウズして、今にも飛び出していきそうな感じのするのが何人もいる。
「よし、ようやく俺達の番だ。お前ら、心の準備はいいか?」
俺の呼び掛けに対して、全員元気のある返事をよこしてくれた。よっぽどテンションが上がっているみたいだ。
「さて、一体何が待ち受けているのやら………」
受付でギルドカードを提示した俺達は確認が済み次第、順次ダンジョンへと入っていく。総勢23名がゾロゾロと移動する様は非常に目立っていたが、誰も話しかけてこようとはしない。ギルド内での一件が広まっているからなのか、はたまた自分達のことで精一杯で他人のことを気にしている余裕などないのかは分からないが、俺達にとっては都合が良い。いい加減、絡まれるのは飽きたのだ。今後もこういう雰囲気が続いてくれると俺達としては助かるのだが……………
――――――――――――――――――――
「おい、何でお前らみたいな新人がここにいる!」
と思ったが、どうやらそうはいかなかったらしい。入って早々、変な奴に絡まれた。金ピカ装備に身を包んだいかにも生意気そうな少年と側に控える2人の男にである。少年の容姿だが、短い金髪に碧眼、背丈はあまり高くはなく、声の高さからも女と間違えそうなほど中性的だった。一方、残りの2人だが、1人は甲冑を着込んだ切長の目をした細身の男ともう1人は執事服のようなものを着た顔に皺が目立つ老人だ。ぱっと見の印象は社会科見学に来た貴族のボンボンとそれに付き合わされている2人の従者。あまりにもわがままな行動が過ぎる為、疲れ切ったところに俺達という新たな燃料が届いてしまい、再燃してしまったというところか?……………まぁ、ただの妄想なんだけどな
「概ね、合っておられます」
しかし、試しに俺の見解を話したところ、ほとんど当たっていることが判明した。まじかよ。ってことはとんでもねぇクソガキだな、こいつ…………
「クソガ…………なんだと、貴様!この高貴なる僕に向かって、なんたる口の利き方だ!
」
「口を慎め!このお方を誰と心得る!」
「あんれ?口に出てた?これは失敬…………ってか、誰って知るかよ。まだ、名乗られてすら、いねぇのに」
「ふんっ、そんなに僕の名前が知りたいか?ならば、特別に教えてやろう!僕は東にある、かの大国"フォレスト"の王………」
「ところで、クソガキは何でこんなところに?」
「話は最後まで聞け!全く…………ああ、何でこんなところにいるのか、だったな?それはだな…………って貴様!また言ったな!舌の根も乾かぬ内に!」
「そんな細かいこと、どうだっていいじゃねぇか。もっと気楽にいこうぜ」
「…………もう我慢ならん!貴様、先程から聞いていれば、失礼なことばかり抜かしおって!一体、この御方を何だと思っているのだ!…………リース様、このギブソン、いつでも武器を抜く準備はできております。何なりと」
「お、おい、ちょっと落ち着け。何も斬りかかることはないんじゃないか?僕の威厳を見せつければ、それで」
「なりません。自覚なさって下さい。あなたはいずれ、国の顔となる御方。この者達とは立場が違います。故にこのまま馬鹿にされたまま、おめおめと引き下がる訳には参りません!我々に歯向かうことの意味を身をもって分からせなければならないのです!」
「歯向かうって…………お前ら………じゃなくて、そこのガキが最初に俺達に絡んできたんじゃないか」
「貴様!忠告を無視して2度もそのような口の利き方を!もう限界だ!覚悟しろよ?」
「やるのか?言っておくが、命の保障はできないぞ?」
「ふんっ、新人冒険者が調子に乗りおって………」
「覚えておけよ?お前らから、こっちの都合を無視して、無理矢理絡んできて、それに対応しようとしたら、逆ギレした挙句、俺達を
殺そうとしているんだからな?」
「ふんっ、我々と貴様らの立場は違うのだ。我々が声を掛けたのなら、それに対して嬉しそうに反応するのが絶対なのだ。むしろ、有り難がらず、迷惑そうにするなど言語道断。そんな害虫は即刻、駆除だ」
「これが甲冑騎士、お前だけの考え方なのか?それともお前らの国全体の考え方なのか?………どうなんだ、そこの執事?さっきから、黙ったまま、何も言わないが」
「…………私から言えることは2つだけにございます。1つ目がこの度は皆様、大変申し訳ございませんでしたということ。2つ目は………害虫なのは一体、どちらの方でしょうか?」
「………お言葉ですが、セバス様。それは我々の方が害虫だと仰りたいのでしょうか?」
「いえ、滅相もない。ただ、もう少し他の考え方があるのではないかと………」
「…………これでは埒があきません。では、こうしましょう。今すぐ、あの者達の内、誰か1人を処刑致します。それで手を打つというのは?」
「何勝手に決めてんの?こっちは無抵抗で殺られる気なんてないからな?」
「うるさい!お前らはさっさと1人、差し出せ」
「はぁ…………こんなことに時間は使いたくないんだが…………ん?どうした、リーゼ?」
「ここはワタクシにお任せ頂いてもよろしいでしょうか?」
そう言って、甲冑騎士の前へと進み出たのはオークション1日目に出会った人族のリーゼだった。彼女には複雑な事情があり、あまり自ら進んで人前に出るタイプではないはずなのだが、一体どんな心境の変化があったのだろうか?
「ふんっ。なんだ、人間の小娘じゃないか。馬鹿なリーダーの為にその身を犠牲にするとはなんとも哀れな…………」
「今、シンヤ様のことを悪く言いましたね?残念です。これで貴方の運命は決しました。最後の言葉さえ、なければ四肢を失うだけで済んだところを………」
「なめるな、小娘!最後の会話ぐらいさせてやろうかと思ったが、気が変わった!今すぐ、あの世に送ってやる!くらえ、"死葬剣"!!」
「おい、ギブソン!早まるな!僕の命令が聞けないのか!?」
甲冑騎士は常人からすれば、とんでもないスピードで近付き、リーゼを亡き者にしようと剣を振るう。あの技量はおそらく、Bランク冒険者くらいはあるだろう。確かにそれだけの力があれば、本人に自信があるのも頷けるし、お坊ちゃんの護衛に配属されるのも分かる気がする。しかし……………
「もう何もかも遅いです…………"死の戯曲"」
「ぐ、ぐはあぁっ、な、何……………」
リーゼにはそんなこと関係ない。ただ、こちらの命を脅かそうとする敵をサーベルを使った華麗な剣技で一瞬の内に肉塊へと変えるだけである。
「………う、嘘だ………ギ、ギブソンがあんな一瞬で」
「リース様、私の後ろから離れないで下さい。あなただけは何があってもお護り致します」
「何もしてこなければ、こちらからも何もしないさ。だが、これで分かっただろ?俺達に余計なことをすれば、どうなるのか」
「……………」
「分かったなら、そこをどけ。俺達は早く上級ダンジョンを制覇したいんだ」
「わ、分かった…………邪魔をして、済まなかった」
「私からも謝罪させて頂きます。大変申し訳ございませんでした。それから、我々の命を見逃して頂き、誠にありがとうございます」
「分かればいい。いいか?今後は一切絡んでくるなよ?」
「肝に銘じよう…………だが、最後に1つだけいいだろうか?確認したいことがあるのだが………」
「何だ?」
「先程、リーゼと言ったそこの少女はまさか………」
「それを知ってどうする?」
「いや、どこかで見たことがあると思ってただけなんだ。でも、そう言うってことはやっぱり、そうなのか………」
「執事のじいさんはもういいか?」
「あ、私からも1つだけ…………もしや、あなた方は今、シリスティラビンで話題のクラン"黒天の星"ではございませんか?」
「話題なのか?」
「それはもう…………。なにせ、クランマスターがこの都市に来て早々、SSランクに昇格。その後のオークションでの豪快な落札や冒険者ギルド・貴族との一件、メンバー1人1人が強者であることなどから、今では向かう所敵なしのクランとまで噂されております」
「S、SSランクだって!?爺や、そんなこと一言も教えてくれなかったじゃないか!そんな相手を新人冒険者なんて言ったのか、僕は…………」
「申し訳ございません。私も今さっき、気が付いたところでございます。全員黒衣を身に纏って、多種族で構成されたクランなど考えてみれば、1つしか思い当たらなかったのですが、決め手はクランのマークにございます。これは他人と被ることがないですからな」
「なんか、色々と慌ててるみたいだが、坊ちゃんの言う通り、俺達は全員新人冒険者だぞ?」
「「………へ?」」
――――――――――――――――――――
上級ダンジョンは階層が多い為、道中の魔物はサクサクと倒していった。気候や魔物の特性などがコロコロと変わり、飽きることなく、進むことができ、皆満足そうだったが、全てを語るにはあまりにも時間がかかる為、ここからは10階層単位のボスだけ記していくことにする。
10階層目、砂漠エリア。ボスは砂に潜む芋虫型の魔物であるサンドワーム。
「"風魔剣"!」
リーゼが風属性を纏ったサーベルで一刀両断し、呆気なく決着。
20階層目、熱帯エリア。ボスは口から炎を吐き出す蜥蜴型の魔物であるファイヤーリザード。
「"昇天魅了よ~」
魔族の夢魔種サキュバスであるリームが固有スキルを発動しながら、愛用の武器、モーニングスターでなんなく撃破。
30階層目、氷雪エリア。ボスは氷属性の魔法を使ってくる鳥型の魔物であるアイスバード。
「"天下羅刹"!!」
竜人族でラミュラの妹でもあるモールが三節棍を用いた一方的な連撃により、オーバーキル。
40階層目、死霊エリア。アンデッド系の魔物が跋扈するこのエリア。ボスは不死王リッチ。
「"聖爪煮"」
獣人族、九尾種のクーフォが聖なる力を宿した鉤爪で八つ裂きに。
50階層目、草原エリア。ボスはゴブリンキング。奴の棍棒を用いた一撃は大地を大きく揺らす程だが…………
「"大獲り物"」
しかし、クラン"黒天の星"の幹部である小人族のニーベルにはそんなことは何の関係もない。彼は自身の武器の斧を1回振るう。ただ、それだけである。
――――――――――――――――――――
最後の階層である60階層目、天空エリア。この階層に入った瞬間、全員が地面から空へと魔法の力で飛ばされ、常に空中での戦いを強いられることとなった。とは言っても、雲に飛び乗ったり、自分で魔法を用いて足場を作ることができる為、それ程、苦ではなかったが…………。ここのボスは空の王者とも呼ばれるグリフォンである。鷲の翼と上半身、それからライオンの下半身を有している非常に強い魔物だ。空中からの重力加速が乗った鋭い爪の一撃はたとえ金属の鎧だろうと容易く、粉々にするぐらいの破壊力はあった。それに加えて、
「悪いことは言わん。今すぐ、引き下がりなさい。拙者には勝てんのだからな」
驚くべきことに喋ったのだ。この世界には知能の非常に高い魔物や動物が稀に話すことがあるというのは知っていたが、こうして目の前でそれを見るのは初めてだった。
「ワタシが殺るわ。馬鹿にされるのなら、まだしも憐れまれるなんて、納得がいかないもの」
進み出たのはこれまた幹部であるダークエルフのローズ。少し憮然とした態度をしている。
「仕方がなかろう………ここまで来れたことには称賛を送るが、今回は相手が悪い。なんせ、拙者はグリフォン。種族の差は力量の差、そのものでござる」
「…………種族の差ですって?」
まずい。よりによって、ローズの地雷を踏むとは…………。まぁ、それも仕方ないが。ローズが今まで種族で苦しんできたことなど、グリフォンは一切知らないのだから。
「………っ!いきなり、殺気が強くなったのぅ…………これは考えを改める必要があるか?」
「アンタ、覚悟しなさいよ?種族の差なんて関係ないってことを思い知らせてやるわ」
「ぐふっ………これ程とは」
「"呪術"、かなり効いたでしょ?」
「ああ………先程の言葉は撤回しよう。そして、謝罪もさせて頂きたい…………すまなかった」
「分かればいいのよ」
「横から失礼。俺はシンヤ。このローズやあそこにいる奴らと同じクランのリーダーだ」
「ほぅ、ダークエルフの………ローズ殿と言ったか、お嬢さんもとんでもない実力者だったが、そなたはおそらく、それ以上だろう………全く、底が見えん。あそこにいるそなたの同志達もとんでもないが、流石はそれを束ねるだけはあるか。世界はこんなにも広いのだな」
「だろう?ちなみにこの世界には俺達とまではいかないまでも強い奴はザラにいるぞ。それと同じだけ面白いことも沢山ある」
「なるほど。いかに拙者が井の中の蛙であったかが分かるな。お恥ずかしい限りでござる」
「そこで提案なんだが………お前さえ、良ければ俺達と共に来るか?」
「………それは誠か?」
「ああ。ダンジョンのボスであるお前がここを飛び出しても大丈夫と言うのであればの話だが」
「それならば問題はない。拙者が居なくなっても新たなボスが出現するようになっておる」
「そうか。じゃあ、俺達と一緒に来い。同行者の中で魔物はお前が最初だ」
「それは名誉なことだ。しかし、別のところに問題がある」
「何だ?」
「拙者には名がない。それだと色々と不便であろう?」
「なんだ、そんなことか。それなら、俺が付けてやる。そうだな…………よし、決めた。お前はたった今から"グリフ"だ。これから、そう名乗れ」
「かたじけない。このグリフ、全身全霊を持って、シンヤ殿とお仲間の為に力を尽くそう」
「そう堅くなるな。お前はお前のしたいことをすればいい。言っただろ?世界は面白いことで満ちてるって」
こうして、上級ダンジョンも制覇した俺達は魔法陣で外へと出て、ギルドへと向かう。制覇したというだけではなく、仲間が増えたという報告も兼ねて……………
「よし、ようやく俺達の番だ。お前ら、心の準備はいいか?」
俺の呼び掛けに対して、全員元気のある返事をよこしてくれた。よっぽどテンションが上がっているみたいだ。
「さて、一体何が待ち受けているのやら………」
受付でギルドカードを提示した俺達は確認が済み次第、順次ダンジョンへと入っていく。総勢23名がゾロゾロと移動する様は非常に目立っていたが、誰も話しかけてこようとはしない。ギルド内での一件が広まっているからなのか、はたまた自分達のことで精一杯で他人のことを気にしている余裕などないのかは分からないが、俺達にとっては都合が良い。いい加減、絡まれるのは飽きたのだ。今後もこういう雰囲気が続いてくれると俺達としては助かるのだが……………
――――――――――――――――――――
「おい、何でお前らみたいな新人がここにいる!」
と思ったが、どうやらそうはいかなかったらしい。入って早々、変な奴に絡まれた。金ピカ装備に身を包んだいかにも生意気そうな少年と側に控える2人の男にである。少年の容姿だが、短い金髪に碧眼、背丈はあまり高くはなく、声の高さからも女と間違えそうなほど中性的だった。一方、残りの2人だが、1人は甲冑を着込んだ切長の目をした細身の男ともう1人は執事服のようなものを着た顔に皺が目立つ老人だ。ぱっと見の印象は社会科見学に来た貴族のボンボンとそれに付き合わされている2人の従者。あまりにもわがままな行動が過ぎる為、疲れ切ったところに俺達という新たな燃料が届いてしまい、再燃してしまったというところか?……………まぁ、ただの妄想なんだけどな
「概ね、合っておられます」
しかし、試しに俺の見解を話したところ、ほとんど当たっていることが判明した。まじかよ。ってことはとんでもねぇクソガキだな、こいつ…………
「クソガ…………なんだと、貴様!この高貴なる僕に向かって、なんたる口の利き方だ!
」
「口を慎め!このお方を誰と心得る!」
「あんれ?口に出てた?これは失敬…………ってか、誰って知るかよ。まだ、名乗られてすら、いねぇのに」
「ふんっ、そんなに僕の名前が知りたいか?ならば、特別に教えてやろう!僕は東にある、かの大国"フォレスト"の王………」
「ところで、クソガキは何でこんなところに?」
「話は最後まで聞け!全く…………ああ、何でこんなところにいるのか、だったな?それはだな…………って貴様!また言ったな!舌の根も乾かぬ内に!」
「そんな細かいこと、どうだっていいじゃねぇか。もっと気楽にいこうぜ」
「…………もう我慢ならん!貴様、先程から聞いていれば、失礼なことばかり抜かしおって!一体、この御方を何だと思っているのだ!…………リース様、このギブソン、いつでも武器を抜く準備はできております。何なりと」
「お、おい、ちょっと落ち着け。何も斬りかかることはないんじゃないか?僕の威厳を見せつければ、それで」
「なりません。自覚なさって下さい。あなたはいずれ、国の顔となる御方。この者達とは立場が違います。故にこのまま馬鹿にされたまま、おめおめと引き下がる訳には参りません!我々に歯向かうことの意味を身をもって分からせなければならないのです!」
「歯向かうって…………お前ら………じゃなくて、そこのガキが最初に俺達に絡んできたんじゃないか」
「貴様!忠告を無視して2度もそのような口の利き方を!もう限界だ!覚悟しろよ?」
「やるのか?言っておくが、命の保障はできないぞ?」
「ふんっ、新人冒険者が調子に乗りおって………」
「覚えておけよ?お前らから、こっちの都合を無視して、無理矢理絡んできて、それに対応しようとしたら、逆ギレした挙句、俺達を
殺そうとしているんだからな?」
「ふんっ、我々と貴様らの立場は違うのだ。我々が声を掛けたのなら、それに対して嬉しそうに反応するのが絶対なのだ。むしろ、有り難がらず、迷惑そうにするなど言語道断。そんな害虫は即刻、駆除だ」
「これが甲冑騎士、お前だけの考え方なのか?それともお前らの国全体の考え方なのか?………どうなんだ、そこの執事?さっきから、黙ったまま、何も言わないが」
「…………私から言えることは2つだけにございます。1つ目がこの度は皆様、大変申し訳ございませんでしたということ。2つ目は………害虫なのは一体、どちらの方でしょうか?」
「………お言葉ですが、セバス様。それは我々の方が害虫だと仰りたいのでしょうか?」
「いえ、滅相もない。ただ、もう少し他の考え方があるのではないかと………」
「…………これでは埒があきません。では、こうしましょう。今すぐ、あの者達の内、誰か1人を処刑致します。それで手を打つというのは?」
「何勝手に決めてんの?こっちは無抵抗で殺られる気なんてないからな?」
「うるさい!お前らはさっさと1人、差し出せ」
「はぁ…………こんなことに時間は使いたくないんだが…………ん?どうした、リーゼ?」
「ここはワタクシにお任せ頂いてもよろしいでしょうか?」
そう言って、甲冑騎士の前へと進み出たのはオークション1日目に出会った人族のリーゼだった。彼女には複雑な事情があり、あまり自ら進んで人前に出るタイプではないはずなのだが、一体どんな心境の変化があったのだろうか?
「ふんっ。なんだ、人間の小娘じゃないか。馬鹿なリーダーの為にその身を犠牲にするとはなんとも哀れな…………」
「今、シンヤ様のことを悪く言いましたね?残念です。これで貴方の運命は決しました。最後の言葉さえ、なければ四肢を失うだけで済んだところを………」
「なめるな、小娘!最後の会話ぐらいさせてやろうかと思ったが、気が変わった!今すぐ、あの世に送ってやる!くらえ、"死葬剣"!!」
「おい、ギブソン!早まるな!僕の命令が聞けないのか!?」
甲冑騎士は常人からすれば、とんでもないスピードで近付き、リーゼを亡き者にしようと剣を振るう。あの技量はおそらく、Bランク冒険者くらいはあるだろう。確かにそれだけの力があれば、本人に自信があるのも頷けるし、お坊ちゃんの護衛に配属されるのも分かる気がする。しかし……………
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「………う、嘘だ………ギ、ギブソンがあんな一瞬で」
「リース様、私の後ろから離れないで下さい。あなただけは何があってもお護り致します」
「何もしてこなければ、こちらからも何もしないさ。だが、これで分かっただろ?俺達に余計なことをすれば、どうなるのか」
「……………」
「分かったなら、そこをどけ。俺達は早く上級ダンジョンを制覇したいんだ」
「わ、分かった…………邪魔をして、済まなかった」
「私からも謝罪させて頂きます。大変申し訳ございませんでした。それから、我々の命を見逃して頂き、誠にありがとうございます」
「分かればいい。いいか?今後は一切絡んでくるなよ?」
「肝に銘じよう…………だが、最後に1つだけいいだろうか?確認したいことがあるのだが………」
「何だ?」
「先程、リーゼと言ったそこの少女はまさか………」
「それを知ってどうする?」
「いや、どこかで見たことがあると思ってただけなんだ。でも、そう言うってことはやっぱり、そうなのか………」
「執事のじいさんはもういいか?」
「あ、私からも1つだけ…………もしや、あなた方は今、シリスティラビンで話題のクラン"黒天の星"ではございませんか?」
「話題なのか?」
「それはもう…………。なにせ、クランマスターがこの都市に来て早々、SSランクに昇格。その後のオークションでの豪快な落札や冒険者ギルド・貴族との一件、メンバー1人1人が強者であることなどから、今では向かう所敵なしのクランとまで噂されております」
「S、SSランクだって!?爺や、そんなこと一言も教えてくれなかったじゃないか!そんな相手を新人冒険者なんて言ったのか、僕は…………」
「申し訳ございません。私も今さっき、気が付いたところでございます。全員黒衣を身に纏って、多種族で構成されたクランなど考えてみれば、1つしか思い当たらなかったのですが、決め手はクランのマークにございます。これは他人と被ることがないですからな」
「なんか、色々と慌ててるみたいだが、坊ちゃんの言う通り、俺達は全員新人冒険者だぞ?」
「「………へ?」」
――――――――――――――――――――
上級ダンジョンは階層が多い為、道中の魔物はサクサクと倒していった。気候や魔物の特性などがコロコロと変わり、飽きることなく、進むことができ、皆満足そうだったが、全てを語るにはあまりにも時間がかかる為、ここからは10階層単位のボスだけ記していくことにする。
10階層目、砂漠エリア。ボスは砂に潜む芋虫型の魔物であるサンドワーム。
「"風魔剣"!」
リーゼが風属性を纏ったサーベルで一刀両断し、呆気なく決着。
20階層目、熱帯エリア。ボスは口から炎を吐き出す蜥蜴型の魔物であるファイヤーリザード。
「"昇天魅了よ~」
魔族の夢魔種サキュバスであるリームが固有スキルを発動しながら、愛用の武器、モーニングスターでなんなく撃破。
30階層目、氷雪エリア。ボスは氷属性の魔法を使ってくる鳥型の魔物であるアイスバード。
「"天下羅刹"!!」
竜人族でラミュラの妹でもあるモールが三節棍を用いた一方的な連撃により、オーバーキル。
40階層目、死霊エリア。アンデッド系の魔物が跋扈するこのエリア。ボスは不死王リッチ。
「"聖爪煮"」
獣人族、九尾種のクーフォが聖なる力を宿した鉤爪で八つ裂きに。
50階層目、草原エリア。ボスはゴブリンキング。奴の棍棒を用いた一撃は大地を大きく揺らす程だが…………
「"大獲り物"」
しかし、クラン"黒天の星"の幹部である小人族のニーベルにはそんなことは何の関係もない。彼は自身の武器の斧を1回振るう。ただ、それだけである。
――――――――――――――――――――
最後の階層である60階層目、天空エリア。この階層に入った瞬間、全員が地面から空へと魔法の力で飛ばされ、常に空中での戦いを強いられることとなった。とは言っても、雲に飛び乗ったり、自分で魔法を用いて足場を作ることができる為、それ程、苦ではなかったが…………。ここのボスは空の王者とも呼ばれるグリフォンである。鷲の翼と上半身、それからライオンの下半身を有している非常に強い魔物だ。空中からの重力加速が乗った鋭い爪の一撃はたとえ金属の鎧だろうと容易く、粉々にするぐらいの破壊力はあった。それに加えて、
「悪いことは言わん。今すぐ、引き下がりなさい。拙者には勝てんのだからな」
驚くべきことに喋ったのだ。この世界には知能の非常に高い魔物や動物が稀に話すことがあるというのは知っていたが、こうして目の前でそれを見るのは初めてだった。
「ワタシが殺るわ。馬鹿にされるのなら、まだしも憐れまれるなんて、納得がいかないもの」
進み出たのはこれまた幹部であるダークエルフのローズ。少し憮然とした態度をしている。
「仕方がなかろう………ここまで来れたことには称賛を送るが、今回は相手が悪い。なんせ、拙者はグリフォン。種族の差は力量の差、そのものでござる」
「…………種族の差ですって?」
まずい。よりによって、ローズの地雷を踏むとは…………。まぁ、それも仕方ないが。ローズが今まで種族で苦しんできたことなど、グリフォンは一切知らないのだから。
「………っ!いきなり、殺気が強くなったのぅ…………これは考えを改める必要があるか?」
「アンタ、覚悟しなさいよ?種族の差なんて関係ないってことを思い知らせてやるわ」
「ぐふっ………これ程とは」
「"呪術"、かなり効いたでしょ?」
「ああ………先程の言葉は撤回しよう。そして、謝罪もさせて頂きたい…………すまなかった」
「分かればいいのよ」
「横から失礼。俺はシンヤ。このローズやあそこにいる奴らと同じクランのリーダーだ」
「ほぅ、ダークエルフの………ローズ殿と言ったか、お嬢さんもとんでもない実力者だったが、そなたはおそらく、それ以上だろう………全く、底が見えん。あそこにいるそなたの同志達もとんでもないが、流石はそれを束ねるだけはあるか。世界はこんなにも広いのだな」
「だろう?ちなみにこの世界には俺達とまではいかないまでも強い奴はザラにいるぞ。それと同じだけ面白いことも沢山ある」
「なるほど。いかに拙者が井の中の蛙であったかが分かるな。お恥ずかしい限りでござる」
「そこで提案なんだが………お前さえ、良ければ俺達と共に来るか?」
「………それは誠か?」
「ああ。ダンジョンのボスであるお前がここを飛び出しても大丈夫と言うのであればの話だが」
「それならば問題はない。拙者が居なくなっても新たなボスが出現するようになっておる」
「そうか。じゃあ、俺達と一緒に来い。同行者の中で魔物はお前が最初だ」
「それは名誉なことだ。しかし、別のところに問題がある」
「何だ?」
「拙者には名がない。それだと色々と不便であろう?」
「なんだ、そんなことか。それなら、俺が付けてやる。そうだな…………よし、決めた。お前はたった今から"グリフ"だ。これから、そう名乗れ」
「かたじけない。このグリフ、全身全霊を持って、シンヤ殿とお仲間の為に力を尽くそう」
「そう堅くなるな。お前はお前のしたいことをすればいい。言っただろ?世界は面白いことで満ちてるって」
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レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
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異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
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覚悟を決めてボスに挑む無二。
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クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
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ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
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※本作品は他サイト様でも掲載中です。
イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜
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遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。
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ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。
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