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第13章 魔族領
第278話 郷に入っては郷に
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「す、すみません!」
「ん?」
一通り、土産物を買い店を後にしようと
したシンヤ達は突然横から声を掛けられ
た。見るとそこには10歳程の魔族の少
年がおり、シンヤに視線を向けられると
緊張からか、顔を赤くしながら勢いよく
頭を下げ始めた。
「さ、先程は助けて頂き本当にありがと
うございました!!」
「……………は?助ける?一体何のこと
だ?」
「えっ……………」
「まず、その前にお前は誰だ?」
「そ、そんなぁ…………」
全くピンときていないどころか覚えられ
てすらいないことにショックを受けた少
年。しかし、数秒経って深呼吸をしてか
ら一旦気持ちを入れ替えると再び勢いよ
く頭を下げた。
「僕の名前はシャウロフスキー。ここラ
クゾで宿屋を営んでいる者です」
それは片手を胸に当てた綺麗な角度での
会釈だった。若干落ち着きには欠けるも
のの、その歳で咄嗟に取った所作として
は十分なもので普段の行いの賜物なので
あろうか、とても洗練されていた。そし
て、シンヤもまた感じるところがあった
のか少年を軽く見つめた後、自身も名乗
り始めた。
「シンヤ・モリタニ。冒険者をしている
者だ」
「なるほど!冒険者の方でしたか!だか
ら、あれほどお強かったんですね!」
「世辞はいい。それよりもお前を助けた
とかいう話は何なんだ?」
「先程、貴方様が倒された魔族がいたじ
ゃないですか」
「仰々しいのはやめろ。名前で呼んでく
れて構わない」
「あっ!ありがとうございます!シンヤ
様!」
「おい!私の時とえらく態度が違うじゃ
ないか!」
少年がシンヤを名前で呼んだ直後、何や
ら外から文句を言ってくる者がいたがそ
れをサラッと無視したシンヤは目で話の
続きを促した。
「え、えっと……………先程、シンヤ様に
倒して頂いた魔族の男達は"魔牛の蹄"というクランに
所属している冒険者達だったのですが僕
はそいつらに絡まれ、最悪の場合どうな
っていてもおかしくはなかったんです。
ところが、そこにたまたま通りがかった
シンヤ様が奴らを一瞬で片付けてくれた
おかげで僕は救われたんです!だから、
シンヤ様は命の恩人なんです!本当にあ
りがとうございました!!」
今度は深々と頭を下げ、感謝の意を表す
少年。それに対してシンヤは合点がいっ
たという顔をしてから、少年へとこう言
った。
「顔を上げろ。一応、感謝は受け取って
おく。だが、勘違いはするな。俺達が土
産屋に行こうとして、あいつらが邪魔だ
ったから、ああなっただけだ。決してお
前を助けたかった訳じゃない」
「いいんです、それで。結果的に僕が救
われたのは事実なので」
「まぁ、お前がそれでいいのなら構わな
いが………………よし。これで話は終わり
だな?じゃあな。次は変なのに絡まれる
なよ」
そう言って少年へと背を向けるシンヤ
達。するとそれにあたふたし出した少年
は大きな声でシンヤ達を呼び止めた。
「ま、待って下さい!!」
「あん?」
流石にそろそろしつこいと感じ始めたシ
ンヤが険のある目を少年へと向ける。そ
れに対して少年はビクッとなり身体を震
わせつつも意志の篭った強い瞳をシンヤ
に向けて、はっきりとこう言った。
「ぼ、僕を………………シンヤ様の弟子と
して近くに置いて下さい!!お願い致し
ます!!」
――――――――――――――――――
「てめぇ………………今、何て言った?」
「い、いえっ!だ、だから、あ
の……………」
「言い訳はいいから、さっさと言えよ」
「……………ジェスト・ウダイ・ローヴ・
ロンゴ、この4名が何者かによってやら
れました」
「犯人の正体は分かってねぇんだな?」
「は、はい。俺も遠くからしか見れなか
ったんで………………とりあえず分かって
いることとしまして、やったのは黒髪の
人族の男、それからその男の周りには
様々な種族の者達が沢山いました」
「なるほど……………で、お前は呑気に仲
間がやられるところを遠くから見ていた
って訳か」
「っ!?そ、それは違います!俺も何か
があったら、すぐに助けに向かおうとし
ました!しかし、あの男の放った斬撃が
あまりに速く……………気が付いた時には
既に何もかもが終わっていたんです」
「じゃあ、何故敵討ちに向かわない?俺
んとこに報告に来る前にそれが先決だ
ろ」
「……………はっきり申し上げますとそれ
はあまりに無謀過ぎます。俺なんかが向
かったところで無意味です。あれはどこ
か別次元の強さをしていました。それに
もしあの男がいなかったとしても周りに
いた多種族の者達からもあの男程ではな
いにしろ化け物じみた強さを感じたので
どうあっても結果は変わらないかと」
「つっても所詮は人族の域を出ない強さ
だろ?ということは仲間達の実力もお察
しの通りってことだ。変な先入観は価値
観を歪め、思考を狂わせる。買い被りす
ぎなんだよ、お前は」
「ち、違います!あれはそんなレベルの
話ではありませんでした!間違っても余
計なことはしないで下さい!」
「ん~?余計なことってのは俺が今から
やろうとしていることか?」
「ま、まさか…………」
「おし、行くぞお前ら!クラン"魔牛の蹄"に喧嘩を売
ったことを後悔させてやる」
「お、お待ち下さい!考え直して下さ
い!きっと後で後悔するのは我々の方で
す!」
「うるせぇ!俺がいるこの街で好き勝手
やりやがった奴らを許す筈ねぇだろう
が!この街で楽しくやりたきゃ絶対に逆
らっちゃいけねぇ存在ってのがあんだ
よ。この街では俺達がルールだ」
「ん?」
一通り、土産物を買い店を後にしようと
したシンヤ達は突然横から声を掛けられ
た。見るとそこには10歳程の魔族の少
年がおり、シンヤに視線を向けられると
緊張からか、顔を赤くしながら勢いよく
頭を下げ始めた。
「さ、先程は助けて頂き本当にありがと
うございました!!」
「……………は?助ける?一体何のこと
だ?」
「えっ……………」
「まず、その前にお前は誰だ?」
「そ、そんなぁ…………」
全くピンときていないどころか覚えられ
てすらいないことにショックを受けた少
年。しかし、数秒経って深呼吸をしてか
ら一旦気持ちを入れ替えると再び勢いよ
く頭を下げた。
「僕の名前はシャウロフスキー。ここラ
クゾで宿屋を営んでいる者です」
それは片手を胸に当てた綺麗な角度での
会釈だった。若干落ち着きには欠けるも
のの、その歳で咄嗟に取った所作として
は十分なもので普段の行いの賜物なので
あろうか、とても洗練されていた。そし
て、シンヤもまた感じるところがあった
のか少年を軽く見つめた後、自身も名乗
り始めた。
「シンヤ・モリタニ。冒険者をしている
者だ」
「なるほど!冒険者の方でしたか!だか
ら、あれほどお強かったんですね!」
「世辞はいい。それよりもお前を助けた
とかいう話は何なんだ?」
「先程、貴方様が倒された魔族がいたじ
ゃないですか」
「仰々しいのはやめろ。名前で呼んでく
れて構わない」
「あっ!ありがとうございます!シンヤ
様!」
「おい!私の時とえらく態度が違うじゃ
ないか!」
少年がシンヤを名前で呼んだ直後、何や
ら外から文句を言ってくる者がいたがそ
れをサラッと無視したシンヤは目で話の
続きを促した。
「え、えっと……………先程、シンヤ様に
倒して頂いた魔族の男達は"魔牛の蹄"というクランに
所属している冒険者達だったのですが僕
はそいつらに絡まれ、最悪の場合どうな
っていてもおかしくはなかったんです。
ところが、そこにたまたま通りがかった
シンヤ様が奴らを一瞬で片付けてくれた
おかげで僕は救われたんです!だから、
シンヤ様は命の恩人なんです!本当にあ
りがとうございました!!」
今度は深々と頭を下げ、感謝の意を表す
少年。それに対してシンヤは合点がいっ
たという顔をしてから、少年へとこう言
った。
「顔を上げろ。一応、感謝は受け取って
おく。だが、勘違いはするな。俺達が土
産屋に行こうとして、あいつらが邪魔だ
ったから、ああなっただけだ。決してお
前を助けたかった訳じゃない」
「いいんです、それで。結果的に僕が救
われたのは事実なので」
「まぁ、お前がそれでいいのなら構わな
いが………………よし。これで話は終わり
だな?じゃあな。次は変なのに絡まれる
なよ」
そう言って少年へと背を向けるシンヤ
達。するとそれにあたふたし出した少年
は大きな声でシンヤ達を呼び止めた。
「ま、待って下さい!!」
「あん?」
流石にそろそろしつこいと感じ始めたシ
ンヤが険のある目を少年へと向ける。そ
れに対して少年はビクッとなり身体を震
わせつつも意志の篭った強い瞳をシンヤ
に向けて、はっきりとこう言った。
「ぼ、僕を………………シンヤ様の弟子と
して近くに置いて下さい!!お願い致し
ます!!」
――――――――――――――――――
「てめぇ………………今、何て言った?」
「い、いえっ!だ、だから、あ
の……………」
「言い訳はいいから、さっさと言えよ」
「……………ジェスト・ウダイ・ローヴ・
ロンゴ、この4名が何者かによってやら
れました」
「犯人の正体は分かってねぇんだな?」
「は、はい。俺も遠くからしか見れなか
ったんで………………とりあえず分かって
いることとしまして、やったのは黒髪の
人族の男、それからその男の周りには
様々な種族の者達が沢山いました」
「なるほど……………で、お前は呑気に仲
間がやられるところを遠くから見ていた
って訳か」
「っ!?そ、それは違います!俺も何か
があったら、すぐに助けに向かおうとし
ました!しかし、あの男の放った斬撃が
あまりに速く……………気が付いた時には
既に何もかもが終わっていたんです」
「じゃあ、何故敵討ちに向かわない?俺
んとこに報告に来る前にそれが先決だ
ろ」
「……………はっきり申し上げますとそれ
はあまりに無謀過ぎます。俺なんかが向
かったところで無意味です。あれはどこ
か別次元の強さをしていました。それに
もしあの男がいなかったとしても周りに
いた多種族の者達からもあの男程ではな
いにしろ化け物じみた強さを感じたので
どうあっても結果は変わらないかと」
「つっても所詮は人族の域を出ない強さ
だろ?ということは仲間達の実力もお察
しの通りってことだ。変な先入観は価値
観を歪め、思考を狂わせる。買い被りす
ぎなんだよ、お前は」
「ち、違います!あれはそんなレベルの
話ではありませんでした!間違っても余
計なことはしないで下さい!」
「ん~?余計なことってのは俺が今から
やろうとしていることか?」
「ま、まさか…………」
「おし、行くぞお前ら!クラン"魔牛の蹄"に喧嘩を売
ったことを後悔させてやる」
「お、お待ち下さい!考え直して下さ
い!きっと後で後悔するのは我々の方で
す!」
「うるせぇ!俺がいるこの街で好き勝手
やりやがった奴らを許す筈ねぇだろう
が!この街で楽しくやりたきゃ絶対に逆
らっちゃいけねぇ存在ってのがあんだ
よ。この街では俺達がルールだ」
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