俺は善人にはなれない

気衒い

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第13章 魔族領

第279話 従う必要なし

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「おい、しつこいぞ。そろそろ離れろ」

「いえっ!僕を弟子にすると仰って頂け

ない限りはここを離れません!」

現在、シンヤ達はラクゾの街を観光目的

で歩いていた……………のだが、街に着い

た当初と違い同行者が1人増えていた。

というのもシンヤがたまたま助けた少

年、シャウロフスキーがどうやらシンヤ

の強さに惹かれ弟子として旅に同行した

いと言ってきたのだ。しかし当然、そん

な申し出をシンヤが受けるはずもなく、

きっぱりと断ったのだが諦めきれないの

か、こうして何度も頼み込んできてはシ  

ンヤ達を困らせていたのだった。

「何度も言っているだろ。俺達は魔族領

に遊びに来た訳じゃない。もちろん、観

光もするが目的は他にあるんだ。そんな

中、お前みたいな奴に着いてこられるの

は迷惑だ」

「では迷惑にならないように大人しくし

ておきます」

「戦闘が起こった時はどうするつもり

だ?足手纏いにしかならないだろ」

「すぐに身を隠し、邪魔は一切致しませ

ん」

「だいたい宿屋はどうするつもりだ?ま

さか、この為に畳む気じゃないだろう

な?」

「そのつもりです。今は全てを投げ打っ

てでもシンヤ様に着いて行った方がいい

と強く思っていますから。はっきり言っ

て僕の中の世界は大きく変わりました」

「本当にそれでいいのか?宿屋はお前の  

やりたいことじゃないのか?」

「………………実は僕が今営んでいる宿屋

は元々、両親のものでした。とはいって

も宿屋の仕事は無理矢理している訳では

ありませんし、嫌いでもないです。むし

ろ自分に合っている仕事だとは思いま

す。しかし、それをこのまま続けていて  
もいいのかと先程強く感じまし

た……………それは全てあなたに出会った

からです」

「………………ちなみに両親は今、どこに

いる?」

「それがつい1ヶ月くらい前、宿屋にい

きなり押し掛けてきた他国の使者によっ

て、連れ去られてしまったんです。あま

りに突然のことで僕は驚いてしまい、何

の抵抗もできませんでした。だから、せ

めて両親が帰ってくるその日まで宿屋を

存続させようと今日まで頑張ってきまし

た」

「他国?それは一体なんていう国なん

だ?」

「確か、"ギムラ"からやってきたと言

っていました。なんでも国を発展させて

いく上で必要な人材を様々な場所で確保

しているとか」

「っ!?なんじゃと!?」

「……………おい、ネーム。お前がくれた

情報の中にそんなのはなかったぞ」

「……………すまん。全く知らなかった。

まさか、そんなことまでしているとは」

シャウロフスキーの発言に驚く面々。特

にイヴとネームは内情を多少は知ってい

る分、驚きが大きかった。

「あの…………どうされました?」

「シャウロフスキーとかいったかの?」

「は、はい」

「妾の名はイヴ……………"ギムラ"の元  

王女じゃ」

「えっ…………」

「この度は馬鹿共がすまんかった!決し

て許してくれとは言わん。むしろ、これ

で妾達の考えも固まったというものじ 

ゃ」

「だな。であれば、予定変更だ。今すぐ

にでも出発した方がいい………………お 

い、シャウロフスキー」

「っ!?は、はい!」

いきなり雰囲気の変わったシンヤ達に着

いていけてないシャウロフスキーはシン

ヤの呼び掛けに驚きつつも答えた。する

とシャウロフスキーを真っ直ぐ見つめた

シンヤは少し間を空けてから、こう言っ

た。

「弟子の件はとりあえず保留にしてお

く…………が俺達の旅には同行してもら

うぞ」

「えっ!?な、何故ですか!?」

「お前の両親を助けに行くからだ」










「あれがお前の言っていた人族の男か?

なんだ、まだガキじゃねぇか」

「見かけや種族だけで判断しては駄目で

す!あの男はとんでもない奴なんですか

ら!」

「はっ!お前はいちいち大袈裟過ぎるん

だよ!おい、お前ら!いいから、やっち

まえ!」

「「「へい!!!」」」

「あっ!?ち、ちょっと!」

「いいから、お前は黙って見ていろ。今

すぐ奴の屍を目の前に晒してやるよ」










「ん?何だ、お前ら?」

「へっ!さっきお前にやられた奴らの仲  

間だ!」

「敵討ちにきたぜ!」

「行くぞ!」

予定を変更し、今まさに街を出ようとし

たシンヤ達は突如周りを魔族の冒険者達

に囲まれ、計10人による襲撃を受けて

いた。襲撃者達は決して弱い訳ではな

く、並大抵の者では急襲へ対応すること   

が困難であることは襲撃者達自身がよく

分かっていた。だからこそ襲撃者達は勝   

利を確信し、皆醜悪な笑みを浮かべて武

器を振るっていたのだった……………しか

し、

「"破拳"」

「"死の戯曲ワルツ"」

先程、シンヤに止められ不完全燃焼気味

だったヒュージとリーゼが前へ飛び出し

て、それぞれ5人ずつ葬った結果、襲撃

者達は全滅してしまった。するとそれに 

焦ったのか、離れたところの物陰から、

警戒心を顕にした仲間達がゾロゾロと現

れだした。

「おいおい、マジかよ」

「聞いていた話と違いますぜ、リーダ  

ー!」

「こ、これからどうするんで?」

「だから、俺は言ったんだ。余計なこと

はするなと」

口々にぼやく襲撃者の仲間達。そして、

その中でもリーダーと呼ばれた男は険し  

い表情をしながらシンヤを見据え、こう  

言った。

「どうやら過小評価をしすぎていたよう    

だ。こうして対峙しているとよく分か

る。こいつら、只者じゃねぇ」

「だから、言ったでしょう!やめておけ

と」

「ああ、俺が悪かった。だが、もう引き

返せねぇ。こいつらも俺達を逃がす気は

ないようだしな。ってか、逃げられる訳  

がねぇ。遠くからじゃ分からなかった

が、黒衣に様々な武器を携帯している多  

種族………………こいつら、"黒天の星"

の奴らだ。それもクラマスに幹部も大勢

いやがる」

「っ!?こ、"黒天の星"!?世界を救

ったと言われる英雄達が何故こんなとこ

ろに!?」

「嘘だろ……………メンバーが全員Sラン

ク以上の化け物集団じゃないか」

「俺達はなんてものに手を出しちまった

んだ」

皆、この世の終わりのような顔をし嘆き

始める襲撃者達。ところが、そんなもの

に同情するはずがないシンヤは淡々とこ   

う言った。

「ゴチャゴチャうるさい。かかってくる

なら、さっさとかかってこい」

「くっ……………おい、お前ら!最初から 

全力でやれ!運良く仕留められたら、俺

達の名も上がるぞ!」

「「「へいっ!!!」」」

「おい、シャウロフスキー」

「っ!?は、はい!」

シンヤ達のやり取りに終始ビクビクして   

いたシャウロフスキーはシンヤに名前を

呼ばれると慌てて返事をした。

「弟子にとるかは分からんが最低限の稽

古はつけてやる。こんなことで一々怖が

ってたら、キリがないからな。それ

と……………」

シンヤは向かってくる襲撃者達を見なが

ら、ニヤリと笑みを浮かべて刀を構え、

軽く素振りをした。

「これから起こることは見ておけ。きっ

と為になるはずだ」

その後、襲撃者達の悲鳴が辺りに響き渡

ったのだが、幸いにも人気のない場所だ

った為か、街の者達に気が付かれること 

はなかったのだった。
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