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第13章 魔族領
第280話 捕われた者
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「おい、ネームがいないぞ!これは一体
どういうことだ!」
魔族領にある国の1つ、"ギムラ"。現
在、そこを治めているアドム・クリプト
王は兵士に向かって怒声を飛ばしてい
た。
「す、すみません!我々が気が付いた時
には既におらず………………最近バタバタ
しているのもあって、そこまで気が回り
ませんでした!」
「言い訳はよい!であれば、すぐに探し
出して連れてこい!早急にだぞ!」
「はぁ……………無茶を言うな。俺達に八
つ当たりされても困る。だいたい目を離
したお前の責任だろうがよ(ボソッ)」
「ん?何か言ったか?」
「い、いえっ!ただちに探して参りま
す!」
「アドム様、少し落ち着かれてはいかが
ですかな?」
「だがっ……………」
「最近の貴方はどこか焦っておられる。
何をそんなに慌てていらっしゃるので
す?」
「嫌な胸騒ぎがするんだ。どこからか、
狙われているような……………最近、魔王
も復活したらしいと専らの噂だしな」
「まだそのようなことを………………私共
が何度も言ったじゃありませんか。そん
な世迷言を信じてはなりませぬと」
「だ、だが、あらゆるところで噂が立っ
ているんだぞ!それに目撃例もちらほら
と出てきて……………」
「大丈夫です。私共がついております。
ですので、アドム様は何の憂いもなく、
ご自身の為すべきことを優先して下さ
れ」
「ほ、本当に任せても大丈夫なんだ
な?」
「ええ……………万事、私共にお任せ頂け
れば問題ありません。私共は常に貴方の
味方ですぞ」
「おっ、今日はやけに大人しいな。とう
とう観念したか」
城の地下にある牢屋の中を覗き込んだ男
がそう言った。この場所には罪を犯した
者や王の命令に背いた者、また王の個人
的な感情によって連れて来られた者など
が収監されている。24時間、常に交代
制の見張りがおり、数時間おきに与えら
れる食事以外はただただ現実から目を背
け、寝て過ごす者がほとんどだった。あ
わよくばと逃走を図ろうものなら、すぐ
さま捕えられ、世にも恐ろしい罰が下さ
れることは必至。仮に牢屋を抜け出し
て、見張りや看守を撒くことができたと
しても城に常駐する騎士団……………特に
団長や副団長に見つかってしまえば命は
ないだろう。だからだろう。囚人には逆
らう気力がなく、基本的に言いつけ通り
大人しくしているのは……………ところ
が、中には例外もいた。つい1ヶ月程前に収監されたとある夫
婦は今までの者達とは少々勝手が違って
いたのだった。
「……………してくれ」
「ん?何か言ったか?」
「……………俺達をあの子の元に返してく
れ!!」
「ちいっ!まだ、そのようなことをほざ
く気力があったか!」
「お願いよ!ここから出して!それがで
きないのなら、せめてあの子に会わせ
て!!」
「ええいっ!夫婦揃って、うるさいわ!
お前らをここから出すつもりなんてない
し、あの小僧には二度と会えん!分かっ
たのなら、大人しく我々の言うことに従
え!!」
「自分達のしていることが分かっている
のか!各地から罪もない者達を集めて奴
隷のようにこき使うなど!俺達は絶対に
認めないぞ!」
「はっきり言って滅茶苦茶よ!こんなこ
とが罷り通っていいはずがないわ!あなた達は一体何を考えている
の!?」
「不敬なるぞ!発言には気を付けろ!そ
れとお前らはまだ使われてすらいないじ
ゃないか。我々に逆らって、こうして投
獄されてしまったんだからな」
「だから、俺達はこうして毎日お前にぶ
つかることで上で苦しい思いをしている
同志達を解放できないかと足掻いている
んだ!」
「彼らの方が私達なんかよりもよっぽど
可哀想だわ……………お願い。もうこんな
ことはやめて。全員を解放して」
「ふんっ。牢屋の中でいくら叫んだとこ
ろで状況は一向に変わらん。お前達の声
が届く訳でもあるまいし。むしろ、あい
つらの環境は悪くなるかもな……………そ
うだ。いいことを考えたぞ」
「お、おい!一体何をする気だ!」
「や、やめて!」
「ふんっ。恨むんなら、自分達の無能さ
を恨め。なんせ、お前達がこちらに楯突
いたおかげであいつらが余計苦しい思い
をするんだからな………………くくっ。さ
ぞかし、お前達は恨まれることだろう。
もどかしいよな?お前達はあいつらを想
って行動したが結果、恨まれる形となっ
てしまうんだからな」
「くっ……………俺達のせいで同志達が」
「ううっ、どうしてこんなことに」
夫婦が泣き崩れた様子を見た男はニヤリ
とした笑みを浮かべながら、牢屋の前を
離れ、地下を後にした。去り際、夫婦達
の耳には男のある言葉が纏わりついて離
れなかった。
「魔族の面汚しめ。他人のことを気にか
けるから、こうなるんだ」
どういうことだ!」
魔族領にある国の1つ、"ギムラ"。現
在、そこを治めているアドム・クリプト
王は兵士に向かって怒声を飛ばしてい
た。
「す、すみません!我々が気が付いた時
には既におらず………………最近バタバタ
しているのもあって、そこまで気が回り
ませんでした!」
「言い訳はよい!であれば、すぐに探し
出して連れてこい!早急にだぞ!」
「はぁ……………無茶を言うな。俺達に八
つ当たりされても困る。だいたい目を離
したお前の責任だろうがよ(ボソッ)」
「ん?何か言ったか?」
「い、いえっ!ただちに探して参りま
す!」
「アドム様、少し落ち着かれてはいかが
ですかな?」
「だがっ……………」
「最近の貴方はどこか焦っておられる。
何をそんなに慌てていらっしゃるので
す?」
「嫌な胸騒ぎがするんだ。どこからか、
狙われているような……………最近、魔王
も復活したらしいと専らの噂だしな」
「まだそのようなことを………………私共
が何度も言ったじゃありませんか。そん
な世迷言を信じてはなりませぬと」
「だ、だが、あらゆるところで噂が立っ
ているんだぞ!それに目撃例もちらほら
と出てきて……………」
「大丈夫です。私共がついております。
ですので、アドム様は何の憂いもなく、
ご自身の為すべきことを優先して下さ
れ」
「ほ、本当に任せても大丈夫なんだ
な?」
「ええ……………万事、私共にお任せ頂け
れば問題ありません。私共は常に貴方の
味方ですぞ」
「おっ、今日はやけに大人しいな。とう
とう観念したか」
城の地下にある牢屋の中を覗き込んだ男
がそう言った。この場所には罪を犯した
者や王の命令に背いた者、また王の個人
的な感情によって連れて来られた者など
が収監されている。24時間、常に交代
制の見張りがおり、数時間おきに与えら
れる食事以外はただただ現実から目を背
け、寝て過ごす者がほとんどだった。あ
わよくばと逃走を図ろうものなら、すぐ
さま捕えられ、世にも恐ろしい罰が下さ
れることは必至。仮に牢屋を抜け出し
て、見張りや看守を撒くことができたと
しても城に常駐する騎士団……………特に
団長や副団長に見つかってしまえば命は
ないだろう。だからだろう。囚人には逆
らう気力がなく、基本的に言いつけ通り
大人しくしているのは……………ところ
が、中には例外もいた。つい1ヶ月程前に収監されたとある夫
婦は今までの者達とは少々勝手が違って
いたのだった。
「……………してくれ」
「ん?何か言ったか?」
「……………俺達をあの子の元に返してく
れ!!」
「ちいっ!まだ、そのようなことをほざ
く気力があったか!」
「お願いよ!ここから出して!それがで
きないのなら、せめてあの子に会わせ
て!!」
「ええいっ!夫婦揃って、うるさいわ!
お前らをここから出すつもりなんてない
し、あの小僧には二度と会えん!分かっ
たのなら、大人しく我々の言うことに従
え!!」
「自分達のしていることが分かっている
のか!各地から罪もない者達を集めて奴
隷のようにこき使うなど!俺達は絶対に
認めないぞ!」
「はっきり言って滅茶苦茶よ!こんなこ
とが罷り通っていいはずがないわ!あなた達は一体何を考えている
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「不敬なるぞ!発言には気を付けろ!そ
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ゃないか。我々に逆らって、こうして投
獄されてしまったんだからな」
「だから、俺達はこうして毎日お前にぶ
つかることで上で苦しい思いをしている
同志達を解放できないかと足掻いている
んだ!」
「彼らの方が私達なんかよりもよっぽど
可哀想だわ……………お願い。もうこんな
ことはやめて。全員を解放して」
「ふんっ。牢屋の中でいくら叫んだとこ
ろで状況は一向に変わらん。お前達の声
が届く訳でもあるまいし。むしろ、あい
つらの環境は悪くなるかもな……………そ
うだ。いいことを考えたぞ」
「お、おい!一体何をする気だ!」
「や、やめて!」
「ふんっ。恨むんなら、自分達の無能さ
を恨め。なんせ、お前達がこちらに楯突
いたおかげであいつらが余計苦しい思い
をするんだからな………………くくっ。さ
ぞかし、お前達は恨まれることだろう。
もどかしいよな?お前達はあいつらを想
って行動したが結果、恨まれる形となっ
てしまうんだからな」
「くっ……………俺達のせいで同志達が」
「ううっ、どうしてこんなことに」
夫婦が泣き崩れた様子を見た男はニヤリ
とした笑みを浮かべながら、牢屋の前を
離れ、地下を後にした。去り際、夫婦達
の耳には男のある言葉が纏わりついて離
れなかった。
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けるから、こうなるんだ」
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