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第48話 お屋敷探検と魔法の時間
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心地いいぬくもりに包まれながら、俺はゆっくりと目を覚ました。
「……ふあぁあ」
思わず大あくび。ベッドがあまりにも快適すぎて、もう二度寝三度寝の誘惑がすごい。ていうか、ふかふかすぎて布団が俺を放してくれない。これ絶対、何かの魔法かけられてるだろ。
(……あれ?ここどこだっけ)
ふかふかの枕に頭を沈めたまま、ぼんやりと天井を見上げ――思い出す。
(ああ、そっか。貴族の館だ……)
昨日の出来事が、一気に頭の中で再生された。でっかい風呂、豪華な夕餉、エリナとの夜の会話。それに、ミルラとはしゃいで遊んだ時間も。
そして今、俺はふかふかのベッドに沈み込んでいる。
そんな夢みたいな寝心地に感動しながら、布団と格闘していると――
「ユーリくん、お目覚めですか?」
控えめなノックの音に続いて、エリナの丁寧な声が響いた。
「うん、起きてるよ」
そう返すと、扉がそっと開いてエリナが部屋に入ってきた。
でも正直、布団の中でぬくぬくしてたい。あと五分!いや、三分!せめて――
「……朝食の準備、できてるわ。……行きましょう、ユーリくん」
そう言いながら、エリナはちらりと俺の顔を見て、すぐに視線をそらした。
その耳が、ほんのり赤くなっているのを、俺は見逃さなかった。
(……あ、やっぱりちょっと照れてる?)
思わず俺も気まずいような、でもちょっと嬉しいような気分になって、頬をかいてごまかした。
「あっ……うん、すぐ行くよ」
布団に別れを告げ、俺はふわふわのパジャマのまま、立ち上がった。
俺とエリナが食堂に入ると、すでに数人の姿があった。
「おー、ユーリくん!おはよう!」
豪快な声で手を振ってきたのはレオン。なんだか朝からテンション高い。
「おはようございます、レオンさん」
「おはよう、ユーリくん」
ミレティアも柔らかな笑顔で挨拶をくれる。彼女が席に着くのと入れ替わるように、メイドたちが温かいスープを次々と運び込み、テーブルの上に整然と並べていった。
「ゆーりくんっ!こっちこっちっ!」
そしてミルラは、昨日のように元気いっぱい。隣の椅子をポンポンと叩きながら俺を手招きしている。
(朝からにぎやかだな)
俺は促されるまま席に着き、ふと隣を見ると、エリナが少し顔をそらして、でもちらちらとこちらを見ている。昨日のやりとりを思い出してる……のか?
「……エリナ、今日はなんだか顔が赤い?」
レオンがニヤッと笑って言うと、エリナはすぐさま姿勢を正して真顔になった。
「別に。気のせいよ」
「ふーん?」
「ふふっ」
レオンとミレティアの視線が一斉に俺に向く。やめて!?なんか取り調べみたいになってるんだけど!?
ミルラは首をかしげながらも、にこにこと楽しそうに笑っていた。
「そ、それよりご飯、すごいですね!今日も!」
「そうよ?雷の王子に相応しい朝ごはんじゃなくて?」
「ちょ、やめてくださいってば!」
笑い声が弾け、湯気の立つ食卓が一気に温かくなる。
朝食を終えると、エリナがぱん、と手を叩いて立ち上がった。
「さ、じゃあお屋敷を案内するわ。ミルラももう準備できてるはずよ」
そう言いながら、エリナが立ち上がる。
と――
「ゆーりくん、こっちこっちー!」
先に立ち上がっていたミルラが、椅子から勢いよく降りて手を振っていた。ミレティアが「あらあら」と微笑みながらナプキンをたたんでいて、レオンも落ち着いた様子で紅茶を一口。
「おうちのなか、いっぱい紹介するねっ!」
「う、うん。よろしくね……!」
今日もミルラの元気は全開だった。
「こっちはお母さまのピアノの部屋よ」
ミルラが先頭を歩き、エリナが補足するように説明してくれる。絵に描いたような豪華な廊下を歩きながら、俺は映画のセットかなこれとか思っていた。
「でね、こっちはミルラのお部屋ー!でもいまはおもちゃでちらかってるから、みせられませんっ!」
「堂々とすごい自信だね」
隣を歩いていたエリナが、ふとこちらに笑いかけてきた。
「ふふ、自分の家なのに、こうして歩くと探検してるみたいだわ」
エリナが笑って言った。――たぶん、昨日のことがあったからかな。なんか、こうして笑ってるのを見ると、ちょっと嬉しくなる。
しばらく館内を案内されたあと、俺たちは中庭へと出た。
「わあ……」
思わず声が出た。目の前には、整えられた芝と、色とりどりの花々が広がる庭園。噴水がきらめき、鳥のさえずりが心地よいBGMになっている。
「ここ、すごいね」
「お父さまのお気に入りなの。昔、庭師の人と一緒に設計したんだって」
「ねぇゆーりくん!おにごっこしよっ!」
「ええ!?この庭で!?」
こんな立派な庭でおにごっこってどうなのかと思いつつも、ミルラに腕を引っ張られれば断れず。
「つーかまえたっ!」
「そんなに急いだら転ぶよ」
そう声をかけると、ミルラがくるっと振り返ってにっこり笑った。
「だいじょーぶっ!」
……その瞬間、足元がもつれて、あぶなっ!
そんな感じで、ちょっとだけ庭を全力ダッシュ。庭師さんには見られてないことを祈る。
そして――昼前になると、エリナがふと口を開いた。
「少しだけ、私の魔法の練習……見てもらえたら嬉しいな」
「練習?」と聞き返しかけて、俺はふと気になって言葉を止めた。
「……え?魔法って、あの魔法!?」
思わず、ちょっと大きめの声が出てしまう。
エリナは一瞬びくっとして、小さく肩をすくめた。
「う、うん……その、魔法の練習……」
目をそらしながら、エリナがぽつりと返してくる。
「……ユーリくんに、見てもらえたらいいなって、思ったの。……友達だからね」
その声は小さかったけれど、ちゃんと聞こえた。
その顔は少し照れくさそうで――でも、それ以上に、どこか誇らしげだった。
案内されたのは、屋敷の裏にある専用の魔法練習場。石畳で囲まれた円形のスペースで、少し距離を取れば安全に魔法を撃てる造りになっている。
エリナがスッと杖を構えた。
エリナが杖を構える姿を見て、思わず「おお」と心の中でつぶやく。なんか、すごくかっこいい。
「見ててね」
その声と同時に、彼女の周囲に魔力の気配が広がった。風がふっと舞い上がり、杖の先に、赤い光が灯る。
「――フレイムスパーク!」
ぱっ、と炎の粒が空中に浮かび、数秒ほど瞬いたあと、空中で小さく弾けた。
「……おおぉ」
俺は思わず拍手していた。火の魔法って、派手で危険なイメージがあったけど、エリナの魔法は精密で、ちゃんと制御されていた。
それ以上に、人生で初めて見る本物の魔法に、心が震えるほど興奮していた。
「すごい……これが魔法か……!」
(これが魔法。ほんとに、目の前で火が浮いてた……すげぇ)
「えへへ……ありがと」
エリナはちょっと得意げに微笑む。
「他にも、フレイムリングっていう、魔法も練習中なの。……ちょっと派手だけど、やってみてもいい?」
「ぜひ!」
と、そこに、場の隅で黙って見守っていた年配の男性が、一歩前に出てきた。品のある黒いローブに、整えられた白髪と口ひげ。背筋を伸ばしたその立ち姿には、年齢を感じさせない威厳があった。
「お嬢様、もちろんですが、制御をお忘れなく」
「ええ、わかってるわ、先生」
彼は、代々ヴァーミリオン家に仕える魔法の教師、セルジュ。厳しくも穏やかな目が、エリナの動きをじっと見つめている。
エリナが軽くうなずき、再び杖を構えた。
「――フレイムリング!」
炎の輪が空中に展開し、くるくると回転しながら、花火のように火花を散らす。
「……わぁ」
さっきよりずっと派手だけど、不思議と怖さはなかった。それだけ、しっかり制御されているってことなんだろう。
「どう?派手すぎた?」
「いや、めっちゃかっこいいよ!」
「ほんと?」
「うん、ミルラもいたら大はしゃぎしてたよ」
そう言うと、エリナは少しだけ照れて――
「ふふっ、よかった」
と、嬉しそうに笑った。その笑顔に、セルジュもほんのわずかに目尻を下げる。
「――なかなか見事でございました。お嬢様の成長は、実に誇らしいものです」
その声に、エリナの頬がまた少し赤くなる。
「……ふあぁあ」
思わず大あくび。ベッドがあまりにも快適すぎて、もう二度寝三度寝の誘惑がすごい。ていうか、ふかふかすぎて布団が俺を放してくれない。これ絶対、何かの魔法かけられてるだろ。
(……あれ?ここどこだっけ)
ふかふかの枕に頭を沈めたまま、ぼんやりと天井を見上げ――思い出す。
(ああ、そっか。貴族の館だ……)
昨日の出来事が、一気に頭の中で再生された。でっかい風呂、豪華な夕餉、エリナとの夜の会話。それに、ミルラとはしゃいで遊んだ時間も。
そして今、俺はふかふかのベッドに沈み込んでいる。
そんな夢みたいな寝心地に感動しながら、布団と格闘していると――
「ユーリくん、お目覚めですか?」
控えめなノックの音に続いて、エリナの丁寧な声が響いた。
「うん、起きてるよ」
そう返すと、扉がそっと開いてエリナが部屋に入ってきた。
でも正直、布団の中でぬくぬくしてたい。あと五分!いや、三分!せめて――
「……朝食の準備、できてるわ。……行きましょう、ユーリくん」
そう言いながら、エリナはちらりと俺の顔を見て、すぐに視線をそらした。
その耳が、ほんのり赤くなっているのを、俺は見逃さなかった。
(……あ、やっぱりちょっと照れてる?)
思わず俺も気まずいような、でもちょっと嬉しいような気分になって、頬をかいてごまかした。
「あっ……うん、すぐ行くよ」
布団に別れを告げ、俺はふわふわのパジャマのまま、立ち上がった。
俺とエリナが食堂に入ると、すでに数人の姿があった。
「おー、ユーリくん!おはよう!」
豪快な声で手を振ってきたのはレオン。なんだか朝からテンション高い。
「おはようございます、レオンさん」
「おはよう、ユーリくん」
ミレティアも柔らかな笑顔で挨拶をくれる。彼女が席に着くのと入れ替わるように、メイドたちが温かいスープを次々と運び込み、テーブルの上に整然と並べていった。
「ゆーりくんっ!こっちこっちっ!」
そしてミルラは、昨日のように元気いっぱい。隣の椅子をポンポンと叩きながら俺を手招きしている。
(朝からにぎやかだな)
俺は促されるまま席に着き、ふと隣を見ると、エリナが少し顔をそらして、でもちらちらとこちらを見ている。昨日のやりとりを思い出してる……のか?
「……エリナ、今日はなんだか顔が赤い?」
レオンがニヤッと笑って言うと、エリナはすぐさま姿勢を正して真顔になった。
「別に。気のせいよ」
「ふーん?」
「ふふっ」
レオンとミレティアの視線が一斉に俺に向く。やめて!?なんか取り調べみたいになってるんだけど!?
ミルラは首をかしげながらも、にこにこと楽しそうに笑っていた。
「そ、それよりご飯、すごいですね!今日も!」
「そうよ?雷の王子に相応しい朝ごはんじゃなくて?」
「ちょ、やめてくださいってば!」
笑い声が弾け、湯気の立つ食卓が一気に温かくなる。
朝食を終えると、エリナがぱん、と手を叩いて立ち上がった。
「さ、じゃあお屋敷を案内するわ。ミルラももう準備できてるはずよ」
そう言いながら、エリナが立ち上がる。
と――
「ゆーりくん、こっちこっちー!」
先に立ち上がっていたミルラが、椅子から勢いよく降りて手を振っていた。ミレティアが「あらあら」と微笑みながらナプキンをたたんでいて、レオンも落ち着いた様子で紅茶を一口。
「おうちのなか、いっぱい紹介するねっ!」
「う、うん。よろしくね……!」
今日もミルラの元気は全開だった。
「こっちはお母さまのピアノの部屋よ」
ミルラが先頭を歩き、エリナが補足するように説明してくれる。絵に描いたような豪華な廊下を歩きながら、俺は映画のセットかなこれとか思っていた。
「でね、こっちはミルラのお部屋ー!でもいまはおもちゃでちらかってるから、みせられませんっ!」
「堂々とすごい自信だね」
隣を歩いていたエリナが、ふとこちらに笑いかけてきた。
「ふふ、自分の家なのに、こうして歩くと探検してるみたいだわ」
エリナが笑って言った。――たぶん、昨日のことがあったからかな。なんか、こうして笑ってるのを見ると、ちょっと嬉しくなる。
しばらく館内を案内されたあと、俺たちは中庭へと出た。
「わあ……」
思わず声が出た。目の前には、整えられた芝と、色とりどりの花々が広がる庭園。噴水がきらめき、鳥のさえずりが心地よいBGMになっている。
「ここ、すごいね」
「お父さまのお気に入りなの。昔、庭師の人と一緒に設計したんだって」
「ねぇゆーりくん!おにごっこしよっ!」
「ええ!?この庭で!?」
こんな立派な庭でおにごっこってどうなのかと思いつつも、ミルラに腕を引っ張られれば断れず。
「つーかまえたっ!」
「そんなに急いだら転ぶよ」
そう声をかけると、ミルラがくるっと振り返ってにっこり笑った。
「だいじょーぶっ!」
……その瞬間、足元がもつれて、あぶなっ!
そんな感じで、ちょっとだけ庭を全力ダッシュ。庭師さんには見られてないことを祈る。
そして――昼前になると、エリナがふと口を開いた。
「少しだけ、私の魔法の練習……見てもらえたら嬉しいな」
「練習?」と聞き返しかけて、俺はふと気になって言葉を止めた。
「……え?魔法って、あの魔法!?」
思わず、ちょっと大きめの声が出てしまう。
エリナは一瞬びくっとして、小さく肩をすくめた。
「う、うん……その、魔法の練習……」
目をそらしながら、エリナがぽつりと返してくる。
「……ユーリくんに、見てもらえたらいいなって、思ったの。……友達だからね」
その声は小さかったけれど、ちゃんと聞こえた。
その顔は少し照れくさそうで――でも、それ以上に、どこか誇らしげだった。
案内されたのは、屋敷の裏にある専用の魔法練習場。石畳で囲まれた円形のスペースで、少し距離を取れば安全に魔法を撃てる造りになっている。
エリナがスッと杖を構えた。
エリナが杖を構える姿を見て、思わず「おお」と心の中でつぶやく。なんか、すごくかっこいい。
「見ててね」
その声と同時に、彼女の周囲に魔力の気配が広がった。風がふっと舞い上がり、杖の先に、赤い光が灯る。
「――フレイムスパーク!」
ぱっ、と炎の粒が空中に浮かび、数秒ほど瞬いたあと、空中で小さく弾けた。
「……おおぉ」
俺は思わず拍手していた。火の魔法って、派手で危険なイメージがあったけど、エリナの魔法は精密で、ちゃんと制御されていた。
それ以上に、人生で初めて見る本物の魔法に、心が震えるほど興奮していた。
「すごい……これが魔法か……!」
(これが魔法。ほんとに、目の前で火が浮いてた……すげぇ)
「えへへ……ありがと」
エリナはちょっと得意げに微笑む。
「他にも、フレイムリングっていう、魔法も練習中なの。……ちょっと派手だけど、やってみてもいい?」
「ぜひ!」
と、そこに、場の隅で黙って見守っていた年配の男性が、一歩前に出てきた。品のある黒いローブに、整えられた白髪と口ひげ。背筋を伸ばしたその立ち姿には、年齢を感じさせない威厳があった。
「お嬢様、もちろんですが、制御をお忘れなく」
「ええ、わかってるわ、先生」
彼は、代々ヴァーミリオン家に仕える魔法の教師、セルジュ。厳しくも穏やかな目が、エリナの動きをじっと見つめている。
エリナが軽くうなずき、再び杖を構えた。
「――フレイムリング!」
炎の輪が空中に展開し、くるくると回転しながら、花火のように火花を散らす。
「……わぁ」
さっきよりずっと派手だけど、不思議と怖さはなかった。それだけ、しっかり制御されているってことなんだろう。
「どう?派手すぎた?」
「いや、めっちゃかっこいいよ!」
「ほんと?」
「うん、ミルラもいたら大はしゃぎしてたよ」
そう言うと、エリナは少しだけ照れて――
「ふふっ、よかった」
と、嬉しそうに笑った。その笑顔に、セルジュもほんのわずかに目尻を下げる。
「――なかなか見事でございました。お嬢様の成長は、実に誇らしいものです」
その声に、エリナの頬がまた少し赤くなる。
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