社畜の異世界再出発

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第50話 魔法講義

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魔法の資質があると知ってから、心の奥がずっとふわふわしている。

なんというか、こう……浮いてる感じ。しかも楽しい方向に。

「ユーリ様、何かご質問があれば、お答えいたしますよ」

セルジュが穏やかな声で声をかけてきた。

「あっ、じゃあ、あのっ!」

浮かれかけたテンションが、そのまま勢いに変わった。

「魔法って……あの、初級とか中級とかあるんですか?さっき、エリナが中級魔法使いって呼ばれてたけど」

「ええ、ございますとも。魔法は大きく分けて、初級魔法・中級魔法・上級魔法・最上級魔法の四段階に分かれております」

(初級、中級、上級、最上級……なるほど、ちゃんと段階があるんだな)

「例えば、先ほどエリナ様が中級魔法の一つを安定して発動し、完璧に制御されたため、中級魔法使いと称されることになります」

(なんか、明確な目標があるのって、ちょっと燃えるな)

剣術と同じだ。段階があって、少しずつ高みに登っていく感じ――俺、こういうの好きかもしれない。

「おお……」

知らない単語が並ぶたび、ワクワクが膨らんでいく。

「エリナ様が使われたフレイムスパークやフレイムリングは、初級魔法に分類されます。先ほどのフレイムレイが中級魔法ですね」

「じゃあ、上級魔法とか最上級魔法って、もっとすごいんですか?」

「とてつもないと申して差し支えないでしょうな。地形を変えたり、天候に干渉するような魔法も、存在します」

「地形って……地形って!え、天候も変えられるの!?」

目の前で山が割れたり、大地が裂けたり、空から雷が落ちてくる光景が頭をよぎる。

……なんだそれ、もう規模がでかすぎて想像が追いつかない。

(すげぇ……やってみたい……!)

「ですが、上級以上の魔法を扱える者は、極めて限られております。特に最上級となると、王国でも数名いるかどうか……」

「え、えっ……そんなに少ないんですか!?」

「はい。その域に達するには、才能、鍛錬、魔力量、すべてが一級品である必要がございます」

「うわぁ……なんか、すごい世界……」

しみじみと感心していたら、となりでエリナが小声で囁いてくる。

「私も、まだ中級に入ったばかりだし……最上級なんて、まだまだずーっと先よ」

「そっか……でも、エリナならいけそうな気がするけどな」

「ふふ、ありがと」

照れたように笑うエリナの横顔を見ていたら、セルジュがコホンとひとつ咳払いをした。

「ちなみに、ユーリ様が魔法を学ばれる場合、最初は初級魔法から始めることになります」

「やっぱり基礎が大事ってことですね!」

「その通り。焦らず、ひとつずつ積み重ねていきましょう」

よし、と拳を握る。

(初級から、極めて……そのうち、最上級も!)

「まずは、発動のための基礎理論と詠唱の練習からですね。もっとも、エリナ様ほどになりますと、初級魔法であればすでに詠唱なしで発動できる程度にまで制御が洗練されております」

(初級魔法を無詠唱で……やっぱりエリナって、すごいんだな)

思い返すと、さっきの中級魔法のフレイムレイも一言だけで発動してた。あれって、普通はできることじゃないんだ……。

……ていうか、思い返してみたら、エリナ――ちょっとだけドヤ顔してた気がする。

「よ、よろしくお願いしますっ!」

ついでに、隣でエリナが「ふふっ、張り切ってるわね」と笑っていた。


そんなこんなで、ちょっとした魔法講義を終えた頃――

「そろそろ昼食の時間でございます」とセルジュが静かに言った瞬間、俺の腹がぐぅ~~~~と鳴った。

……なんかすごくタイミングよかったのに、全部台無しである。

「ふふっ、タイミングばっちりね、ユーリくん」

「うぅ……今のは、忘れてくれたら嬉しいんだけど……」

「無理ね、ばっちり聞こえたもの」

くすくす笑うエリナと、それを見て目を細めるセルジュ。

(いや、そんな目で見ないで先生……)

でもお昼と聞いたら、もう意識は完全に胃袋へシフトしてしまった。

あの……量はすごいけど、またあの肉が食べられるのかと思うと、ちょっと楽しみでもある。


案の定、食堂に戻ると、テーブルの上にはそれが鎮座していた。

赤みのあるロクホーン牛のロースト。

表面は香ばしく、切り口からはジューシーな肉汁があふれている。横には山盛りのサラダと、焼きたてのパン。

ミルラがすでに席についていて、「おにくー!」と叫んでいた。

「ゆーりくん、今日もお肉だよ!やったねっ!」

「うんうん、予想はしてたけど……やっぱり豪華だなぁ、これ」

俺が思わず目を見張ると、レオンが隣からドンと背中を叩いてきた。

「肉は心の栄養だからな!」

「はい、まあ確かにわかりますが……それでも、少しは加減というものを考えていただけると……」

「ふふ、今日のロクホーン牛は上質な部位を使ってますのよ。特別な来客用の分を、余分に焼いてもらいましたから」

ミレティアが優雅に微笑んでいるけど、その手元にはすでに二切れ分の肉が乗っていた。……食べる気まんまんだこの人。

「では、いただきましょう」

ミレティアの合図で、みんなが一斉に手を合わせる。

「いただきまーす!」

そして、ナイフを入れた瞬間。

――じゅわっ。

「……うまっ……!」

口に入れた瞬間、肉汁が広がって、やわらかい肉が舌の上でとろけた。……やっぱりすごい。見た目で期待した通りの、とんでもない美味しさだった。

「ねぇねぇ、おかわりあるっ?」

「ミルラ、早いね」

「うふふ、でも今日のは特別美味しいわよね」

ミルラとミレティアが同時に二回目の肉を要求していた。この勢い、見習うべきなのかもしれない。

……まあ、俺も普段じゃまず食べられないし。そりゃ手も止まらなくなるってもんだ。

「ユーリくん、昨日よりもたくさん食べてる?」

「う、うん……気づいたら、なんか進んじゃって……」

「ふふ、元気の証拠ね。魔法の訓練も始まるし、しっかり食べて体力つけなきゃね」

エリナが笑いながら肉を切り分けている姿が、やけに頼もしく見えた。

(……俺も、負けてられないな)

肉をかじりながら、なんだか妙にやる気が湧いてくる昼食だった。
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