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6.二人の距離
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思ったより早く買い物が終わり二人のお出かけが終わるのだと思うと寂しくなる。エリーゼはこのまま侯爵邸の戻るのは勿体ない気がして楽しかった余韻を感じたいと思った。それなら散歩がてらに歩くのもいいのかもしれない。ちょうど欲しかった本が発売している事を思い出し本屋の近くで降ろしてもらうことにした。
「クラウス様。帰る前に本屋に寄りたいのでどこかで降ろして頂けますか?」
「エリーゼさんはこれから何か用事がありますか? なければ昼食に付き合ってくれませんか?」
「あの……用はありませんがご一緒してもよろしいのですか?」
「ええ、ぜひお願いします」
エリーゼは予想外の誘いに甘えていいのか迷ったがクラウスと過ごせる時間が延びるという誘惑に抗えずに頷いてしまった。そのまま馬車に揺られていると着いた場所は今流行の卵料理専門店だった。勤め先の侯爵家の侍女たちも行きたいと言っていたが数週間の予約待ちだと聞いている。
クラウスのエスコートで店内に入ればものすごく賑わっている。昼時でもあるので満席で待合の席も順番を待つ人でぎっしりと埋まっている。予約なしでは入れなさそうだ。別のお店にした方がいいのではとクラウスに声を掛けようとしたら、お店の責任者と思われる男性店員が慌てて走り寄りクラウスに頭を下げた。
「ヘンケル様。お待ちしておりました。ご予約のお部屋へご案内いたします」
エリーゼは目を丸くした。クラウスは予め予約していたのだ。初めから買い物が終わったらエリーゼを連れて来てくれるつもりだったのだろうか。クラウスを見ればどこか照れくさそうに笑っている。
「兄夫婦が先日来て美味しかったと言っていたので来てみたかったのです。混んでいると聞いていたので予約しました。エリーゼさんに気にいってもらえるといいのですが」
そんなにエリーゼを喜ばせないでほしい。嬉しすぎてどうにかなってしまう。顔がだらしなくにやけているだろう。恥ずかしい顔をクラウスに見られないように床を見ながら心を無にして表情を取り戻そうとした。
案内されたのはこじんまりとした淡い黄色い壁の可愛らしい個室だった。壁には花が飾られている。
向かい合わせで座るとクラウスが店員からメニューを受け取る。二人でそれを眺めればエリーゼは種類の多さに迷いなかなか決められない。その様子を見たクラウスがいくつか頼んでシェアしようと提案してくれた。それならばたくさんの種類が楽しめるのでぜひにとお願いした。
クラウスは店員を呼ぶとお店の一番人気と書かれているチーズオムライス、その他に厚切り卵サンドとトマトとほうれん草のキッシュ、更に挽肉のオムレツまで頼んだ。食べきれるか心配になったがいつもクラウスが食べるお昼の量はエリーゼの3倍はある。スマートな体のどこに入るのか不思議なほどよく食べる人なので大丈夫だろう。
暫くすると注文したものが2人分に分けられてテーブルに置かれた。もちろんエリーゼには少なめに盛られている。自分でお皿に取り分けるつもりだったので驚いてしまう。普通はこんなサービスはしていないだろうが公爵家のクラウスには特別対応なんだと感心してしまった。
エリーゼは温かいうちにとチーズオムライスをすくうとライスと卵の間にとろとろのチーズがたっぷりと入っていてよく伸びる。口に入れれば美味しさのあまり目を見開いてしまう。その美味しさをクラウスに伝えたくてニッコリ顔で頷いた。エリーゼの顔を見たクラウスはその顔が可笑しかったのか吹き出して笑う。
「喜んでもらえてよかったです。エリーゼさんは本当に美味しそうに食べますね」
そしてクラウスもオムライスを一口食べると僅かに口角を上げエリーゼに頷いて見せた。
その後も二人で同じものを口に運んでは顔を見合わせて感想を言い合い、楽しい食事の時間を過ごした。クラウスの食べ方はいつ見ても品があって綺麗だ。エリーゼも粗相をしないよう気をつけた。食事も終わりお腹がいっぱいで動けなくなりそうだが再びクラウスにエスコートされ馬車に乗った。
「クラウス様。ご馳走様でした。沢山の種類を食べることができてすごく美味しかったです」
「どういたしまして。流石に人気のお店で雰囲気も味も良かった。それにエリーゼさんと一緒の食事は何倍も美味しく感じます。あなたと来られてよかった」
「あ……はい。私もクラウス様とご一緒できて嬉しかったです」
なんだか今日のクラウスの言葉は甘く好意以上のものを感じる。エリーゼの自意識過剰だろうか……。段々と嬉しさより戸惑いの方が大きくなる。
「このまま侯爵邸へお送りしてもいいですか?」
「あの、できれば適当に降ろしてください。本屋に寄りたいので。なんだか厚かましくて申し訳ありません」
「いえ。時間があれば私もご一緒したいのですがこの後予定があるので残念です。では近い本屋の前まで送りますね」
「はい。ありがとうございます」
馬車を商店街の大きな本屋の前に止めるとエリーゼを降ろしてくれた。
「クラウス様、今日はありがとうございました。お気をつけて」
「エリーゼさん、私のほうこそありがとうございました。あなたのお陰で素敵なプレゼントを用意することができました。エリーゼさんも気をつけて帰ってください。できればもう少し……あなたと過ごしたかった」
クラウスの瞳はどこか熱っぽくそして名残惜しそうだったが、待ち合わせがあるらしく時間を気にしながら馬車を出した。
今の自分は笑顔でクラウスを見送れただろうか。エリーゼは今までのようにクラウスの優しさを純粋に喜べなかった。
さっきまでの晴天が突然曇天に変わってしまったように、急速に胸の中に膨れ上がる不安が頭を支配する。
エリーゼは馬車が去っていくのを見えなくなるまで見送りそれから本屋に入った。
今日のクラウスの態度を思い出しながらこれ以上クラウスの側にいていいのか迷い始めていた。今のような気安い関係は図書室の整理が終わるまでの限定のものだ。
限られた時間だからこそあと少しだけ側にいたいと望んでいたが、急速に近づいていく二人の距離に戸惑い恐れた。それは許されないことだからだ。
クラウスに好かれているかもと想像した瞬間、越えられない身分の差に竦んだ。叶わない恋だからこそ自分は安心して彼を慕うことができた。もしかして手が届くかもしれないと考えたらその先にある絶望に気付いてしまったのだ。
いや、これは自分の勝手な杞憂に過ぎない。クラウスからは明確な言葉をもらったわけではないのだから、先走った考えで直ぐに側を離れなくてもいいのではないだろうか。彼は気安い友人にはこんな風な態度なのかもしれない。エリーゼは理由を探して離れる決断を先延ばしにしてしまう。これからどうすればいいのか。溜息をつきながら結論が出ない思考を繰り返す。
しばらくの間ぼんやりと店内を歩いていたが、気持ちを切り替えるように目的の本を探すことにした。お気に入りの小説のシリーズ最新刊を手に取るとレジに向かい会計を済ます。
気持ちの整理をつける為にも馬車を拾わずに歩いて帰ろうと本屋を出たところで後ろから声を掛けられた。
「エリーゼさん」
振り返るとそこにいたのはアデリア・ドナート伯爵令嬢だった。
赤い外出用のドレスを着ている。エリーゼの中でアデリアの印象は赤だった。思い起こせば学園時代から赤い服を好んで着ていたようだったが、アデリアには似合っているので自分が魅力的に見えるように意識しているのだろう。公爵家のお茶会以来だが、なぜエリーゼを見かけるたびに絡んでくるのだろうか。
心が荒波のような今は誰とも話したくなかった。タイミングの悪さに心の中でため息を吐く。
「お久ぶりです、アデリア様。何か御用ですか?」
「先程クラウス様とご一緒の所を見かけましたけど、あなた公爵家で侍女をなさっているそうね」
「……」
エリーゼは侍女ではないが使用人として一時的に雇われている事には違いなかったので反論はしなかった。そうだ、自分は使用人の立場なのだ。アデリナに言われてその自覚が薄らいでいたことを思い知った。
そしてアデリアにクラウスと一緒にいたところを見られていたのだ。よりによってこんな気持ちの時にと自分の運の悪さに腹が立つ。
「エリーゼさんのクラウス様に対する振る舞いは平民である事を忘れてしまっているように見えたので忠告して差し上げようと思ったのよ」
「忠告……ですか?」
アデリアが何を言いたいのかを察してエリーゼは耳を塞ぎたくなった。
「エリーゼさんとクラウス様はただの主従の関係ですからそれに相応しい距離を取るべきだわ。元貴族であるなら身分が違うという事がどういうことかご存じよね? クラウス様の優しさは主としてのものなのですから特別な好意だと勘違いすれば傷つくのはエリーゼさんでしょう。これはあなたの為に申し上げているのよ」
彼の優しさは主としてのもの……アデリアの言葉にエリーゼは頭を強く殴られたかのような衝撃を受けた。
そうだ、彼がエリーゼに恋をするはずがない。
「分かっています。……そんなこと自分が一番分かっています!」
言った途端、血の気が下がり顔色を悪くしたエリーゼをアデリアは睥睨しその口元に笑みを浮かべた。
「それなら安心だわ。私、先日クラウス様に婚約の打診をしましたの。無事婚約が調ったらエリーゼさんにもぜひ祝ってほしいわ」
アデリアの口調では婚約は確定していると匂わせている。どこまで話が進んでいるのか確かめたいとは思わなかった。エリーゼは無性に泣きたくなったが手を強く握りなんとか耐えた。
「そうですか。急いでいますので失礼します」
これ以上なにも聞きたくなくてアデリアの返事を待たずに歩き出した。
アデリアから見える所までは辛うじて早歩きだったが、角を曲がった途端に耐えきれずその場所から一刻も離れる為にエリーゼは走り出した。
「クラウス様。帰る前に本屋に寄りたいのでどこかで降ろして頂けますか?」
「エリーゼさんはこれから何か用事がありますか? なければ昼食に付き合ってくれませんか?」
「あの……用はありませんがご一緒してもよろしいのですか?」
「ええ、ぜひお願いします」
エリーゼは予想外の誘いに甘えていいのか迷ったがクラウスと過ごせる時間が延びるという誘惑に抗えずに頷いてしまった。そのまま馬車に揺られていると着いた場所は今流行の卵料理専門店だった。勤め先の侯爵家の侍女たちも行きたいと言っていたが数週間の予約待ちだと聞いている。
クラウスのエスコートで店内に入ればものすごく賑わっている。昼時でもあるので満席で待合の席も順番を待つ人でぎっしりと埋まっている。予約なしでは入れなさそうだ。別のお店にした方がいいのではとクラウスに声を掛けようとしたら、お店の責任者と思われる男性店員が慌てて走り寄りクラウスに頭を下げた。
「ヘンケル様。お待ちしておりました。ご予約のお部屋へご案内いたします」
エリーゼは目を丸くした。クラウスは予め予約していたのだ。初めから買い物が終わったらエリーゼを連れて来てくれるつもりだったのだろうか。クラウスを見ればどこか照れくさそうに笑っている。
「兄夫婦が先日来て美味しかったと言っていたので来てみたかったのです。混んでいると聞いていたので予約しました。エリーゼさんに気にいってもらえるといいのですが」
そんなにエリーゼを喜ばせないでほしい。嬉しすぎてどうにかなってしまう。顔がだらしなくにやけているだろう。恥ずかしい顔をクラウスに見られないように床を見ながら心を無にして表情を取り戻そうとした。
案内されたのはこじんまりとした淡い黄色い壁の可愛らしい個室だった。壁には花が飾られている。
向かい合わせで座るとクラウスが店員からメニューを受け取る。二人でそれを眺めればエリーゼは種類の多さに迷いなかなか決められない。その様子を見たクラウスがいくつか頼んでシェアしようと提案してくれた。それならばたくさんの種類が楽しめるのでぜひにとお願いした。
クラウスは店員を呼ぶとお店の一番人気と書かれているチーズオムライス、その他に厚切り卵サンドとトマトとほうれん草のキッシュ、更に挽肉のオムレツまで頼んだ。食べきれるか心配になったがいつもクラウスが食べるお昼の量はエリーゼの3倍はある。スマートな体のどこに入るのか不思議なほどよく食べる人なので大丈夫だろう。
暫くすると注文したものが2人分に分けられてテーブルに置かれた。もちろんエリーゼには少なめに盛られている。自分でお皿に取り分けるつもりだったので驚いてしまう。普通はこんなサービスはしていないだろうが公爵家のクラウスには特別対応なんだと感心してしまった。
エリーゼは温かいうちにとチーズオムライスをすくうとライスと卵の間にとろとろのチーズがたっぷりと入っていてよく伸びる。口に入れれば美味しさのあまり目を見開いてしまう。その美味しさをクラウスに伝えたくてニッコリ顔で頷いた。エリーゼの顔を見たクラウスはその顔が可笑しかったのか吹き出して笑う。
「喜んでもらえてよかったです。エリーゼさんは本当に美味しそうに食べますね」
そしてクラウスもオムライスを一口食べると僅かに口角を上げエリーゼに頷いて見せた。
その後も二人で同じものを口に運んでは顔を見合わせて感想を言い合い、楽しい食事の時間を過ごした。クラウスの食べ方はいつ見ても品があって綺麗だ。エリーゼも粗相をしないよう気をつけた。食事も終わりお腹がいっぱいで動けなくなりそうだが再びクラウスにエスコートされ馬車に乗った。
「クラウス様。ご馳走様でした。沢山の種類を食べることができてすごく美味しかったです」
「どういたしまして。流石に人気のお店で雰囲気も味も良かった。それにエリーゼさんと一緒の食事は何倍も美味しく感じます。あなたと来られてよかった」
「あ……はい。私もクラウス様とご一緒できて嬉しかったです」
なんだか今日のクラウスの言葉は甘く好意以上のものを感じる。エリーゼの自意識過剰だろうか……。段々と嬉しさより戸惑いの方が大きくなる。
「このまま侯爵邸へお送りしてもいいですか?」
「あの、できれば適当に降ろしてください。本屋に寄りたいので。なんだか厚かましくて申し訳ありません」
「いえ。時間があれば私もご一緒したいのですがこの後予定があるので残念です。では近い本屋の前まで送りますね」
「はい。ありがとうございます」
馬車を商店街の大きな本屋の前に止めるとエリーゼを降ろしてくれた。
「クラウス様、今日はありがとうございました。お気をつけて」
「エリーゼさん、私のほうこそありがとうございました。あなたのお陰で素敵なプレゼントを用意することができました。エリーゼさんも気をつけて帰ってください。できればもう少し……あなたと過ごしたかった」
クラウスの瞳はどこか熱っぽくそして名残惜しそうだったが、待ち合わせがあるらしく時間を気にしながら馬車を出した。
今の自分は笑顔でクラウスを見送れただろうか。エリーゼは今までのようにクラウスの優しさを純粋に喜べなかった。
さっきまでの晴天が突然曇天に変わってしまったように、急速に胸の中に膨れ上がる不安が頭を支配する。
エリーゼは馬車が去っていくのを見えなくなるまで見送りそれから本屋に入った。
今日のクラウスの態度を思い出しながらこれ以上クラウスの側にいていいのか迷い始めていた。今のような気安い関係は図書室の整理が終わるまでの限定のものだ。
限られた時間だからこそあと少しだけ側にいたいと望んでいたが、急速に近づいていく二人の距離に戸惑い恐れた。それは許されないことだからだ。
クラウスに好かれているかもと想像した瞬間、越えられない身分の差に竦んだ。叶わない恋だからこそ自分は安心して彼を慕うことができた。もしかして手が届くかもしれないと考えたらその先にある絶望に気付いてしまったのだ。
いや、これは自分の勝手な杞憂に過ぎない。クラウスからは明確な言葉をもらったわけではないのだから、先走った考えで直ぐに側を離れなくてもいいのではないだろうか。彼は気安い友人にはこんな風な態度なのかもしれない。エリーゼは理由を探して離れる決断を先延ばしにしてしまう。これからどうすればいいのか。溜息をつきながら結論が出ない思考を繰り返す。
しばらくの間ぼんやりと店内を歩いていたが、気持ちを切り替えるように目的の本を探すことにした。お気に入りの小説のシリーズ最新刊を手に取るとレジに向かい会計を済ます。
気持ちの整理をつける為にも馬車を拾わずに歩いて帰ろうと本屋を出たところで後ろから声を掛けられた。
「エリーゼさん」
振り返るとそこにいたのはアデリア・ドナート伯爵令嬢だった。
赤い外出用のドレスを着ている。エリーゼの中でアデリアの印象は赤だった。思い起こせば学園時代から赤い服を好んで着ていたようだったが、アデリアには似合っているので自分が魅力的に見えるように意識しているのだろう。公爵家のお茶会以来だが、なぜエリーゼを見かけるたびに絡んでくるのだろうか。
心が荒波のような今は誰とも話したくなかった。タイミングの悪さに心の中でため息を吐く。
「お久ぶりです、アデリア様。何か御用ですか?」
「先程クラウス様とご一緒の所を見かけましたけど、あなた公爵家で侍女をなさっているそうね」
「……」
エリーゼは侍女ではないが使用人として一時的に雇われている事には違いなかったので反論はしなかった。そうだ、自分は使用人の立場なのだ。アデリナに言われてその自覚が薄らいでいたことを思い知った。
そしてアデリアにクラウスと一緒にいたところを見られていたのだ。よりによってこんな気持ちの時にと自分の運の悪さに腹が立つ。
「エリーゼさんのクラウス様に対する振る舞いは平民である事を忘れてしまっているように見えたので忠告して差し上げようと思ったのよ」
「忠告……ですか?」
アデリアが何を言いたいのかを察してエリーゼは耳を塞ぎたくなった。
「エリーゼさんとクラウス様はただの主従の関係ですからそれに相応しい距離を取るべきだわ。元貴族であるなら身分が違うという事がどういうことかご存じよね? クラウス様の優しさは主としてのものなのですから特別な好意だと勘違いすれば傷つくのはエリーゼさんでしょう。これはあなたの為に申し上げているのよ」
彼の優しさは主としてのもの……アデリアの言葉にエリーゼは頭を強く殴られたかのような衝撃を受けた。
そうだ、彼がエリーゼに恋をするはずがない。
「分かっています。……そんなこと自分が一番分かっています!」
言った途端、血の気が下がり顔色を悪くしたエリーゼをアデリアは睥睨しその口元に笑みを浮かべた。
「それなら安心だわ。私、先日クラウス様に婚約の打診をしましたの。無事婚約が調ったらエリーゼさんにもぜひ祝ってほしいわ」
アデリアの口調では婚約は確定していると匂わせている。どこまで話が進んでいるのか確かめたいとは思わなかった。エリーゼは無性に泣きたくなったが手を強く握りなんとか耐えた。
「そうですか。急いでいますので失礼します」
これ以上なにも聞きたくなくてアデリアの返事を待たずに歩き出した。
アデリアから見える所までは辛うじて早歩きだったが、角を曲がった途端に耐えきれずその場所から一刻も離れる為にエリーゼは走り出した。
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