塔の上のカミーユ~幽囚の王子は亜人の国で愛される~【本編完結】

蕾白

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第二部

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 驚いて上から見おろしてくるアレクの顔を見つめ返していると、彼は困ったような顔で笑った。
「……君は僕に触られるのは嫌じゃないんだよね? 僕は君に触れたいし、それ以上のことをしたいと思ってる。だけど、君が外の世界のことをよくわかってないのにつけ込みたくなかったんだ」
「嫌じゃない。でも、わたしは何も知らないから、順番に教えて欲しい」
 何も知らなくても子供ではないのだから、段階を踏んでくれれば……多分。
 ……というより、自分が誰かとこういうことになるとはわたしもバルバラも予想してなかったんだ。
 アレクは額に手をやって眉を寄せた。
「……何か僕、すごくいたいけな幼子を欺す悪い大人になった気分だよ。だって正直なところ、僕は君が塔に閉じこめられてから初めて会った他人だから、タマゴから出てきたひな鳥が最初に会った相手について行くのと同じだったらって不安だったんだ。この先他の人たちと知り合ううちにもっと心を惹かれる相手ができるんじゃないかって……」
「わたしはひな鳥じゃないよ。知らないことは多いけれど、これから勉強しようと思ってる。でも、この先も好きになるのはアレクだけでいい。だって世の中に沢山の人がいたとしても、わたしのところまでたどり着いてくれたのはアレクだけだから」
 アレクに惹かれた気持ちは一時の迷いじゃない。
 限られた場所で生きてきたけど、周りの会話や読んだ書物や、時折感じる外の人たちの気配に、外にはいろんな人がいるのもわかっている。
 ……それでもわたしの心を揺らしたのはアレクだったから。
 彼は自分だって大事な儀式を目の前にしていて余裕なんてないはずなのに、わたしを気にかけてずっと塔に通ってくれた。
 わたしに広い空を見せてくれた。
 今まで肉親……今となっては肉親かどうかわからないけれど……ですら顧みてはくれなかった。バルバラだけが味方だった。その狭い世界を拡げてくれた。
 アレクが好きだと言ってくれたのが嬉しかった。
「カミーユ」
 アレクの顔が近づいてきて、優しく口づけされた。ゆるゆると重なった唇が角度を変えて深く重なる。息さえ溶けて混じり合うように深く。
 アレクの手がガウンの合わせを拡げて、首筋に唇が伝い降りていく。薄いナイトドレスの上から手のひらが胸元から脇腹に触れる。身体の線を確かめるように念入りに撫でられているうちに、こみ上げてくる慣れない感覚にカミーユは戸惑った。
 身体の奥からざわりと湧き上がってくるような……これは何? 
 熱が集まって自分の身体が反応してしまっていることにカミーユはどうしていいかわからなくて思わず強く目を伏せた。
「……怖い?」
「違う……その……恥ずかしい」
 素直にそう口にしたら、アレクは頷いて頬を撫でてくれた。
「うん。そうだね。嫌だったらそう言って。会話の延長みたいなものだから。僕は君の身体に色々質問してるんだ。どんな風に触れて欲しいのかどうされたら気持ちいいか知りたいから」
 ……質問? 会話? 言葉ではなく触れることで……会話になるの?
 ではわたしの身体が反応しているのは、アレクに答えているから?
 カミーユはふっと息を吐いた。そう言われたら緊張が少し解れた気がする。
「……君の身体は無垢で恥ずかしがりで……でもとても素直だよ」
 そう言いながらアレクの手が腰から大腿に降りていく。ナイトドレスの裾から中に忍び込んできた。素肌を直接撫で上げる乾いた手の感触に先ほどの感覚が湧き上がる。
 腿の内側の柔い場所からその先の、下着に覆われた部分にその手がたどり着いた時、思わず息を呑んでしまった。
「あっ……」
 下着の上からすでに熱を帯びて反応していたそこを、形を確かめるように緩く握られる。
「ここ、自分でしたことがある?」
 カミーユは首を横に振った。
 一応は男の身体はこうなるのだと書物では知っていた。
 今まで寝起きやふとした時にそんな状態になったことはあるけれど、さすがにバルバラには言えなくて、治まるまでじっとしてやりすごした。
「だって……こんなになるのはいけないことだと思って……」
「そんなことないよ。ここは可愛がって欲しいって言ってるんだよ」
 アレクに布越しに扱かれただけでピリピリと痺れるような感覚が身体を突き抜ける。
 こんなの知らない……。
「……んっ……。アレク……」
「怖い? 嫌? でも硬くなってるよ?」
 ……怖い……? そうじゃない。もっと激しくして欲しい……これじゃ優しすぎてじれったい。
「ちが……あっ……違うんだ……」
 カミーユはそんなことを強請っていいのかと躊躇った。はしたないと嫌われるかもしれない。でももどかしくて、思わず腰が揺れてしまう。
 それで更に恥じらうカミーユを見てアレクはぎゅっと抱きしめてきた。
「ごめん、何か君が可愛すぎてもう色々我慢できない」
 そう言ってナイトドレスを胸元までめくり上げると、下着の紐に手をかけた。

 カミーユの身体から何もかも取り去ってから、アレクも自分の衣服を全て脱ぎ捨てた。
 燭台の淡い灯りにアレクの細身だけれど均整の取れたしなやかな白い身体が照らされていた。
「……アレクは綺麗だ」
 整った繊細な美貌がカミーユの言葉に少し戸惑った表情を浮かべていた。この国の力を重んじる文化で育った彼には、自分の姿はあまり望ましくないのかもしれない。
 アレクはまるで宝物のようにカミーユを抱きしめて囁きかける。
「僕にとってはカミーユのほうが綺麗だよ」
 肌が直接触れ合うと、互いの熱も伝わってくる。もう何も隠すものも遮るものもない。
 抱き合って口づけを繰り返しながら、互いの熱を擦り合わせる。
 昂ぶった中心を絡ませて重ねているうちに、その刺激に酔いしれるように吐息が乱れていく。その吐息すら奪うように口づけが被さってくる。
 頭の中まで痺れてしまいそうだ。
「アレク……わたし……おかしくなりそう……」
「僕も……」
 アレクのものもきつく昂ぶっているのを見て、ああ、自分と同じなのだとカミーユは嬉しかった。
 物慣れないわたしのことを求めてもらえるだろうかという不安は消え失せてしまった。
「何か……来そう……身体熱くて……」
 身体の中でうねるような熱が解放を求めて集まっている。腰を揺らせて互いの熱の中心を絡ませる。
「うん……一緒だよ……っ……」
 アレクもそう言いながら頬を染めて潤んだ目を向けてきた。
 そこからは言葉にならなくて、互いの名前を呼び合いながら階を上りつめるように熱を縒り合わせた。限界まで張り詰めて、同時に弾けるように果てた。
 くたりとアレクがカミーユにもたれかかってきて、蕩けるような笑みを浮かべる。
「ありがとう。凄く良かったよ。……愛してる」
「わたしも……アレクを愛してるよ……」
 ……誰かと抱き合うというのは、こういうことなのか。
 きっとわたしを怖がらせないように優しくしてくれたんだろうけれど……それでも、こんなに幸せな気持ちになれるんだ。
 カミーユはそう思いながら乱れた息を落ち着かせようと大きく息を吐いた。

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