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第四部
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『……幸運の神様は準備ができている人を選ぶのよ。だから何があっても諦めないでね』
優しく穏やかな声が頭の中で響いた。
『わたしはあなたにダルトワ侯爵家の【祝福】をあげることはできないけれど、わたしとあの人の持つものは全てあなたの中にあるわ。それも祝福よ』
ああ、きっとあれはわたしの母だ。カミーユはそう確信した。
確かに親から伝えられるものはある。それは全ての親が子に与える祝福だ。
わたしは何も持っていないと思っていたけれど、そうではなかった。
……でも、死んだはずの母の声が聞こえるということは、わたしはどうなったんだろう。
「妃殿下。大丈夫ですか?」
ノアの声が間近で聞こえてカミーユは目を開けた。
目の前に井戸があって、どうやらそこでへたり込んだまま動けなくなっていたらしい。
「わたしは……気を失っていたのか?」
「トニが急に動かなくなったって知らせに来たんです。一瞬周りがぱっと明るくなったからおかしいなとは思ったんですけど……」
確かに明るくなったのは覚えている。そして意識が飛んでいたのはほんのわずかな時間のようで、差し込む日差しの明るさもほとんど変わっていない。。
そしてカミーユはさっきまで感じていた井戸の中の悪い気配が消え去っているのに気づいた。
……上手くいった? 浄化できている?
「ノア。子供たちに伝えて。この井戸はもう大丈夫だからって」
立ち上がりかけるとノアが慌てて身体を支えようと駆け寄ってきた。
「だめですよ妃殿下。急に動いたりしては」
「大丈夫だよ」
少しふらついたけれど、立てないほどではない。
「私がここにいた間に何か変わったことは?」
「近くの店に行って来たんですけど、店の人が奥で寝込んでいたりして、かなりの人が体調を崩しているみたいでした。意識のある人に聞いたら、領軍が鉱山を封鎖して仕入れも止まっているのだと……」
……領軍が鉱山に派遣されていたのは、襲撃を警戒してのことではなく、鉱山で疫病らしい症状が出たから隔離するためか? それとも領軍が来たあとでそうなったから鉱山を封鎖したのか?
式典の期間鉱山の管理をしている者たちに休暇を与えるというのも、倒れる者が多くて業務に支障がでていたのではないか?
「わかった。ノアは引き続き子供たちに水と食料を。じきにアレクも追いついてくるだろう。わたしは近隣の病人から治療する。回復すれば事情も聴けるはずだ」
思っていた状況と違いすぎる。けれど、はっきりしているのはこの地の領主であるドミニク三世は前回の疫病騒ぎ同様、原因を確かめず鉱山を封鎖する方法を取ったのだということ。
……亜人だけが倒れなかった、ということだけでも普通の疫病ではないことがわかるはずなのに。
「え?」
疫病ではなく瘴気当たりなら、自分の魔法で治療ができるはずだ。
ふとバジルたちがいるはずの山の方角を見て、先刻までの悪い気配が消え失せているのに気づいた。
「……あれ?」
カミーユは首を傾げた。
……わたしがやったのって、井戸の浄化だけ……だよね? なんで周りの瘴気が全部なくなってるんだろう。
その後は動ける子供たちに近隣の家を回って、具合の悪い人を見つけてもらった。
浄化のやり方は感覚的に掴めたので、カミーユは治療をしながら住民に話を聞いた。
どうやら倒れる者が目立ち始めたのはここ半月ほどのことらしい。すぐに領軍は鉱山地区からの人の出入りを止めた。けれど、治療を求める者たちがいくら訴えても医者や薬師の派遣をしてもらえなかった。
自分たちは領主に、国王ドミニク三世に捨てられたのだ、と口々に訴えた。
その後領軍の指揮官を捕まえて軍を制圧したアレクと、瘴気がなくなったのに気づいて鉱山奴隷となっていた亜人たちを救出し終えたバジルたちが合流してきた時は、カミーユは大勢の人々に囲まれていた。
「……何があったの?」
アレクが問いかけてきたけれど、カミーユは説明に窮した。
……瘴気を浄化したり病人を治癒したせいで、聖人だと崇められてしまったのだけど。それを言ったらまたお説教されそうな予感がする。
優しく穏やかな声が頭の中で響いた。
『わたしはあなたにダルトワ侯爵家の【祝福】をあげることはできないけれど、わたしとあの人の持つものは全てあなたの中にあるわ。それも祝福よ』
ああ、きっとあれはわたしの母だ。カミーユはそう確信した。
確かに親から伝えられるものはある。それは全ての親が子に与える祝福だ。
わたしは何も持っていないと思っていたけれど、そうではなかった。
……でも、死んだはずの母の声が聞こえるということは、わたしはどうなったんだろう。
「妃殿下。大丈夫ですか?」
ノアの声が間近で聞こえてカミーユは目を開けた。
目の前に井戸があって、どうやらそこでへたり込んだまま動けなくなっていたらしい。
「わたしは……気を失っていたのか?」
「トニが急に動かなくなったって知らせに来たんです。一瞬周りがぱっと明るくなったからおかしいなとは思ったんですけど……」
確かに明るくなったのは覚えている。そして意識が飛んでいたのはほんのわずかな時間のようで、差し込む日差しの明るさもほとんど変わっていない。。
そしてカミーユはさっきまで感じていた井戸の中の悪い気配が消え去っているのに気づいた。
……上手くいった? 浄化できている?
「ノア。子供たちに伝えて。この井戸はもう大丈夫だからって」
立ち上がりかけるとノアが慌てて身体を支えようと駆け寄ってきた。
「だめですよ妃殿下。急に動いたりしては」
「大丈夫だよ」
少しふらついたけれど、立てないほどではない。
「私がここにいた間に何か変わったことは?」
「近くの店に行って来たんですけど、店の人が奥で寝込んでいたりして、かなりの人が体調を崩しているみたいでした。意識のある人に聞いたら、領軍が鉱山を封鎖して仕入れも止まっているのだと……」
……領軍が鉱山に派遣されていたのは、襲撃を警戒してのことではなく、鉱山で疫病らしい症状が出たから隔離するためか? それとも領軍が来たあとでそうなったから鉱山を封鎖したのか?
式典の期間鉱山の管理をしている者たちに休暇を与えるというのも、倒れる者が多くて業務に支障がでていたのではないか?
「わかった。ノアは引き続き子供たちに水と食料を。じきにアレクも追いついてくるだろう。わたしは近隣の病人から治療する。回復すれば事情も聴けるはずだ」
思っていた状況と違いすぎる。けれど、はっきりしているのはこの地の領主であるドミニク三世は前回の疫病騒ぎ同様、原因を確かめず鉱山を封鎖する方法を取ったのだということ。
……亜人だけが倒れなかった、ということだけでも普通の疫病ではないことがわかるはずなのに。
「え?」
疫病ではなく瘴気当たりなら、自分の魔法で治療ができるはずだ。
ふとバジルたちがいるはずの山の方角を見て、先刻までの悪い気配が消え失せているのに気づいた。
「……あれ?」
カミーユは首を傾げた。
……わたしがやったのって、井戸の浄化だけ……だよね? なんで周りの瘴気が全部なくなってるんだろう。
その後は動ける子供たちに近隣の家を回って、具合の悪い人を見つけてもらった。
浄化のやり方は感覚的に掴めたので、カミーユは治療をしながら住民に話を聞いた。
どうやら倒れる者が目立ち始めたのはここ半月ほどのことらしい。すぐに領軍は鉱山地区からの人の出入りを止めた。けれど、治療を求める者たちがいくら訴えても医者や薬師の派遣をしてもらえなかった。
自分たちは領主に、国王ドミニク三世に捨てられたのだ、と口々に訴えた。
その後領軍の指揮官を捕まえて軍を制圧したアレクと、瘴気がなくなったのに気づいて鉱山奴隷となっていた亜人たちを救出し終えたバジルたちが合流してきた時は、カミーユは大勢の人々に囲まれていた。
「……何があったの?」
アレクが問いかけてきたけれど、カミーユは説明に窮した。
……瘴気を浄化したり病人を治癒したせいで、聖人だと崇められてしまったのだけど。それを言ったらまたお説教されそうな予感がする。
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