利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

文字の大きさ
226 / 840
3 魔法学校の聖人候補

415 妖精の森を探しに

しおりを挟む
415

「そうがっかりしなさんな。一か八かとはいえ、過去の記録を頼りに作れば〝エリクサー〟はできることはできるんだし、もう百年も前から王族ぐらいにしか使えない贅沢な薬でしかないよ。勉強は大切だけどね、あんまりムキにならずともいいんだよ」

私の気落ちぶりがひどかったので、エルさんは気を使ってお茶を入れなおしてくれたり、飴菓子を出してくれたりして一生懸命励ましてくれた。

「私も若い頃は色々なことに挑戦して、もちろん成功もしたが、たくさん失敗もしたもんだよ。今、素材がこう減っているのも、過去に私たちが考えなしに採り過ぎたせいもある。こういった薬の素材は簡単に増やせるようなものじゃないのだから、それも仕方がないことなのさ。近いうちに〝エリクサー〟やいくつかの高級魔法薬は幻の薬になるのかもしれないね」

エルさんのいう通り、どの素材を集めるのにもそれは苦労したし、これからもっと希少になることも予想できる。〝エリクサー〟作りは滅びゆく技術なのかもしれない。

だが、ここまできて撤退するのはかなり悔しい。実際、私はかなりの数の〝バージン・ヒーリングドロップ〟を所持しているし、〝聖龍の鱗〟もまぁ提供してもらえるだろう。〝再生の林檎〟に関してもトムタガさんやアタタガ・フライに相談すれば確保できると思う。つまり、私の研究に必要なのは質の揃った〝妖精王の涙〟だけなのだ。

「〝妖精王の涙〟って、偶然にしか見つからないんですよね。なんとかならないですかねぇ」

ボソッとつぶやいた私の言葉に、エルさんが答えてくれた。

「大変な仕事になるけれど、お嬢さんは随分と妖精たちに愛されているようだから、もしかしたら見つかるかもしれないよ」

エルさんの話によると、〝妖精王の涙〟が採れるという、移動する〝妖精の森〟の中にある〝妖精王の大樹〟は、妖精たちの魂のゆりかごだと言われているそうだ。なので、妖精たちはかなり遠くからでもその位置がわかるのだという。

「とは言っても、移動しているわけだから、簡単には見つからないし、人よりは見つけやすいというだけで、探すために動いたとしても見つかる保証はないがねぇ」

エルさんの教えてくれたせっかくの提案だが、確かにこの広い世界にある謎の一点を探すというのは手がかりがなさすぎる。〝人より見つけやすい〟程度では、可能性がゼロではないとはいえ、無謀にもほどがあるだろう。
いくらなんでもセーヤやソーヤに、この世界のどこのあるのかもわからない〝妖精の森〟を探すという雲をつかむような捜索をさせるのは、あまりにも難行苦行すぎて、とてもさせる気にはなれなかった。

ところが、私の横でパクパクお菓子をつまんでいたソーヤは悩む私の顔を見てキョトンとしている。

「お命じ下されば、すぐに探しに行きますよ。そんなに時間はかからないと思いますし。ただし、いくつかメイロードさまにお願いしたいことがありますけれど……」

ソーヤの条件は、セーヤとソーヤのふたりで捜索する。それにアタタガ・フライの利用。そして、私のお菓子をたくさん持っていくことだった。
「できれば、のハチミツなんかもあるといいと思いますよ」

ソーヤが言うには、多くの妖精は甘いものに目がなく、しかも好奇心が強いので、いつも新しい味を求めているそうだ。そこで、私の甘味を交換条件に、妖精たちに聞き込みをしながら捜索の的を絞ってみるというのだ。

「妖精はひとつの場所に住み着いているもの、あちこち移動しているもの、色々いますから聞き込みをすれば、何とかなるんじゃないですかね」

ここではエルさんがいるので《無限回廊の扉》の話はぼかしているが、当然、それで行ける場所を拠点にすることが前提だ。

確かに、私はかなりの数の場所に《無限回廊の扉》をすでに設置しているので、それを拠点にすれば、最小限の移動で広範囲を捜索できるし、現地ではアタタガ・フライによる高速移動ができる。〝妖精の森〟がイルガン大陸もしくは沿海州にあるようなら、見つけることができるかもしれない。

「大丈夫ですよ。妖精たちは欲しいもののためなら何でも喋ってくれますから、メイロードさまの最高の甘味をチラつかせれば、向こうから教えにやってきますよ」

妖精のソーヤがそう言うのだから、きっとそういうものなのかもしれない。

エルさんは、ソーヤを見てびっくりしている。

「自分からこんな風に考えて主人のために意見を言ったりする妖精は初めて見たわ。しかも他の妖精たちと交渉できるなんて、本当にご主人思いの素晴らしい妖精を連れているのね。うらやましいわ」

「はい、自慢の子たちです」

私はソーヤを褒められて嬉しくなってしまった。この子たちは、何も言わなくても私の手助けをしようと、いつも考えてくれている。本当にいい子たちなのだ。悪食でも髪フェチでも、全然構わない。

長居をしてしまったが、また遊びにきますと約束して、私は学校へ戻ることにした。
ありがたいことに、エルさんはもし実験ができるようになったら、道具についての相談に乗ってくれると約束してくれた。

善は急げだ。可能性が高いとソーヤが言うのなら、早速、捜索のための準備に入ろうと思う。
私は、帰宅するとすぐアタタガたちの森へ出向き〝再生の林檎〟の提供、そしてアタタガ・フライをしばらく借りたいとお願いした。森の長老たちは快くどちらも引き受けてくれ、収穫時期の揃った〝再生の林檎〟を《無限回廊の扉》の中に届けると約束してくれた。

私は皆に礼を言って、何をお返しすればいいかと聞いたが、皆一様にこんなことではまだまだお返しにもなっていないと言って、 まるで相手にしてくれなかった。仕方がないので、これが片付いたらみんなでご馳走を食べて宴会をしましょうと約束して、戻ることにした。

その後、《異世界召喚の陣》を使い、様々な種類の蜂蜜と黒糖に水飴、金平糖に落雁、甘い一口サイズのフルーツゼリーなどを大量に購入し、マジックバッグの中に詰め込んだ。

そして、その甘味満載のマジックバッグを抱えたふたりは、私に笑顔で〝行ってきます〟と告げ、それぞれ別の《無限回廊の扉》から出ていった。妖精たちは昼夜関係なく活動しているので、しばらくは出ずっぱりで捜索するらしい。

「無理はしちゃダメだからね。絶対ダメだからね!」

私は子供を送り出す母のような心配顔で、ふたりの旅立ちを見送った。
しおりを挟む
感想 3,006

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。