工藤くん、恋のバグは直せますか? 〜一夜の過ちから、同期の溺愛が始まりました〜

有明波音

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噂の同期は、送り狼?

2.

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 確かに、工藤は仕事に対してストイックというか、夜遅くまで会社に残っているのをよく見かける。こうやってわざわざお客さまの声を聞きに来る、というエンジニアも工藤くらいだ。

 万が一システムにバグが見つかっても、後回しにせずすぐに対応してくれる。

 工藤のことばかりが頭を占めていたけれど、ふと、早坂さんが何か言いかけていたことを思い出した。


「早坂さん、そういえばさっき何か言いかけてましたよね?」
「あ? あぁ、今日飲みにでも行かない? って言おうとしたけど、何でそんなに荷物多いんだ? 泊まり?」
「あー……まぁ、そうですね。あと、今日は珍しく同期会なんですよ」


 足元のボストンバッグに視線をやり、苦笑いになる。確かに『お泊まり』というのは間違いない。これではまるで、『同期と泊まる』かのような言い方だ。
 でも本当は違うし、理由も全くポジティブなものではないから、つい歯切れが悪くなってしまう。


「へぇ、同期会なんて珍しいな。つか、同期ってまだ残ってんの?」
「はい、私入れて5人残ってますよ。結構多いですよね」
「本当だな、やっぱインターンから新卒で入った連中は長いよなぁ。他は2、3年でどんどん入れ替わっていくのに」
「ですね。それもあって余計、結束力は強いかもしれないです。やっぱり、同期は大事にしないとですね!」

 
(……まぁ、結束力が強いといっても、工藤はほとんど自分のこと喋らないし。プライベートについては何も知らないんだけど)

 
 自分にツッコミを入れながら、ははと乾いた笑いを送る。そうして雑談も一区切りついた私たちは、再び目の前の仕事に取り掛かった。久しぶりの同期会だから、今日は絶対に定時で上がりたい。
 私は手元の缶コーヒーをぐいっと飲み、集中して仕事をこなしていった。


***


「よし、終わった! 早坂さん、お先に失礼します!」
「おーう、お疲れ~同期会楽しんでな~」


 早坂さんに見送られ、私はひと足さきに立ち上がる。その様子を遠目で見ていたのか、同期の夏菜子がこちらに近づいてきた。

 
「波瑠、もう上がれそう?」
「うん、行く行く。夏菜子ももう行ける?」
「もちろん! あ、他には誰がいるかな? えーっと……」

 
 夏菜子がオフィスを見回していると、人事部にいるサクこと、咲田もやってきた。


「お疲れ~俺ももう行ける」
「サク、お疲れ! あとはー……」
「俺も」
「わぁっ!!」


 後ろからにゅっと現れた工藤に驚き、夏菜子は大きな声を出した。


「工藤~びっくりした~! いつの間にいたの!?」
「え、今来たばっかり。あとは吉良きらか」
「うん、あ、吉良リンは後から来るって。じゃあ先に四人で向かおっか」
「オッケー」


 その後は幹事の夏菜子を先頭に、予約している居酒屋に向かってみんなで歩き始めた。最初は四人並んで喋っていたものの、道が狭くなり、自然と二人ずつに分かれて歩き始める。
 前を夏菜子とサクが、後ろに私と工藤が並ぶ形で歩いていた。


「青山さ、なんか今日荷物多くない?」
「え? あー……そうなの、かなり荷物入ってて」
「何、どっか泊まるの?」


 工藤も特に意味はなく、ただ何の気なしに聞いているのだろう。前髪と眼鏡でよく表情は分からなかったけれど、特にいつもと変わらない様子で尋ねられる。
 早坂さんに聞かれた時は曖昧に答えたのに、なぜか工藤にはするりと本当のことを喋っていた。


「実は、同棲してた彼氏が他のひと連れ込んでてさー……もう、最悪だよ。まぁ、同棲というかあっちが転がり込んでただけで。仕事してもすぐお金使っちゃうから、今は手持ちが無いって言ってて。でも私は顔も見たくないし、ひとまず当面の荷物だけ持ってきた感じ」


 はは、と笑いながら工藤の方を見る。浮気されて帰る場所がないなんて、クールな工藤でも笑ったりするかもしれない。そんな予想に反して、工藤はちらりと一瞥しただけだった。
 『笑ってくれすらしないかぁ』と、打ち明けたことを後悔した時だった。
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