工藤くん、恋のバグは直せますか? 〜一夜の過ちから、同期の溺愛が始まりました〜

有明波音

文字の大きさ
2 / 73
噂の同期は、送り狼?

1.

「お疲れ様ですー! 青山、帰社しました!」
「お疲れ様です」
「おう、お疲れ~」
 
 今日も無事にアポイントを終え、渋谷にあるオフィスに戻ってきた。私、青山波瑠は、とあるスタートアップでSaaS(ソフトウェア)の法人営業を担当している27歳だ。
 最初は小規模だったこの会社も、短期間で急成長を遂げてきた。インターンからそのまま入社した私は、最初は何でも屋のような立ち位置だったものの、今では多くのクライアントの担当を任されている。


「青山、新機能の提案どうだった? 先方の感触教えて」


 オフィスに戻ってきて早々、先輩の早坂さんに声をかけられた。一緒に営業として矢面に立っており、いつも密に情報交換をしている。


「はい、感触は良かったんですけど、ちょっとここのUIは分かりづらそうなんですよね…‥」


 そう言って、早速パソコンを開けて早坂さんに画面を共有する。
 営業といっても、ただ売るだけじゃない。ソフトウェアのデザインで分かりづらい所があれば、それを社内でフィードバックするのも私たちの重要な役割だ。
 

「あー……これは盲点だったな。でも、色味を少し変えるだけでも目立ちそうじゃないか? これに関しては、デザイナーかPdMと議論しても良さそうだな」
「はい、念のため他のお客様にもヒアリングして、今度の定例に議題としてあげますね」
「おう、そんでお前、今日って……」
「青山」


 突然、後ろから声をかけられ、私も早坂さんもびくっと反応する。振り返れば、そこには同期のシステムエンジニア・工藤が立っていた。全く気配がしなかったせいか、早坂さんも目を見開いている。


「く、工藤……! お前、後ろにいたのか!? 全然気づかなかったんだが!」
「はい、いました。すみません、驚かせて」
「いやいやいや、つーかお前、客先に行かないとはいえ、もっさりし過ぎじゃないか?」
「早坂さん……! ちょっと、言い過ぎです!」


 相変わらず言いたいことをズバズバ言う早坂さんに対し、流石にそれは言い過ぎだろうと間に入る。実際、工藤は『もっさりしてる』という言葉がマッチするくらい、前々から垢抜けないのだ。

 黒髪に長めの前髪、黒縁眼鏡に白いパーカー、そしていつも猫背という……。

 いつもジャケットを着ている私たち営業マンとは、真逆の装いだった。


「あ、工藤、私に何か用があったんじゃない?」
「あぁ、そう、今新機能の話が聞こえたから。バグとか見つからなかった?」
「うん、それは今の所大丈夫そう。あー……でも、ここのUIがちょっと分かりづらそうで」
「ん、どれ?」


 本来はデザイナーやPdMに相談すべき内容を、エンジニアの工藤に相談するのってどうなんだろう? そんな不安もあったけれど、当の工藤は前のめりでパソコンと向き合っている。きっと、迷惑ではないのだろう。
 クライアントに言われたことをそのまま工藤に伝えれば、「ん、分かった」と何かを納得したように頷いた。


「その配置だと、確かにユーザー体験があんまり良くないな。色変えたくらいじゃ意味無い気がする。それ、最優先で対応するわ」
「えっ、良いの?」
「あぁ、チームで調整は必要だけど、これは早くやった方が良いでしょ」
「ありがとう、工藤……」


 工藤はぴらぴらと手を振って、そのまま自身のデスクの方に戻っていってしまった。今度定例に上げようと思っていた内容が早々に解決するとなり、隣にいた早坂さんも驚いている。


「え、なにあれ、工藤シゴデキじゃん。やっぱ、工藤のあの噂って本当なんかな」
「噂ですか?」
「青山の同期で新卒枠で入社してるけど、社長がヘッドハンティングしたとか。実は天才エンジニアで、なんなら学生の頃シリコンバレーで起業した経験があるとか」
「えぇぇ? そんな噂があるんですか? 全然現実味がないんですけど」
「だよなー」


 そう言って、早坂さんは「ないない、うちの会社にいる理由が無いしな」と呟き、その噂をはなから信じていない様子だった。再び工藤の方を見れば、モニターに映し出されているコードをじっと見ている。
感想 4

あなたにおすすめの小説

あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。 ※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。 書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。 ――――――――――――――――――― ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。 傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。 ―――なのに! その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!? 恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆ 「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」 *・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・* ▶Attention ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

恋は秘密のその先に

葉月 まい
恋愛
秘書課の皆が逃げ出すほど冷血な副社長 仕方なく穴埋めを命じられ 副社長の秘書につくことになった 入社3年目の人事部のOL やがて互いの秘密を知り ますます相手と距離を置く 果たして秘密の真相は? 互いのピンチを救えるのか? そして行き着く二人の関係は…?

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

【完結】エリート産業医はウブな彼女を溺愛する。

花澤凛
恋愛
第17回 恋愛小説大賞 奨励賞受賞 皆さまのおかげで賞をいただくことになりました。 ありがとうございます。 今好きな人がいます。 相手は殿上人の千秋柾哉先生。 仕事上の関係で気まずくなるぐらいなら眺めているままでよかった。 それなのに千秋先生からまさかの告白…?! 「俺と付き合ってくれませんか」    どうしよう。うそ。え?本当に? 「結構はじめから可愛いなあって思ってた」 「なんとか自分のものにできないかなって」 「果穂。名前で呼んで」 「今日から俺のもの、ね?」 福原果穂26歳:OL:人事労務部 × 千秋柾哉33歳:産業医(名門外科医家系御曹司出身)

偽装溺愛 ~社長秘書の誤算~

深冬 芽以
恋愛
あらすじ  俵理人《たわらりひと》34歳、職業は秘書室長兼社長秘書。  女は扱いやすく、身体の相性が良ければいい。  結婚なんて冗談じゃない。  そう思っていたのに。  勘違いストーカー女から逃げるように引っ越したマンションで理人が再会したのは、過去に激しく叱責された女。  年上で子持ちのデキる女なんて面倒くさいばかりなのに、つい関わらずにはいられない。  そして、互いの利害の一致のため、偽装恋人関係となる。  必要な時だけ恋人を演じればいい。  それだけのはずが……。 「偽装でも、恋人だろ?」  彼女の甘い香りに惹き寄せられて、抗えない――。

普通のOLは猛獣使いにはなれない

ピロ子
恋愛
恋人と親友に裏切られ自棄酒中のOL有季子は、バーで偶然出会った猛獣(みたいな男)と意気投合して酔った勢いで彼と一夜を共にしてしまう。 あの日の事は“一夜の過ち”だと思えるようになった頃、自宅へ不法侵入してきた猛獣と再会し、過ちで終われない関係となっていく。 普通のOLとマフィアな男の、体から始まる関係。