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噂の同期は、送り狼?
4.
しおりを挟む(工藤、庇ってくれたんだ……)
そんな事実に驚きながら、私は気持ちを切り替えて目の前のお酒をぐいっと喉に流し込んだ。
***
「おい、青山。大丈夫か?」
「んー……ごめん、いま何時?」
「23時過ぎたところ。サクがまとめて会計してくれてて、成宮と吉良もそれについて行った。青山は結構飲んだよな、 立てる?」
「うん……ごめ、ありがと……うわっ」
立ちあがろうとした時に体制を崩し、すかさず手を出した工藤に寄りかかる形になる。そのまま倒れてしまうかと思いきや、意外にも力強く支えてくれて倒れずに済んだ。
予想以上に近く、工藤のパーカーから漂う石けんのような香りがふわりと鼻を掠めた。
「大丈夫か?」
「う、うん。ありがとう」
「途中まで肩貸す。あとー……宿泊先までちゃんと送り届けるわ」
「え、良いよ! もう終電も近づいてるし」
「いや、うちそんなに遠くないから。それにこの状態の青山を放置するなんて、俺の良心が痛む」
「……ありがとう」
工藤の肩を借りて、ゆっくりと歩き始めた。他の同期三人は先にビルの出口で待っており、出来上がった私と体を支える工藤が現れて驚いていた。
「波瑠、出来上がっちゃってるけど大丈夫!? あ、今彼氏と喧嘩してるからどっか泊まるんだっけ? 工藤、波瑠が今日泊まる場所って知ってる?」
「あー、うん。俺が送ってくよ」
「本当に? 私も一緒に行こうか?」
心配した様子の吉良リンが、名乗りを上げてくれる。とはいえ、彼女の家はここから結構離れていたはずだ。私を送ってからでは、終電に間に合わなくなってしまう。断ろうとすると、工藤の方が先に口を開いた。
「いや、俺んちすぐ近くだし、大丈夫。みんなもう終電ギリギリだろ? まさか、本当にオールすんの?」
「えー、まだまだオールする体力はあるけど! まぁ、今週は新機能のリリースもあったりで、結構みんな疲れてるよねぇ。本当に工藤に任せちゃって大丈夫?」
「あぁ」
「工藤なら絶対送り狼にならないだろうし、安心して任せられるよ~」
夏菜子はにこにこと笑顔で断言している。サクと吉良リンもそれには同感らしく、うんうんと頷いていた。
工藤なら絶対に何も起きないだろうという、この絶大な安心感はどこから湧いてくるのだろう? とはいえ、私もみんなと同じ考えだった。
「波瑠も、工藤にお願いしちゃって大丈夫?? 明日休みだから、ゆっくり休んでね?」
「……うん。ありがとう、ごめんねみんな」
駅の方に向かって歩き始めた夏菜子とサク、吉良リンに手を振り、三人の背中を見届ける。少しして、隣にいた工藤が「よし、行くか」と呟いた。
再び流れるように、私の手からボストンバッグを奪い取った。
「足元ふらついてて心配だから、俺が持つ」
「うぅ……何から何までありがとう、工藤」
歩き始める前に近くのカプセルホテルを検索し、ひとまず歩いて向かうことにした。
夜風がさぁっと肌を撫でて、火照った体には心地良い。幾分か、酔いが引いてきたような気がする。外ということもあって、開放的な気持ちになっていた。
「ねぇ工藤、さっき夏菜子が元カレについて踏み込もうとした時、庇ってくれたでしょ?」
「ん? いやーあれは無いだろと思って。余計なことした?」
「ううん、正直助かった。でも、話の矛先が工藤に向いちゃってごめんね?」
そう言って工藤の方をちらりと見れば、「いや、気にすんな」とだけ呟いて、相変わらずその横顔は何を考えているのか分からない。
それでも、私はいつもなら聞かないようなことを工藤に投げかけてしまった。
「工藤はさ、誰かと付き合ったことあるの?」
「え、なに急に……まぁ、少しは? あれを付き合ったというのか、よく分からんけど」
「そっかぁ……工藤ってそういう話一切しないじゃん? というか、あんまり自分のことは喋らないっていうか」
「まぁ、俺の話聞いてもつまんないだろ」
「そんなことないよ! そんな風に思ってたの?」
「冗談。青山って、本当優しいよな。これが成宮だったら『確かに、工藤つまんない~』とか言うだろ」
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