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危険な魔法
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しおりを挟む「い~や~だ~」
お昼を食べ終わってセオが宿舎に戻るのを見送るためにみんなで正門に集まっていた。
セオが帰ってしまうことを見送りに来てようやく理解したディノはセオにしがみついて離れない。更にその腰にはサーシャとロイとライが抱きついていた。
セオの方は今朝伸ばした手をディノに叩かれた時とは違う嬉しさを含んだ困り顔だ。
「私が『内緒』という理由がわかるだろう?キミにあれを振り払えるかい?」
ノートンさんの耳打ちは最もな話だ。でもあんなふうにモテモテになるは羨ましい。
「無理ですね。」
与えられる事が当たり前になってしまうとそれを失うのが辛いのは俺にもわかる。今までは『またきてね。』と笑顔でサヨナラできたのにこの10日間セオと過ごした日々は良くも悪くも子供達には長すぎた。
「ほーら。セオさん帰れないでしょ?」
マリーがなだめても今朝の俺にしたようにしがみついていた。
「ディノおいで。セオさんまた来てねってサヨナラしよう?」
俺の手もじっと見てからプイってそっぽを向かれてしまった。今朝はあんなにひっついてたくせにやっぱりセオがいいなんてちょっと、いやかなり悔しい。拗ねた俺は意地悪しちゃうんだからな。
「そっかぁディノはセオさんが帰っちゃうの嫌なんだね。それなら俺がセオさんの代わりに宿舎に帰っちゃおうかなぁ。」
半分くらい本当にしょんぼりしてそう言えばそれにセオが悪ノリしてきた。
「そうですね、じゃあそうしてもらえますかトウヤさん。」
それに慌てたのは足元にいた子供達だった。
「だめ!とおやはどこにもいっちゃだめだもん。」
「ろいはとうやがいい。」
「らいもとうやがいい。」
ぎゅうって腰にしがみついて俺を選んでくれた3人に顔が緩む。
「私も。」
「お、俺も。」
年長組はディノに見せつけるように両側から俺に抱きついてきた。そんなみんなの様子にディノの顔が面白い事になっていた。
「でぃのもとおやがいい。」
ここまでしてやっと俺へと伸ばしてくれた手を握ろうとしたらセオがそれを遮ってしまった。
「なんだよ俺に帰って欲しくないって言っただろ?」
ディノはセオに片手で両方のほっぺを一掴みにされて弄ばれている。めちゃめちゃ可愛い。
「ちがうもん、とおやがいいもん。せおもおかえっていいよ。」
「ひっでえ!」
小さな手のひらを握ってセオの胸をグイグイと押しながら開けられない口でディノが言い放った言葉にセオが子供みたいな顔で笑った。
そんないい顔をされたらズルして俺を選ばせたのも勝ち誇れないどころか完敗だ。
「じゃあみんなでセオさんに『いってらっしゃい』ってしようか。」
「いってらっしゃい?」
「そうだよ、そうしたらセオさんも『ただいま』って帰ってきてくれるからね。」
セオから俺の腕の中に受け取ったディノにそう提案すれば目をキラキラさせて大きく頷いた。
結果、子供達の『いってらっしゃ~い』の大合唱にセオは照れくさそうにして宿舎へと戻って行った。
「いやぁ実に可愛らしいね。チビちゃん達も小鳥ちゃんも。」
「わぁっ!!」
突然耳元で聞き慣れない声がして驚いた俺の声にもちろんみんなが驚いた。
「ああ、ごめんごめん。認識阻害魔法掛けていたの忘れていたよ。」
パチンっと指を弾く音がした途端現れたワインレッドのローブを被った長身のその人に子供達がびっくりして一斉にノートンさんの後ろに隠れた。
セオと入れ替わるように現れたのは王国魔法士のルシウスさんだった。
「はじめまして、私はルシウスと申します。以前から『桜の庭』の防御魔法には大変興味がありまして今回はこの様な機会を頂いて光栄です。ノートン先生、みなさん、よろしくお願いします。」
お城で会った時よりも堅苦しく感じる口調でそう挨拶をした後、ノートンさんとルシウスさんは執務室へ行ってしまい、俺と子供達はプレイルームでいつものお昼寝と勉強会を始めた。
「なぁ、さっきの赤紫色のローブを着たルシウスって人って王国魔法士だろ?」
「ノートン先生だって。疑ってたわけじゃないけどノートンさんて本当に王国魔法士だったのね。」
「何しに来たんだろ。先生って言うくらいだからノートンさんに何か聞きに来たのかな?」
「そうかも、王国魔法士が教わりに来るなんてノートンさんて凄いのね。」
「とおや、つづきは?」
突然の訪問者に興味深々な年長組の会話に気を取られいた俺は、サーシャから絵本の続きを催促されてしまった。
「ごめんね、えっと…『東の山の向こうには』」
「ちがうよ『おはなのくにのおひめさまは』からだよ。」
「ごめんごめん。『お花の国のお姫様は……』
読み聞かせをするようになって俺も随分文字を覚えたけれど毎日繰り返すうちに子供達も随分文字が読めるようになったとノートンさんにお礼を言われた。来年になったらサーシャとロイとライが勉強を始めるのに教えやすそうだって。
この国の新年の区切りは春の1月。一緒に過ごせるのがあと一ヶ月と半分近くになってしまったマリーとレインを『桜の庭』で窮屈にさせているこの状態がルシウスさんが来てくれた事で1日も早く解決して欲しい。
小さい子組がお昼寝に入って俺もマリーとレインの勉強のテーブルについた途端2人からルシウスさんの事を聞かれた。
「なぁトウヤはさっきの人来るの知ってたか?」
「何しに来たか知ってる?」
2人が知りたがっているユリウスさんは当たり障りのない挨拶だった。あれが子供達の為に言葉を選んでくれたのだったらそれを台無しにする訳には行かない。
答えを迷っているところへノートンさんがルシウスさんを連れてプレイルームへやって来た。
「今の時間は皆こちらで年上の者は勉強を。年少の子等はお昼寝をしております。」
「ノートン先生、私に敬語はやめてくださいとお願いしたはずです。」
「ではルシウス君も『先生』はやめてもらえないだろうか。」
「それとこれとは次元が違います。私は教えを請うのですから『ノートン先生』とお呼びします。」
困惑するノートンさんとは正反対にニコニコと機嫌の良さげなルシウスさん。そんな2人のやり取りに俺達はあっけに取られてしまった。もしかしなくてもノートンさんてすごい人?
「改めましてこんにちは。君たちのお名前は?」
「レインです。」
「マリーと云います。」
「私はルシウスだしばらくよろしくね。」
ノートンさんより随分と長身のルシウスさんに話しかけられて緊張した面持ちの2人が新鮮だ。
「トウヤくん、ルシウス君がしばらく滞在することになったから急で済まないがゲストルームを使えるようにしてもらえないかな。」
「わかりました。あ、でもシーツをかければすぐにでも使えますよ?」
『しばらく』が泊り込みのしばらくだとは思ってもみなくてびっくりした。でも元々使わない部屋も普段から風を通すようにしているし休暇の前に一度、戻ってきてからは不安を紛らわせるため手当たり次第掃除していたから今使えないのは普段立ち入らない別館くらいだ。
「さすがトウヤ君だね。では今から案内して貰ってもいいかい?」
「はい。」
手に持ってた絵本を本棚へ戻して、来たばかりのルシウスさんと執務室の隣にあるゲストルームへ戻ることになった。
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