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「…ここをストーキングしてた人、黙秘してるみたいなんだけど」
スナップエンドウとそら豆とグリンピースを手際よくゆでながら、
千晃くんがそれとなく話し始めた。
「会社への侵入は、『女神に導かれた』って言ってるらしい」
セキュリティゲートは一定時間作動していなかったことが確認され、
緑川さんはその隙に会社に侵入したらしい。
というか。
緑川さんが侵入するために、システムが切られていた。
過去に、更衣室や駐車場の防犯カメラの機能が、一時止まっていたのと同じように。
「CEOの娘さんも、どの車に細工するかは指示があった、って供述しているみたいなんだ。SNSで連絡を取り合っていたらしいんだけど、それが誰かは知らないらしい」
つまり。
会社のシステム事情に詳しい共犯者がいて、セキュリティシステムを操作している間に事件が起きた、と。
「ロッカーに閉じ込められたことがあったんだって?」
千晃くんが過去の私をいたわるように頭を撫でてくれた。
「CEOはその犯人と関係があるんじゃないか、…社内の人間のやっかみが長じているんじゃないか、って疑っている」
『みんな思ってますよ、いない方がいいって』
香恋ちゃんに言われるまでもない。
見えない悪意はずっとある。
でも、そんなに。
そんなに疎まれているのかと思うと、やっぱり辛い。
「気づいたことがあったら、小さなことでも教えて」
千晃くんにうなずきながら、
ずっと引っかかってることを考えていた。
『ここちゃん、イベント会議、地下のC会議室だって』
伝言ミス。
私が聞き間違えたのか、先輩が聞き間違えたのか。
些細なミスだけど、それがなければ私は地下に行かなかった。
『女神に導かれた』
でも。そもそも。
伝言ミスじゃなかったら?
イベント会議の主催者は、会議室変更について、事前にメールでも送ったという。
けれど、どんなに履歴を見ても届いていなかった。
メールの不具合は。
前にもあった。
トイレのドアノブが壊れているのを知らなくて、閉じ込められた。
あの時は、千晃くんが助けてくれたけど、…
たまたま、なのか。
それとも?
『どの車に細工するかは指示があった』
社用車の安全運転管理者は課長だけど、使用情報は3課内で共有している。
私が乗る車は、3課の人は全員知っていた。
『…ホント、悪い男ですね』
甘えるように続けられた声は。
ルームロッカーの中で聞いた嘲笑するような声と。
似てはいなかったか。
いや、でも。そうすると、…
疑心暗鬼になってしまい、そんな自分が嫌になる。
どこまでが偶然で、どこからが故意なのか分からない。
何が本当で何が嘘なのか分からない。
疑いたくないのに。
全てが罠だったようにさえ思える。
全て。
『俺が佐倉に本気になると思うか?』
チーフは。本当は。
胃の底を冷たい手で撫でられているような、得体のしれない不安を感じて、
小さく身震いすると、
「まだ、…せないな」
千晃くんがかすかにつぶやいて、私の頭をそっと抱きしめてくれた。
スナップエンドウとそら豆とグリンピースを手際よくゆでながら、
千晃くんがそれとなく話し始めた。
「会社への侵入は、『女神に導かれた』って言ってるらしい」
セキュリティゲートは一定時間作動していなかったことが確認され、
緑川さんはその隙に会社に侵入したらしい。
というか。
緑川さんが侵入するために、システムが切られていた。
過去に、更衣室や駐車場の防犯カメラの機能が、一時止まっていたのと同じように。
「CEOの娘さんも、どの車に細工するかは指示があった、って供述しているみたいなんだ。SNSで連絡を取り合っていたらしいんだけど、それが誰かは知らないらしい」
つまり。
会社のシステム事情に詳しい共犯者がいて、セキュリティシステムを操作している間に事件が起きた、と。
「ロッカーに閉じ込められたことがあったんだって?」
千晃くんが過去の私をいたわるように頭を撫でてくれた。
「CEOはその犯人と関係があるんじゃないか、…社内の人間のやっかみが長じているんじゃないか、って疑っている」
『みんな思ってますよ、いない方がいいって』
香恋ちゃんに言われるまでもない。
見えない悪意はずっとある。
でも、そんなに。
そんなに疎まれているのかと思うと、やっぱり辛い。
「気づいたことがあったら、小さなことでも教えて」
千晃くんにうなずきながら、
ずっと引っかかってることを考えていた。
『ここちゃん、イベント会議、地下のC会議室だって』
伝言ミス。
私が聞き間違えたのか、先輩が聞き間違えたのか。
些細なミスだけど、それがなければ私は地下に行かなかった。
『女神に導かれた』
でも。そもそも。
伝言ミスじゃなかったら?
イベント会議の主催者は、会議室変更について、事前にメールでも送ったという。
けれど、どんなに履歴を見ても届いていなかった。
メールの不具合は。
前にもあった。
トイレのドアノブが壊れているのを知らなくて、閉じ込められた。
あの時は、千晃くんが助けてくれたけど、…
たまたま、なのか。
それとも?
『どの車に細工するかは指示があった』
社用車の安全運転管理者は課長だけど、使用情報は3課内で共有している。
私が乗る車は、3課の人は全員知っていた。
『…ホント、悪い男ですね』
甘えるように続けられた声は。
ルームロッカーの中で聞いた嘲笑するような声と。
似てはいなかったか。
いや、でも。そうすると、…
疑心暗鬼になってしまい、そんな自分が嫌になる。
どこまでが偶然で、どこからが故意なのか分からない。
何が本当で何が嘘なのか分からない。
疑いたくないのに。
全てが罠だったようにさえ思える。
全て。
『俺が佐倉に本気になると思うか?』
チーフは。本当は。
胃の底を冷たい手で撫でられているような、得体のしれない不安を感じて、
小さく身震いすると、
「まだ、…せないな」
千晃くんがかすかにつぶやいて、私の頭をそっと抱きしめてくれた。
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