時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

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変わらない。
千晃くんの優しい腕。

千晃くんの腕がなかったら、
確実に闇に飲み込まれていた。

この腕は、最後の砦。

千晃くんの腕に触れようと手を伸ばしかけた時、
唐突にドアチャイムが鳴って、心臓が飛び跳ねた。

無断で触ろうとしてごめんなさいっ
邪な気持ちはありません‼

「…誰だろ」

千晃くんが私の頭を軽く撫でてからインターフォンに向かう。

ドッキドキしている心臓をなだめながら後に続き、
インターフォンのテレビカメラをのぞき込むと、

「来たよ~」

髪の短いモデルさんのような女性が、
にこにこしながら手を振っていた。

「わぁ~、イケメンが増えてる~~~」

久しぶりにお会いした茉由子さんは、
千晃くんを見て目を輝かせると、わかりやすくテンションを上げた。

片手に大量のビール、片手にるうちゃんを連れている。

「今日は喧嘩したんじゃないよ。この前お世話になったから、お礼に差し入れようと思って」

と言いながら、目は千晃くんに釘付けで、

「…かっこ良すぎる。雅に勝ち目あるかなぁ」

リビングに腰を据えると、さっさと持ってきたビールを開け始めた。

「…チアくん」

るうちゃんは、千晃くんを見ると衝撃を受けたように固まり、
大きな瞳を落ちそうなくらい見開いて、ひたすら見つめ続けた結果、

「けっこんしてくだたい」

速攻でプロポーズした。

やるな、2歳児。

「…ありがとう」

千晃くんは優しくるうちゃんを抱き上げて、少しだけ寂しそうに微笑んだ。

「千晃くん、美味しい―――っ」

「ホント美味しい。いや、本当に、マジで。お婿に来てよ、千晃くん」

茉由子さんの許可を得て、チーフを待たずに夜ご飯が始まった。

千晃くんが作ってくれた豆ちらしが美味し過ぎて感動していたら、
茉由子さんも同じだったらしく、絶賛しながらおかわりしていた。

「愛があれば年の差なんて関係ないわ」

このモデル体型のどこに入って行くんだろうと思われるほど、
豪快にビールも空けていく。

るうちゃんは千晃くんの膝の上を陣取って、

「おまめ~」

上機嫌で食べている。

すごいなあ。可愛いなあ。
何しても可愛いっていいなあ。

見てるだけで和む。

まあ。
見てるだけだから和んでいられるのかもしれないけど。

『世界一可愛い俺の姪っ子』

チーフが言うのも頷ける。

「雅、遅~い。働き過ぎだよねえ? 独りだし、心配~。あ、でも、ここちゃんがいるか! あ~でも、千晃くんがいるか~」

茉由子さんはお酒が回ってきたらしく絶好調にしゃべり続け、
るうちゃんは千晃くんに抱っこされて、幸せそうに寝息を立て始めた。

夜も更けてきた。のに。
チーフが帰ってこない。

まだ、仕事、終われないんだろうか。
まだ、まりな先輩と一緒なんだろうか。

「まだ、忘れられないのかな、雅、…」

ただでさえ思考が迷走しているというのに、
茉由子さんのつぶやきも気になる。

これ以上、余計なことを考えてしまう前に。

チーフ、早く。
帰ってきて。
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