Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

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「えーっと、少々お待ちください」

五星ホテルは車で5分ほどの距離にあった。

真夜中にいきなり乗り込まれて、従業員さんたちは動揺しながらもオーナーみたいな偉い風の人たちを呼びつけてくれたけど、地下通路の存在を知っている人はいないようだった。

消防隊員に無言の失望感が漂い、東堂秘書が自分の記憶に自信を無くしかけた時、杖を付いた長老っぽい人が現れた。

「…これです」

その人は全てを承知しているようで、古びた鍵を差し出し、

「ついてきてください」

案内してくれた。
東堂秘書が密かにどや顔をして見てきたので、

「さすがおじ様からの信頼が半端ない東堂さん!」

と分かりやすくおだてておいた。…知らんけど。

長老に続いていくつものセキュリティゲートをくぐると、一般の人はまず入れないような奥まったところに、特別感漂う部屋があった。

秘められた個室って感じのゴージャスな部屋。

ここは一体だれが何のために使うんだろうか、と微かな疑問が頭をよぎる。

東堂秘書を見ると、興味津々丸出しで、絶対疑問に答えてもらえないことが分かった。

長老が壁を探ってスイッチを押すと、部屋の中央に置かれた天蓋付きのベッドが音もなく動いた。

その下に敷かれていたカーペットには目を凝らさないと分からないような切れ目が入っており、長老が厳かにカーペットをめくると、板張りの床に重そうな引き戸が現れた。

隠し扉、…

なんかファンタジーっぽい。
現実にこんなものがあるんだ、とちょっと感心すらしてしまう。

長老(あくまで推定)が鍵を差し込んで扉を上に引っ張ると、やや鈍い音をたてながら人ひとりがやっと通れるほどの入り口が開き、暗い穴の中に奥へと続いていく階段が見えた。

「行くぞ、のい子」

機敏に地下に降りる消防隊員に続き、どさくさに紛れて地下に進んだ。

急にフレンドリーになった東堂秘書に呼ばれ、暗く湿った狭い通路をどこまでも降りて行った。

「これってなんか、地下鉄の通路みたいじゃないですか?」

ホテルの隠し扉からひたすら続く細い階段を降りると、急に開けた通路に出た。
電車やホームは見当たらないけど、足元に線路のようなものが見え隠れしていて地下鉄を連想させる。

「廃線になった地下鉄の通路に地下道を繋げたんじゃないか」
「…なるほど」

普通に生きているとホテルの隠し扉をくぐったり地下鉄の通路を歩いたりすることはまずない。
世の中知らないことばかり。

「地下鉄会社と連絡取れたか」
「どこか救急車の乗り入れが可能なところはあるか」

消防の方々があちこちに連絡を取りながら、すごい速さで進んでいくので見失わないように必死でついて行く。

「のい子っ、…社長がっ、ご無事だったらっ、私のこの功績を必ずお耳に、…」

結構な距離を走って、東堂秘書がだいぶ後ろからなんかせこいことを言い始めた時、

「誰かいる!」

消防隊員の声と同時に、ライトの輪の先が微かに人の姿をとらえた。

「奏くん‼」

本能がそう告げていた。
気づいたら消防の方々を追い抜き、人影に飛び掛かりそうな勢いで駆け寄っていた。
近寄ると、何人か倒れているのが分かる。

奏くんとお父さん、和泉さんと、璃乙くん。

奏くん、いた‼︎
みんな、連れてきてくれた…‼︎

倒れているみんなは土ぼこりにまみれてぐったりと動かない。

「奏くん? 奏くん、…っ!」

奏くんの傍にひざまずいて、そうっと身体を揺り動かす。

奏くんのきれいな顔は土に汚れ、洋服からは焦げたような匂いがする。
どんな危険な目に遭ったんだろうと思うと、胸が締め付けられて勝手に涙が出てくる。

「…い?」

ぽたぽた落ちる涙が奏くんの顔を濡らすと、奏くんがわずかに瞼を動かして、あの地球色の美しい瞳をのぞかせた。

「奏くん‼」

呼びかけると奏くんが腕を力なく動かして、

「お前、また、…泣いて、…」

かすれた声でささやくから、涙が溢れて止まらなくなる。

「奏くん! 奏くんっ‼」

奏くんの手を取って胸に抱きしめる。
温かくて優しくてどんな時でも私を救ってくれる大好きな大好きな奏くんの手。

「のい、…」

奏くんの美しい瞳が私を映して揺らめきながら、ゆっくりと閉じていく。

「…愛してる」

甘く震える大好きな声が幻のように優しく告げて、そのまま奏くんが動かなくなった。
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