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序章 清掃員、異世界に召喚される
#5「清掃員、相棒モップに名前をつける」
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……モップが、浮いてる? いや、揺れてる。
柄がわずかに左右に振れ、ふさがふわりと膨らむ。
そして柄の先、ふさ部分がこちらに向き、じっと見下ろしていた。
「……お、お前、なんで浮いてんだよ」
返事の代わりに、モップがふわりと左右に揺れた。
あたかも首を振る生き物のように、ゆらゆら、ゆらゆら。
「え、これ……怒ってるんじゃない?」
すぐ横で、金髪のエルフが眉を寄せて呟く。
その言葉に、モップが今度はブンッと前後に揺れた。
まるで「そうだ」と肯定しているかのように。
「は? なんでモップに感情があんだよ……」
混乱していると、エルフが膝をつき、真剣な表情でモップと向き合う。
「……分かったわ、私が通訳する。言葉じゃないけど、なんとなく伝わってくるの」
「え、何その能力」
エルフはしばらく目を閉じてモップと“交信”する。
そしてゆっくり口を開いた。
「……あなたがさっき私にやったこと……いちゃいちゃしてるように見えたらしいわ」
「はぁ!? いやいやいや! あれは治療……いや浄化だって! ちょっとだけだって!!」
反論しても、モップは容赦なく柄をカタカタ鳴らし、ふさを膨らませる。
あからさまに不満の意思表示だ。
「……わ、分かったよ。悪かった。ごめんなさい」
頭を下げると、モップはピタリと動きを止め、次の瞬間――
嬉しそうにクルクルと俺の周りを飛び回り始めた。
「……なにこれ、どういう感情?」
俺がエルフを見ると、彼女は小さく肩をすくめた。
「……名前を付けてほしいんですって」
「…名前?……モップに??」
なんでそんなもん必要なんだ。呼ぶときは“おい”とか“そこの”で十分じゃないか――そう思ったが、
ふわふわ浮かんでこっちを見つめるモップの“圧”に、何となく無視できない気分になった。
……仕方ない、ちょっと考えてやるか。
「名前、か……」
腕を組み、空を見上げる。
「そうだな……名前ってのは、その存在の魂を形にするものだ。安易につけちゃいけない。呼ばれるたび、その音が宿命を刻むんだ。だからこそ――」
モップがふわふわ漂いながら、じっと俺の顔を見ている。
「俺の人生の中で最も信頼できる存在、芯があって、どんな汚れにも屈しない……そんな名を……」
エルフが小声で「おお……なんか真面目に考えてる」と呟く。
俺は深くうなずき、口を開いた。
「お前は今日から――ゴシキングだ!」
ドゴォッ!
腹に衝撃。肺の空気が一気に抜ける。
「……ぐふっ! な、なんだよ急に!」
目の前でモップが柄を小刻みに揺らし、あからさまに不満をぶつけてくる。
「可愛い名前がいいんじゃない?」
エルフが提案すると、モップが前後にコクコクと頷くような動きを見せた。
ふさがふわっと広がり、どこか嬉しそうだ。
「……可愛い、か」
俺は少し考え込み、腕を組んでわざとらしく遠くを見ながら歩き出す。
「可愛い名前ってのは、呼んだ瞬間に周りの空気がふわっと和らぐ……そんな魔法を持ってるんだ。敵意を溶かし、味方を笑顔に――ついでに俺の株も上げる……そう、戦わずして勝つ名前!」
エルフが半分あきれた目で見ている。
俺は得意げに指を立てて続けた。
「だから――〇〇リン、でどうだ? ほら、響き可愛いだろ」
「……〇〇リン? うん、まあ可愛い……かも」
エルフは少し首をかしげながらも頷く。
「だろ? で、この“〇〇”の部分が肝なんだよ。ここに最高の響きを入れれば、もう完璧――」
俺は胸を張り、息を吸い込む。
「――モッコリ…」
その瞬間――ドゴォッ!
腹に強烈な体当たりを食らい、声が途中でへし折られた。
「ぐえっ……! な、なんだよ、まだ説明の途中――」
モップがぶんぶんと柄を振り、全力で否定してきた。
「ほら、さっき“穢れし血“とか“浄化”とか言ってたじゃない。そういうカッコいい感じの言葉でつけたら?」
エルフの何気ない一言に、俺の中の何かがピクリと反応した。
「……カッコいい……だと……?」
思わず口元が緩む。
背筋を伸ばし、モップを見据える。
「穢れし大地を洗い清め、魔の淀みを祓う……その使命、我が刃ならぬ繊維に宿れ――」
「……なんか魔術詠唱みたいな雰囲気ね」
口元はわずかに笑っていたが、その瞳はどこか真剣に俺を見ていた。
「フッ、これは儀式だ。名を授ける、それは魂を刻む行為……軽々しくは出来ん」
俺はモップを胸の前に掲げ、目を閉じる。
「――名を刻むことで、お前はただの道具から同志へと変わる。
塵も泥も呪詛も、この名と共に祓い尽くすだろう……」
ひと呼吸置き、鋭く目を開く。
「お前は今日から――ルミナス……そう!ルミナスだ……!!」
その瞬間、モップが高く跳ね上がり、空中で一回転。
ふさが光を帯び、柄の文様が淡く浮かび上がった。
「おい……まさか喜んでるのか?」
モップは前後に大きく頷くような動きを見せ、ふわりと俺の背中に収まった。
柄がわずかに左右に振れ、ふさがふわりと膨らむ。
そして柄の先、ふさ部分がこちらに向き、じっと見下ろしていた。
「……お、お前、なんで浮いてんだよ」
返事の代わりに、モップがふわりと左右に揺れた。
あたかも首を振る生き物のように、ゆらゆら、ゆらゆら。
「え、これ……怒ってるんじゃない?」
すぐ横で、金髪のエルフが眉を寄せて呟く。
その言葉に、モップが今度はブンッと前後に揺れた。
まるで「そうだ」と肯定しているかのように。
「は? なんでモップに感情があんだよ……」
混乱していると、エルフが膝をつき、真剣な表情でモップと向き合う。
「……分かったわ、私が通訳する。言葉じゃないけど、なんとなく伝わってくるの」
「え、何その能力」
エルフはしばらく目を閉じてモップと“交信”する。
そしてゆっくり口を開いた。
「……あなたがさっき私にやったこと……いちゃいちゃしてるように見えたらしいわ」
「はぁ!? いやいやいや! あれは治療……いや浄化だって! ちょっとだけだって!!」
反論しても、モップは容赦なく柄をカタカタ鳴らし、ふさを膨らませる。
あからさまに不満の意思表示だ。
「……わ、分かったよ。悪かった。ごめんなさい」
頭を下げると、モップはピタリと動きを止め、次の瞬間――
嬉しそうにクルクルと俺の周りを飛び回り始めた。
「……なにこれ、どういう感情?」
俺がエルフを見ると、彼女は小さく肩をすくめた。
「……名前を付けてほしいんですって」
「…名前?……モップに??」
なんでそんなもん必要なんだ。呼ぶときは“おい”とか“そこの”で十分じゃないか――そう思ったが、
ふわふわ浮かんでこっちを見つめるモップの“圧”に、何となく無視できない気分になった。
……仕方ない、ちょっと考えてやるか。
「名前、か……」
腕を組み、空を見上げる。
「そうだな……名前ってのは、その存在の魂を形にするものだ。安易につけちゃいけない。呼ばれるたび、その音が宿命を刻むんだ。だからこそ――」
モップがふわふわ漂いながら、じっと俺の顔を見ている。
「俺の人生の中で最も信頼できる存在、芯があって、どんな汚れにも屈しない……そんな名を……」
エルフが小声で「おお……なんか真面目に考えてる」と呟く。
俺は深くうなずき、口を開いた。
「お前は今日から――ゴシキングだ!」
ドゴォッ!
腹に衝撃。肺の空気が一気に抜ける。
「……ぐふっ! な、なんだよ急に!」
目の前でモップが柄を小刻みに揺らし、あからさまに不満をぶつけてくる。
「可愛い名前がいいんじゃない?」
エルフが提案すると、モップが前後にコクコクと頷くような動きを見せた。
ふさがふわっと広がり、どこか嬉しそうだ。
「……可愛い、か」
俺は少し考え込み、腕を組んでわざとらしく遠くを見ながら歩き出す。
「可愛い名前ってのは、呼んだ瞬間に周りの空気がふわっと和らぐ……そんな魔法を持ってるんだ。敵意を溶かし、味方を笑顔に――ついでに俺の株も上げる……そう、戦わずして勝つ名前!」
エルフが半分あきれた目で見ている。
俺は得意げに指を立てて続けた。
「だから――〇〇リン、でどうだ? ほら、響き可愛いだろ」
「……〇〇リン? うん、まあ可愛い……かも」
エルフは少し首をかしげながらも頷く。
「だろ? で、この“〇〇”の部分が肝なんだよ。ここに最高の響きを入れれば、もう完璧――」
俺は胸を張り、息を吸い込む。
「――モッコリ…」
その瞬間――ドゴォッ!
腹に強烈な体当たりを食らい、声が途中でへし折られた。
「ぐえっ……! な、なんだよ、まだ説明の途中――」
モップがぶんぶんと柄を振り、全力で否定してきた。
「ほら、さっき“穢れし血“とか“浄化”とか言ってたじゃない。そういうカッコいい感じの言葉でつけたら?」
エルフの何気ない一言に、俺の中の何かがピクリと反応した。
「……カッコいい……だと……?」
思わず口元が緩む。
背筋を伸ばし、モップを見据える。
「穢れし大地を洗い清め、魔の淀みを祓う……その使命、我が刃ならぬ繊維に宿れ――」
「……なんか魔術詠唱みたいな雰囲気ね」
口元はわずかに笑っていたが、その瞳はどこか真剣に俺を見ていた。
「フッ、これは儀式だ。名を授ける、それは魂を刻む行為……軽々しくは出来ん」
俺はモップを胸の前に掲げ、目を閉じる。
「――名を刻むことで、お前はただの道具から同志へと変わる。
塵も泥も呪詛も、この名と共に祓い尽くすだろう……」
ひと呼吸置き、鋭く目を開く。
「お前は今日から――ルミナス……そう!ルミナスだ……!!」
その瞬間、モップが高く跳ね上がり、空中で一回転。
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ご購入はこちらから:
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
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