異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭

文字の大きさ
6 / 53
序章 清掃員、異世界に召喚される

#6「モップに懐かれ、エルフに追われ、俺は逃げる」

ルミナスは俺の背中にぴたりと張り付き、ふさが揺れるたびに微かに風が当たる。
……なんなんだこいつ、妙に懐いてきやがる。

「……お前、ずっとくっついてるつもりか?」

問いかけると、ルミナスはふわっと浮き上がり、俺の正面へ回り込んでコクコクと縦に揺れた。

「……そうか。ま、荷物になるわけじゃないし、いいけどな」

今度はふさを小さく膨らませ、満足げに俺の背中へ戻ってくる。

「よし、隣村の教会まで行くか。お前も行くよな?」

ふさがぱっと広がり、ルミナスは肯定のように一回転する。

「ちょ、ちょっと!待ちなさいよ!!」

背後から声。振り返ると、金髪のエルフが少し息を弾ませながら立っていた。

「……何だよ」
「その……さっきは助けてくれて、ありがとう」

意外と素直な礼。だが次の瞬間、彼女はなぜか顔を赤くして、もごもごと口を動かした。

「……服…脱がせようとして……胸にまで触れたのに……ごにょごにょ」
「……は?」

耳には確かに「胸」という単語が突き刺さった。
嫌な予感が一気に膨らむ――と思ったら、エルフはふいっと後ろを向き、まるで独り言のように語り出した。

「……あの時のあれって……やっぱり……ふ、不意打ちすぎて……心臓止まるかと……」

背中越しに見える横顔は真っ赤。

「……でも乙女の胸を触るってことは……わかってるのよね……? それはもう、その人の人生に踏み込むってことで……しかもあんな勢いで、しかも森の中で……こっちは必死で抵抗もできなくて……で、そのあと何食わぬ顔で隣村に行こうとして……ほんっとにもう……!」

――察知した。このままでは、我が名は歴史の闇に不埒者すけべものとして刻まれる。
衛兵の鎖音が幻聴のように耳奥で鳴り響く。
ここで動けば音が出る……ならば――影となり、風となれ。
俺は息を殺し、音一つ立てず、落ち葉すら踏み鳴らさぬ歩法で距離を取り――
一転、木々の影を縫って全力で駆けた。

「……あたしだから許されたけど、普通なら衛兵直行だからね?」
「もし別の娘だったら……その場でビンタ、下手したら膝蹴り、さらに村中に噂が広まって……『変態モップ男』とか呼ばれて……」
「いや、モップは関係ないか……いやでも持ってたから余計に怪しいか……」
「それに、乙女の胸っていうのはね……もっとこう……心の準備があって……触る方も触られる方も、空気と雰囲気と光の加減と、あとは――」
「……あ、光の加減は関係ないか。いやでも関係あるかも……」
「……そうそう、あとあれも! いきなり服脱がせるとか、見ようによっては完全に押し倒し案件だからね!? あれ、状況によっては本当に通報されるやつだから!」
「まあ……今回はあたしが状況を理解してるからセーフだけど……いや、セーフっていうか……ギリギリセーフ……うん、紙一重セーフ……」
「……でも、そのあと何食わぬ顔で歩き出すのはどうかと思うの! 普通、謝罪と感謝と……あとお詫びのお菓子くらいは――」

……
………
…………
……………
振り返ると風が止み、葉擦れの音すら消えていた。
耳に届くのは、遠くで響く鳥のさえずりだけ――エルフの声はもう、どこにもなかった。

「……なんかすげー喋ってたなあいつ」
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

ねぇ、俺、可哀想すぎない?〜それでも回復能力の行き過ぎた俺は魔王でも倒せない〜

天かす
ファンタジー
〜俺は死なないけど攻撃力がなさすぎた。 そして仲間の魔物は有能すぎた。〜 異次元空間で生き残った結果――  ヒマリのスキルは、神域へと覚醒していた。  名前はヒマリ。  見た目は可愛いが、これでもれっきとした男である。  持っていたスキルは《自己回復(小)》。  小さな村では少し珍しいが、決して特別ではない。  どこにでもある、ありふれた能力だった。  幼馴染と過ごす穏やかな日々。  平和で、何も変わらないはずだった日常。  しかしある日、魔王の赤い雷が世界を焼いた。  村は崩れ、世界は狂い、逃げ惑う人々の中で――  ヒマリは、時間の狂った異次元空間へと落ちてしまう。  そこからすべてが変わった。  死を覚悟した、その瞬間。  ヒマリのスキルが暴走覚醒した。  《瞬間自己再生(極)》。  その力のおかげで、ヒマリは死ぬことがなくなった。  だが同時に、ひとつの事実を知る。  どうやら――  ここから出るには、魔王を倒さなければならないらしい。  ……え?  普通に無理じゃない?  ――俺、可哀想すぎない?  不憫すぎる不死スキル。  そして、なぜか懐いてくる魔物たち。  攫われた幼馴染を救うため――  少しだけ強くなった少年、ヒマリの  異世界冒険譚が、今ここから始まる。 水、金、日曜日の夜9時頃更新予定です。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語