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序章 清掃員、異世界に召喚される
#4「モップ光る!清掃員VS狼モンスター」
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土の匂いと血の匂いが混ざり合う。
足元には、狼型のモンスターが何体も横たわっていた。赤黒い血が土に染み、湿った森の空気が重くのしかかる。
金髪の女が、肩で荒く息をついていた。
顔は青ざめ、膝が震えている。今にも倒れ込みそうだ。
低い唸り声が森に響いた。
別の狼が地を蹴り、彼女に飛びかかる。彼女はぎりぎりで身をひねってかわしたが、踏み込みを誤って体勢を崩す。
そこへさらに一匹――牙を剥き、背後から迫った。
――気付けば、体が動いていた。
モップの柄を握りしめ、狼の横腹めがけてふさを突き出す。
毛先が魔物の体毛にめり込み、ぐっと押し返す感触。狼は勢いを失い、土を蹴って後退した。
女は何とか踏みとどまり、俺を見た。
「あなたは……」
言葉の続きを聞く間もなく、別の影が横から飛び出してくる。
避けられない。
反射的に、モップを振りかざした――。
瞬間、ふさ全体がまばゆい光を放った。
狼が怯み、目を細めて動きを止める。
その隙を逃さず、渾身の力でふさを突き込んだ。
鈍い衝撃。
次の瞬間、狼は光の粒となって霧のように消えた。
……今のは、何だ?
自分の手元でまだかすかに光るモップを見つめていると、女が近づいてくる。
「助けてくれて…ありがとう」
かすれた声とともに微笑む。
その顔を見て、思わず息を呑んだ。
――長い耳。
それは物語でしか見たことのない、“エルフ”の証だった。
だが、そんなことはどうでもいい!!
革鎧の隙間から、じわりと赤が広がっている。……血だ!!
「うわぁぁっ……結構出てるじゃないかぁぁ!」
心臓がバクバクとやたらうるさい。
「まままま、待って。今すぐ治療を――」
気付けば俺は彼女の肩に手をかけていた。
焦りのあまり、なぜか口から出たのは妙に格好つけた台詞。
「この穢れし血を――浄化してやる!」
「え、ちょ、なに――っ!?」
鎧の留め具に手を伸ばした瞬間、エルフが悲鳴を上げて身をよじる。
「落ち着け! ほんのちょっとだけだ! 本当にちょっとだけ!」
「な、なにがちょっとだけなのよ! たいした怪我じゃないし!これはモンスターの血よ!!」
それでも手を止めない俺に、彼女は必死で腕を振り払おうとする。
「だから脱がすなって言ってるでしょ!」
「違うって! 浄化だって! 儀式みたいなもんだって! ちょっとだけだって!!」
鎧の留め具がひとつ外れるたび、彼女の抗議と俺の意味不明な弁解が重なって、森に響き渡る。
もみ合う拍子に、俺の手が彼女の胸に当たった。
「きゃあああああっ!!」
甲高い悲鳴が森に響き渡る。
その直後、背後から強烈な衝撃が走った。
視界が回転し、俺は土の上に倒れ込む。
痛む後頭部を押さえながら顔を上げると――、そこにはふさをこちらに向けて浮かんでいる一本のモップがあった。
足元には、狼型のモンスターが何体も横たわっていた。赤黒い血が土に染み、湿った森の空気が重くのしかかる。
金髪の女が、肩で荒く息をついていた。
顔は青ざめ、膝が震えている。今にも倒れ込みそうだ。
低い唸り声が森に響いた。
別の狼が地を蹴り、彼女に飛びかかる。彼女はぎりぎりで身をひねってかわしたが、踏み込みを誤って体勢を崩す。
そこへさらに一匹――牙を剥き、背後から迫った。
――気付けば、体が動いていた。
モップの柄を握りしめ、狼の横腹めがけてふさを突き出す。
毛先が魔物の体毛にめり込み、ぐっと押し返す感触。狼は勢いを失い、土を蹴って後退した。
女は何とか踏みとどまり、俺を見た。
「あなたは……」
言葉の続きを聞く間もなく、別の影が横から飛び出してくる。
避けられない。
反射的に、モップを振りかざした――。
瞬間、ふさ全体がまばゆい光を放った。
狼が怯み、目を細めて動きを止める。
その隙を逃さず、渾身の力でふさを突き込んだ。
鈍い衝撃。
次の瞬間、狼は光の粒となって霧のように消えた。
……今のは、何だ?
自分の手元でまだかすかに光るモップを見つめていると、女が近づいてくる。
「助けてくれて…ありがとう」
かすれた声とともに微笑む。
その顔を見て、思わず息を呑んだ。
――長い耳。
それは物語でしか見たことのない、“エルフ”の証だった。
だが、そんなことはどうでもいい!!
革鎧の隙間から、じわりと赤が広がっている。……血だ!!
「うわぁぁっ……結構出てるじゃないかぁぁ!」
心臓がバクバクとやたらうるさい。
「まままま、待って。今すぐ治療を――」
気付けば俺は彼女の肩に手をかけていた。
焦りのあまり、なぜか口から出たのは妙に格好つけた台詞。
「この穢れし血を――浄化してやる!」
「え、ちょ、なに――っ!?」
鎧の留め具に手を伸ばした瞬間、エルフが悲鳴を上げて身をよじる。
「落ち着け! ほんのちょっとだけだ! 本当にちょっとだけ!」
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それでも手を止めない俺に、彼女は必死で腕を振り払おうとする。
「だから脱がすなって言ってるでしょ!」
「違うって! 浄化だって! 儀式みたいなもんだって! ちょっとだけだって!!」
鎧の留め具がひとつ外れるたび、彼女の抗議と俺の意味不明な弁解が重なって、森に響き渡る。
もみ合う拍子に、俺の手が彼女の胸に当たった。
「きゃあああああっ!!」
甲高い悲鳴が森に響き渡る。
その直後、背後から強烈な衝撃が走った。
視界が回転し、俺は土の上に倒れ込む。
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