4 / 17
4
しおりを挟む
「どうして、どうしてこんなことになってしまったのかしら」
エリーゼは当時困惑したといいます。だって、父親は強力な後ろ盾だったわけですから、彼を失ってしまったら、1人で歩いていくことなんて不可能だったのでしょう。
王家との結びつきがあまりにも強すぎた、と言うことが問題だったのかもしれません。グラント氏の懐にはたくさんの賄賂が貢がれていたと言われていました。
普通だったら、こんな事は滅多にバレません。ですが、グラント氏のことを気に入らない連中が情報漏洩したのでしょう。
「ふざけないで。そうだとしたら、私はこれからどうやって王子様と婚約する未来を描けばいいのかしら」
エリーゼが疑問に感じるのはもっともなことだと思いました。でも、結局は自己責任ってことじゃないんですか。私はそう思いました。そして、怒りの矛先がなぜだか私へ向いてきました。
「マリア、これは全部あなたの仕業でしょう!」
何の根拠もない話でした。ですが、彼女は敵を作る事に必死でした。幸いなことに、仮想の敵はすぐ近くにおりました。それが私だったのです。
「それはどういうことかしら。私たちがそんなことをする必要はないでしょう」
私は言いました。でも、彼女にとっては私の言葉なんてちっとも響いていないようでした。
「あなたが、父親と結託して、我が家を亡き者にしようとしているんじゃないかしら」
「だから、どうして私たちがそんなことをする必要があるんですか」
「そんなの決まっているでしょう。あなたが王子様と婚約するためよ」
言いたいことはなんとなくわかりました。ですが、私は今まで1度も王子様と婚約したいと言った事はありませんでした。
「あなたが希望するとかしないとか、そういう問題じゃないのよ。あなたの父親が、自らの地位をもっともっと高めるために、あなたを利用しているだけなのよ!」
確かに、父親が私のことを利用する価値はあると思いました。より強く王家とのパイプを繋ぐことができれば、もっと良いと思ったのでしょう。
「でもね、だからといって他人を落とすようなことはしないでしょう」
私の父親は厳格な教育者なのです。そのようなせこい方法で自らをあげようとはしなかったはずです。私はそのように信じておりました。
ですが、後になってこの話が真実だったのではないかと思う瞬間が訪れました。グラント氏の逮捕と失脚が広く世間に知れ渡ることになって、ほとんど感情を表に出さない父親が、
「とうとうこの時がやってきた」
と、うれしそうに言っていたのです。もちろん、私のことを言っているかどうかわかりませんでした。ですが、タイミング的にはそう考えるのが自然だったと思います。
「さあさあ、これからが忙しくなる。我が家がもっともっと注目される時代がやってくるのだ」
やはり、父親は相当の野心家のようでした。私はこの時思いました。人間と言うのは、結局は自分の欲望にしか素直になれないんだと。私厳しい教育をしてきたのも、私の幸せを願って、と言うよりかは、私がもっともっと有利に王子様と婚約できる未来を描いていたからだったのです。
エリーゼは当時困惑したといいます。だって、父親は強力な後ろ盾だったわけですから、彼を失ってしまったら、1人で歩いていくことなんて不可能だったのでしょう。
王家との結びつきがあまりにも強すぎた、と言うことが問題だったのかもしれません。グラント氏の懐にはたくさんの賄賂が貢がれていたと言われていました。
普通だったら、こんな事は滅多にバレません。ですが、グラント氏のことを気に入らない連中が情報漏洩したのでしょう。
「ふざけないで。そうだとしたら、私はこれからどうやって王子様と婚約する未来を描けばいいのかしら」
エリーゼが疑問に感じるのはもっともなことだと思いました。でも、結局は自己責任ってことじゃないんですか。私はそう思いました。そして、怒りの矛先がなぜだか私へ向いてきました。
「マリア、これは全部あなたの仕業でしょう!」
何の根拠もない話でした。ですが、彼女は敵を作る事に必死でした。幸いなことに、仮想の敵はすぐ近くにおりました。それが私だったのです。
「それはどういうことかしら。私たちがそんなことをする必要はないでしょう」
私は言いました。でも、彼女にとっては私の言葉なんてちっとも響いていないようでした。
「あなたが、父親と結託して、我が家を亡き者にしようとしているんじゃないかしら」
「だから、どうして私たちがそんなことをする必要があるんですか」
「そんなの決まっているでしょう。あなたが王子様と婚約するためよ」
言いたいことはなんとなくわかりました。ですが、私は今まで1度も王子様と婚約したいと言った事はありませんでした。
「あなたが希望するとかしないとか、そういう問題じゃないのよ。あなたの父親が、自らの地位をもっともっと高めるために、あなたを利用しているだけなのよ!」
確かに、父親が私のことを利用する価値はあると思いました。より強く王家とのパイプを繋ぐことができれば、もっと良いと思ったのでしょう。
「でもね、だからといって他人を落とすようなことはしないでしょう」
私の父親は厳格な教育者なのです。そのようなせこい方法で自らをあげようとはしなかったはずです。私はそのように信じておりました。
ですが、後になってこの話が真実だったのではないかと思う瞬間が訪れました。グラント氏の逮捕と失脚が広く世間に知れ渡ることになって、ほとんど感情を表に出さない父親が、
「とうとうこの時がやってきた」
と、うれしそうに言っていたのです。もちろん、私のことを言っているかどうかわかりませんでした。ですが、タイミング的にはそう考えるのが自然だったと思います。
「さあさあ、これからが忙しくなる。我が家がもっともっと注目される時代がやってくるのだ」
やはり、父親は相当の野心家のようでした。私はこの時思いました。人間と言うのは、結局は自分の欲望にしか素直になれないんだと。私厳しい教育をしてきたのも、私の幸せを願って、と言うよりかは、私がもっともっと有利に王子様と婚約できる未来を描いていたからだったのです。
368
あなたにおすすめの小説
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
愛はリンゴと同じ
turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。
夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。
ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。
幾つもあるなど考えられない。
嘘の誓いは、あなたの隣で
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢ミッシェルは、公爵カルバンと穏やかに愛を育んでいた。
けれど聖女アリアの来訪をきっかけに、彼の心が揺らぎ始める。
噂、沈黙、そして冷たい背中。
そんな折、父の命で見合いをさせられた皇太子ルシアンは、
一目で彼女に惹かれ、静かに手を差し伸べる。
――愛を信じたのは、誰だったのか。
カルバンが本当の想いに気づいた時には、
もうミッシェルは別の光のもとにいた。
ガネット・フォルンは愛されたい
アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。
子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。
元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。
それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。
私も誰かに一途に愛されたかった。
❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。
❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。
私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる