わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟

文字の大きさ
3 / 17

3

「マリア様!!!!!」

わたしのメイドたちはすぐさま私のもとに駆けつけてきました。主人が一大事であるわけですから、当然のことでした。

「エリーゼ様、いくらなんでもいたずらが過ぎますわよ」

メイドたちは彼女に注意しました。

「あなたたち、私に注意できる身分かしら???」

「身分、そういう問題ではありません」

「まあ、いいわ。それよりも……危うく死ぬところだったわね???」

私はこの時、まだ死ぬと言う概念がよくわかっていませんでした。

「エリーゼ様、まさか最初から狙っていらしたのですか!!!!!」

メイドたちはすごい剣幕でした。

「まさか……それにどうして私がこんな女の子を殺す必要があるのかしら???」

「それは……」

死ぬとか殺すとか、なんとなく物騒な響きだとは思いました。ですが、やはりこの時はわかりませんでした。

「だって、同じ公爵令嬢でも、血筋的には我が家の方がよっぽど王家に近いというのに。あなたの家みたいな成り上がりとは違うのよ……」

「エリーゼ様!!!!!」

「ああ、怖いわ。これだから下等な貴族は困っちゃう……まあ、いいわ。そこの生意気なマリアと話す機会はまた今度、と言うことで!!!!!」

こういったやり取りはその後も何度か繰り返されました。確かに思い返してみれば、彼女は最初から私の命を狙っていたのかもしれません。彼女が言った通り、当時の権力構想としては、エリーゼの家が圧倒的に強く、将来王家とより深いパイプで結ばれることを確実視されていました。それこそ、まさに彼女だったのです。私たちのことを成り上がりとエリーゼは言いました。たしかに我が家は元々伯爵家だったのです。父親が優秀な教育者であり、王子など王家の人々の教育係として長年仕えた功績を讃えられて、公爵に昇格した、というわけなのでした。

ところが、これも後から聞いた話ではございますが、王子様、つまり、スミス様は最初から私のことを狙っていたようでした。エリーゼのことはあまり眼中にないようでした。もちろん、噂話のレベルですから詳細はわかりません。ですが、それがもし本当だったとしたら、エリーゼが私のことを殺そうとしていた、というのもなんとなく納得がいくわけでございます。

でも、この時私には全く興味がありませんでした。まさか、王子様と婚約するなんて、考えられないじゃないですか。王家に最も近い家……つまり、エリーゼが将来スミス様の婚約者になると、これはすでに世界が決めていることでした。誰も異議を唱えることができない、明確な事実だったと言うことです。

ところが、この後思わぬ展開が私たちを待ち受けていました。


「グラント氏が逮捕ですって???」


突然舞い込んできた事件でした。グラント氏とはエリーゼの父親だったのです。

あなたにおすすめの小説

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

なぜ、虐げてはいけないのですか?

碧井 汐桜香
恋愛
男爵令嬢を虐げた罪で、婚約者である第一王子に投獄された公爵令嬢。 処刑前日の彼女の獄中記。 そして、それぞれ関係者目線のお話

悪役令嬢として、愛し合う二人の邪魔をしてきた報いは受けましょう──ですが、少々しつこすぎやしませんか。

ふまさ
恋愛
「──いい加減、ぼくにつきまとうのはやめろ!」  ぱんっ。  愛する人にはじめて頬を打たれたマイナの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。  甘やかされて育ってきたマイナにとって、それはとてつもない衝撃だったのだろう。そのショックからか。前世のものであろう記憶が、マイナの頭の中を一気にぐるぐると駆け巡った。  ──え?  打たれた衝撃で横を向いていた顔を、真正面に向ける。王立学園の廊下には大勢の生徒が集まり、その中心には、三つの人影があった。一人は、マイナ。目の前には、この国の第一王子──ローランドがいて、その隣では、ローランドの愛する婚約者、伯爵令嬢のリリアンが怒りで目を吊り上げていた。

嘘の誓いは、あなたの隣で

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢ミッシェルは、公爵カルバンと穏やかに愛を育んでいた。 けれど聖女アリアの来訪をきっかけに、彼の心が揺らぎ始める。 噂、沈黙、そして冷たい背中。 そんな折、父の命で見合いをさせられた皇太子ルシアンは、 一目で彼女に惹かれ、静かに手を差し伸べる。 ――愛を信じたのは、誰だったのか。 カルバンが本当の想いに気づいた時には、 もうミッシェルは別の光のもとにいた。

もっと傲慢でいてください、殿下。──わたしのために。

ふまさ
恋愛
「クラリス。すまないが、今日も仕事を頼まれてくれないか?」  王立学園に入学して十ヶ月が経った放課後。生徒会室に向かう途中の廊下で、この国の王子であるイライジャが、並んで歩く婚約者のクラリスに言った。クラリスが、ですが、と困ったように呟く。 「やはり、生徒会長であるイライジャ殿下に与えられた仕事ですので、ご自分でなされたほうが、殿下のためにもよろしいのではないでしょうか……?」 「そうしたいのはやまやまだが、側妃候補のご令嬢たちと、お茶をする約束をしてしまったんだ。ぼくが王となったときのためにも、愛想はよくしていた方がいいだろう?」 「……それはそうかもしれませんが」 「クラリス。まだぐだぐだ言うようなら──わかっているよね?」  イライジャは足を止め、クラリスに一歩、近付いた。 「王子であるぼくの命に逆らうのなら、きみとの婚約は、破棄させてもらうよ?」  こう言えば、イライジャを愛しているクラリスが、どんな頼み事も断れないとわかったうえでの脅しだった。現に、クラリスは焦ったように顔をあげた。 「そ、それは嫌です!」 「うん。なら、お願いするね。大丈夫。ぼくが一番に愛しているのは、きみだから。それだけは信じて」  イライジャが抱き締めると、クラリスは、はい、と嬉しそうに笑った。  ──ああ。何て扱いやすく、便利な婚約者なのだろう。  イライジャはそっと、口角をあげた。  だが。  そんなイライジャの学園生活は、それから僅か二ヶ月後に、幕を閉じることになる。

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。

ふまさ
恋愛
 伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。 「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」  正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。 「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」 「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」  オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。  けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。  ──そう。  何もわかっていないのは、パットだけだった。

旦那様はとても一途です。

りつ
恋愛
 私ではなくて、他のご令嬢にね。 ※「小説家になろう」にも掲載しています