【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

一ノ瀬麻紀

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太陽の話(スピンオフ2)

13 ギクシャク

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 凛太郎りんたろうのお見舞いに行った日、あのあと詩音しおんくんが戻ってきたので、お願いしてオレは家に帰った。
 熱のせいかわからないけど、いつもより少し弱音を吐いて甘えた凛太郎の、あの顔が脳裏に焼き付いて離れない。
 
 複雑なこの気持ちを抱えたまま、実習最終日まで過ごして曖昧にするのか、ちゃんと向き合ってピリオドを打つのか。
 オレはどうしたらいいのだろう……。

 お見舞いに行った次の日、凛太郎から連絡があった。熱が下がって元気になったという報告と、お見舞いのお礼だった。
 今週末もちょうど実家に帰ることになっていて、出かける直前だったということもあり、簡単に話しただけで通話を終えた。
 その後も電話がかかってきたけど、実家に帰っているからという理由で、メッセージだけで済ませた。

 なんとなく避けてしまった週末も終わり、今日は月曜日。さすがに避けるわけもいかないし、どうしたもんかと思いながらクリニックにやってきた。

太陽たいようさん、おはようございます」
「ああ、凛太郎おはよう。早いな」

 やっぱり、凛太郎はオレの出勤時間に合わせてやってきた。

「週末、実家はどうでしたか? ゆっくりできました?」
「今回は姉一家は来なかったからな、ゆっくりさせてもらったよ」
「……あの……お話ししたいことがあるんですけど」
「ん? 今は無理だぞ?」
「いえ、お昼休憩とかは……」
「悪いな、お昼挟んでいかなきゃいけないところがあって」
「そうですか。ではまた明日にでも……」
「時間が取れたらな。ごめんな、ちょっとバタバタしてて」
「いえ、大丈夫です。僕の方こそすみません」

 凛太郎は、オレがあのお見舞いの後から、何か様子が違うというのは感じとっているんだと思う。
 露骨に避けているわけじゃないけど、ゆっくり話す時間を作ろうとしないのが、伝わっているかもしれない。

 そんな感じで数日が過ぎ、明日はクリニックの休診日。凛太郎の実習は金曜日までだから、今日を入れてあと2日ということになる。
 この3日間、先週末の出来事をどことなく引きずったまま、かといって普段となんら変わりなく業務をこなしてきた。
 近所の大学から来ている実習生と、その面倒を見ている中堅看護師。その関係性なのだから、業務以外の会話が少なくても、何もおかしいことはない。

「お疲れ様でした」
「今日もありがとうね。明日はクリニックはお休みだから……大学に行くのかな? 金曜日もよろしくね」
「はい、明日は大学に行きます。あと1日よろしくお願いします」

 時計は16:00を指していた。クリニックの待合室には、まだ患者さんがいる時間だ。
 学生なので早めに上がる凛太郎は、診察の合間に春岡先生に挨拶をして、オレの方をチラリと見た。

「凛太郎、お疲れさん」
「あの……」

 オレが声をかけると、凛太郎は周りの様子を伺ってから、遠慮がちに声をかけてきた。
 けどその直後、診察室からオレを呼ぶ声がした。

「太陽くん、ちょっと来て!」
「あ、はい、今行きます!……ごめんな、凛太郎。気をつけて帰れよ」
「はい……」

 明日はクリニックが休みなので、実習はあと1日しかない。きっと何か伝えたいことがあったんだろうけど、今は診察時間中だ。
 オレは凛太郎に軽く声をかけると、診察室に戻って行った。

 その日の勤務が終わりクリニックを出ると、やっぱりというかなんというか、駐輪場のかげから凛太郎がなんとなくバツが悪そうに現れた。

「あの……少しだけでいいので、話を聞いてもらえませんか?」

 ほらまた、見えないはずの耳と尻尾が見える。ぺたーっと伏せた耳と股に挟まるくらいに垂れた尻尾が、凛太郎の感情そのものを表しているようだった。

「わかったよ。……オレもはっきりさせたいしな」

 こんなにもオレに執着している凛太郎が、実習初日に言った言葉が全くの嘘とは思えない。
 なぜ『やっと会えた』と言ったのか。そして詩音くんのことも、オレには聞く権利があるのだと思う。

「ありがとうございます。……すみません、ストーカーみたいなことをして……」
「ふふっ。ストーカーって自覚あったんだな」

 しゅんと項垂れたままそう言う凛太郎を見て、オレは思わず口にしてしまった。
 おかしくなって、くすくすと声に出して笑うオレを見て、凛太郎の表情がふっと和らいだ。

「太陽さん、僕のことを避けているみたいだったし、話をしたいのに話す機会がなかなかないし、でももうすぐ実習終わっちゃうし。だから、今日話さなきゃって思ったんです」
「避けたつもりはなかったけど、そう思ってしまったならごめんな」

 オレは少しだけ嘘をついてしまったかもしれない。
 確かに『避けてはいない』つもりだったけど、どう接していいのかわからず、ギクシャクしてしまったのは事実なんだ。結果的に、話し合う時間を避けていたのかもしれない。

「ここじゃなんだし、少し歩くか」
「はい」

 隣を歩く凛太郎からは、少しだけ緊張が伝わって来るように感じた。
 クリニックから少し歩いた先に、公園がある。オレたちはそこで話をすることにした。
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