【完結】フィクション

犀川稔

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23.5話 夏休みの一軍たち

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 あれから赤城とはお互い別の予定もあったりで片手で数えられる程度しか会えていなかった。ただ毎日L◯NEで連絡は取っているし、空いた時間に赤城が電話をかけてくれたりして、もう折り返しではあるけどそこそこ僕の夏休みは充実していた。
 バイトも慣れてきてお客さんにおすすめを聞かれても答えられるようになってきたし、レジの扱いも店長曰く様のなってきたらしい。
 お昼の休憩を挟んでから表に戻ると美鈴が誰かと楽しそうに話す声がした。聞き覚えのある相手の声に導かれるようにホールに出ると赤城の姿があった。
「え...赤城?」
 僕の呼びかけに反応して赤城がこっちを振り向き手を振った。すぐに駆け寄って赤城をみると笑って赤城が話し始めた。
「最近予定合わなくて会えてなかったから会いにきちゃった。これから佐々木とか先輩と一緒に遊び行くんだけどそれまでね。」
 ......好きすぎる。
 嬉しくて感情が込み上げ、黙っていると赤城が微笑んで恋の頭を撫でた。
「店員さんかわいーね。俺と付き合ってよ。」
「......も、もう付き合ってる、ます...。」
 赤城の茶番に顔を赤くして答える恋に赤城が愛くるしそうに笑いかけた。その様子を満更でもない様子で美鈴が見ていた。
 お客さんがきて恋が急いでレジに戻ると赤城が楽しそうに恋が接客する様子を観察していた。

 しばらくして赤城は携帯が鳴り電話に出た。早めに家を出た佐々木が暇だから先に合流しようと言う内容だった。カフェにいるから無理と赤城が断ると、そこに行くと言う佐々木に嫌そうな顔をして赤城が何度も断った。しつこく聞かれて諦めて赤城が住所を送った。
 数分後、佐々木がカフェに来るとレジに立つ恋を見て吃驚したあと声を出して笑った。
「えー!やっば、芦野くんじゃん!ここで働いてたんだー!何回聞いても赤城、芦野くんのバイト先教えてくれんかったのよ!自分は会いにきてんのキモすぎ!!君の彼氏独占欲強すぎね?」
 恋に話しかける佐々木の肩を掴んで赤城が睨みつけた。
「恋、カフェラテアイスでお願い、こいつの分ね。...なに俺の前でズカズカ話しかけてんだよ。」
 赤城の話に「あ、うん!」と言ってレジを打つと佐々木がお金を払った。
「いいじゃん久々の友との再会くらいエンジョイさせてよ~、俺だって芦野くんと会いたかったんだから。」
「来週メシん時会えんだからいいじゃん。」
「それはそれだよ、別腹別腹!」
「迷惑かけてごめんね」と恋に言って、いつもながらテンションが高い佐々木を恋から引き剥がして赤城は自分の席に連れて行った。席に座ると佐々木はアイスコーヒーを飲む赤城をニヤニヤ見て口を開いた。
「もうヤった?」
 前触れもなくストレートに聞く佐々木に「お前グロすぎ。」と赤城が言い放ち首を横に振った。
「付き合って何ヶ月経つよ?お前それはチキンすぎだって。」
「...お前と違ってそこ目的じゃないのよ。いいんだよ、俺は一緒にいれて向こうも好いてくれてればそれで。」
 呆れ顔で話す佐々木に赤城は言い返すとそのまま恋の方を見た。目が合うと嬉しそうに笑う恋を見て薄く口角をあげた。そんな二人を横で見ていた佐々木が話を色々振った後に躊躇していたあの話題について触れた。
「...そういやあの話ってどうなったの?」
「あの話?」
「あー、ほら。高瀬くん、だったか?その子の。」
 佐々木の話に「あー...。」と言って恋に電話をしてきたことや、向こうはまだ恋に会う気にいるようなL◯NEを送ってきたことを赤城は話した。
「なかなか図太いね、彼。」
「まあね、よほど執着でもあんじゃない?」
「...にしてはあんまり焦ってないよな。どうすんのよ、なんかあったら。」
 佐々木の言葉に赤城は無言になった。そしてアイスコーヒーのストローでコップをかき回しながら口を開けた。
「あったらそん時はそん時でしょ。まだなんも考えらんないわ。」
 赤城の表情を見て何かを察した佐々木は「ま、それもそうか~」と笑い混じりに返した。そして時間が過ぎそろそろカフェを出ようとした時「ちょい声かけてくる」と言って赤城が恋の方に近づき少し話してから帰ってきた。そんな赤城と佐々木が最後、恋に手を振ると仲良く店から出ていった。
 二人の姿が見えなくなると美鈴が恋に近づいた。
「一緒にいた人も同じ学校の子?」
「あ、うん!佐々木くんって言って赤城のグループにいる子だよ。来週仲川たちと集まってみんなでご飯行くんだけどその時さっきの佐々木くんたちも来るんだ~。」
 恋の話に納得して美鈴が頷いた。楽しそうに説明して話す恋に安心したように微笑んだ。
「さぁ!彼氏パワーでやる気も出たことだしあとちょっとバイト頑張ってよー!?」
 そう言ってパンッと手を叩くと持ち場に戻っていった。

 先輩たちの待ち合わせ場所に向かっている時赤城が徐に口を開いた。
「......恋人に渡す誕プレってなにが無難?」
 佐々木がパッと赤城の顔を見るといつも通りクールぶった顔つきでこっちを見ていた。
「...お前、芦野くんいなくなった途端その顔やめろよ。」
 普段は冷酷で真顔を極める赤城が芦野くん絡みになると笑えるほど緩んでいる顔つきに佐々木は突っ込んだ。
「どんな顔だよ。いつもこの顔だろ。」
「それはパチ、無意識なら尚のことキモいわ。」
 佐々木の話に赤城は膝で佐々木の足を蹴った。
 佐々木は笑いながらさっきの話に戻した。
「えーっと誕プレなにあげるかだっけ?」
「そー。そう言うの考えるのお前得意分野っしょ?なにあげんのがいいの?」
「えー...。女子なら割と化粧品とかアクセ欲しがる人多かったけど。つかこう言うのは当事者同士の方が話わかるし新山にもバラしちゃってあいつに聞けば?」
 佐々木の話にわかりやすく嫌そうな顔をする赤城に佐々木が首を傾げた。
「なんであいつに言いたくないの。」
「1番はこれ以上恋の可愛いところ他のやつにバレたくない。」
「ほ~ん、2番は?」
「あいつと恋人の喧嘩に俺なかなか巻き込まれてんじゃん。それの腹いせで恋になんか吹き込まれたら嫌だわ。」
 赤城の話に佐々木は「確かに~」と腹を抱えて笑った。
「...で?突っ込むタイミング逃してたけどいつから名前呼びの関係に昇格したの?」
「......夏休み前日。」
 あの日の出来事を思い出して名前呼びにした理由がなんとなくわかった佐々木が「恋ちゃん~」とニヤニヤしながら言った。赤城は呆れたように佐々木を見るとため息を吐きもう一度佐々木の足を軽く蹴った。

 他の人たちと合流しゲーセンに向かった。途中で新山が加わってみんなでご飯に向かった。早めの解散になって佐々木と新山は佐々木家に行くと言うから赤城は別で帰ろうとしたら捕まって二人に連行された。三人で駄弁りながら帰っていると佐々木が思い出したように新山に聞いた。
「そういや新山お前この前弟に誕プレなにあげたの?」
 突然の質問に新山が怠そうに佐々木を見た。
「...なんで?」
「そういえば何あげたのかなーって気になって、ただの雑談よ。他意はない。」
 そう言って佐々木はさりげなく赤城を見た。それに気付いた赤城は、ナイスという顔で佐々木を見た。
「あー...ネックレス。ペアのやつね。」
 新山が携帯を弄りながら面倒くさそうに答えると佐々木と赤城が「なるほど」と頷いた。
「......赤城は?恋人の誕生日とかまだなの?」
「うん、これからだね。」
 新山の問いに赤城は平然と返した。
「いやーでもまじで、赤城と恋人の話題をできる時が来るなんてな、恋愛できない不器用男かと思ってた。感慨深いわ。」
「いやわかるわ、俺は誰も好きにならねぇ。自分ラヴって言うナルシだと思ってたわ。感慨深いわ~。」
「......お前ら俺のこと馬鹿にし過ぎじゃね?」
 ケラケラ笑いながら罵る二人に赤城がキレ口調で言った。その反応に更に笑いが起こり二人は爆笑した。
「じゃ、そんな赤城くんにしつも~ん。ズバリ相手の好きなところは?」
 佐々木が街中で渡されたティッシュを手に握りマイク代わりにして赤城に差し出した。赤城はその場で立ち止まって少し考えると、佐々木と新山を流し見しながら口を開いた。
「...いい子すぎるからさ。あんまり嫌な事があっても言わないでギリギリまで我慢するんだわ。もうとっくに限界超えて見えないところで泣いたりしちゃって、いやそうなるまで気づけない俺が一番ヤバいやつなんだけどさ。そんな子なのに稀に自分なりの言葉で伝えてきて俺に伝わって和解できた時とか、すんごい嬉しそうに笑ってる時とかもやばいね......あーもう、かっわい~。」
 想像していた何十倍にしっかりと赤城が惚気てきて佐々木と新山は固まった。そしてそのまま十数秒時間流れた。
「......あー、ごめん全カットで。」
「キショいキショい!語るのは流石に背筋凍るわ。」
「...確かに俺も今のはやったなって思ったわ。」
 二人の茶化しに苦い表情を浮かべて赤城は地面に崩れ落ちた。その様子を見て佐々木と新山が馬鹿にするように声を出して笑った。
「いやー!しっかり恋愛脳になってんのオモロいなー。」
 佐々木が赤城の肩を掴み起き上がらせると赤城は嫌そうな顔で二人を見た。
「俺はお前にそんな事言わせるお前の彼女が誰なのか気になるわ。」
 新山の言葉に「もう俺の話はいいよ」と悲観的に言うと赤城は二人より早く歩き出し佐々木の家に向かった。
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