ノンフィクション

犀川稔

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7話 好きとその先

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 兄貴からの助言もありあの出来事の相手が新山さんだと知ったおれは翌週の放課後、学校終わりに急いで兄貴たちの学校に向かった。まだ新山さんが学校に残っていますように、と何度も願いを込めた。
 ここ後数日間、何度も新山さんがおれの家にくるタイミングを伺ったけど新山さんは家に来る事はなかった。兄貴に聞いても「知らね、バイトじゃね?」と言ってまともに話を聞いてくれなかった。
 校門前で立ち尽くしていると赤城先輩の姿が見えおれは藁にもすがる思いで飛びついた。

「...は?...あ。あー、なんだ佐々木の弟か。どうした?」
「赤城先輩、お願い。新山さん来るまで一緒に居てほしい......。」
「なに、あいつのこと待ってんのか......んー、じゃあちょい待ってて。」
 赤城はそう言うと一緒にいた女子に話をするとまた千隼の元に戻ってきた。
「あの人赤城先輩の彼女?」
「違う、ただの友達っすね。」
 そう答える赤城に「へぇー。」と千隼が返すと、赤城はめんどくさそうにため息を吐いた。
「ねぇ、せっかく頼りになる優しい先輩って思ってたのにそんな態度取ったら台無しだよ。」
「別に好かれたい相手でも無いのに気を遣うのも怠いわ。」
「...ってことは赤城先輩好きな人いんの?」
 身を寄せて好奇心旺盛に聞いてくる千隼を「近い、邪魔。」と言って突き放すと、赤城は千隼の持っていた袋に目をやった。
「何それ?」
「...来る途中で買った。」
「へぇー、俺が食っていー?」
「いいわけあるか。」
 千隼が赤城の頭を軽く手で叩こうとするとその手を横から掴まれた。
「あっ......。」
「千隼くん、なんでここいんの?つか、なんで赤城といんの?」
 いきなりの新山の登場に驚き千隼が答えられずにいると痺れを切らした赤城が横から口を挟んだ。
「なんでもなにも、お前が来るの一緒に待っててやったんだよ。彼、お前に話あって来たらしいよ。」
「あ、そうなの。」
 新山が気まずそうに千隼に目を移すと目があった後、千隼は小さく頷いた。
「...えっと、一緒に...帰る?」
「あ...はい、。」

 新山が千隼を連れて歩いていくと、佐々木が後を追うようについて行こうとした。そんな佐々木の肩を掴み「やめてやれ。」と赤城が止めた。
「お前って心広いよなー。あんだけ新山に噛みつかれても気にせず肩持ってやるの聖人すぎるって。なに、あいつに弱みでも握られてる?」
「違うしマジな恋愛したことないからなんとも言えないけど...なるんじゃない?本気ならあんな感じに。最後の方なんて完全に俺とお前空気だったじゃん、あいつ目線だと。」
 全てを見透かしたように赤城が言うと「まぁ確かに」と返した。

 あれから新山さんと一緒に帰っているけど全然喋らない...。それ以前に合わせようと思って早足で頑張ってるのにおれが前にいけばいった分だけ新山さんも早く歩き出す。そんなにおれの隣歩きたくないのかなー...そもそも今日来たこと自体迷惑だと思ってる可能性もあるし絶対やり方間違えた...かも。
 千隼は立ち止まると後ろを振り向いた新山に愛想笑いをした。
「おれちょっと用事思い出したんでやっぱり先帰ります。なんか...すみません。」
 暗い顔をして去ろうする千隼の手を新山が強く掴んだ。
「待って。」
 掴まれた手首を見たあと新山さんに顔を向けると悲しそうな顔をしていた。
 ......なんで。なんで新山さんがそんな顔してるの?おれと一緒に居たくないんじゃないの?
 おれは掴まれた手を思い切り振り解いた。しかし新山さんもまたおれの手を掴んだ。
「なんで...意味わかんない。」
 千隼が涙を溢しながらそう呟くと新山は千隼のことを抱きしめた。
「ごめん...他のやつに勝手に妬いて落ち込んで、そんで距離置いてた。自分勝手にして勘違いさせて本当ごめん。...それから......。」
 途中で話すのを止めた新山の方を千隼が見上げると新山も同じように泣いていた。
「ごめん...見つけ出すの遅くなって。四年越しになっちゃったけどあの時俺が言ったこと覚えて...ない、よね流石に。まじでごめん。」
 千隼のことを強く抱きしめると新山は何度も何度も謝った。
「早く...言わないの?おれずっと待ってたんだけど...やっぱ相手男だからって怖気付いた?」
 はっきり物を言う千隼に驚嘆した後、新山は薄く笑みを浮かべた。
「正直すぎだって。流石に今のこの俺のメンタルには優しくしてください......。ねぇ、本当にいいの?俺で。」
 不安そうに聞く新山に煩わしそうに舌打ちをすると千隼はネクタイを引っ張りそのままキスをした。唇が離れるとじっと新山のことを見つめて千隼が口を開いた。
「そっちが気長に待てって言ったんじゃん。......言わないならもうおれ本命別で作るけどいい...っんっ...」
 新山は千隼の首を掴んでもう一度キスをした。驚いた千隼が抵抗するも気にせず続けた。
「...っはぁはぁ......、ねぇなにす...」
「好き。」
「え...。」
「気持ちは変わってないよ。最初は完全に一目惚れだった。けど今はそれだけじゃなくて千隼くんの性格も顔も、全部まとめて好き。もう絶対逃さないし離さないから......俺と付き合ってほしい。」
 真剣な面持ちで告白する新山を見て千隼は顔を赤くした。そして一度泣き止んだ目元から一筋の涙を溢すと「付き合うに決まってるじゃん。」と掠れた声で言った。
「あ...俺二股とか絶対許さないタイプだけど今他いないよね、大丈夫よね?」
「...告白のすぐ後それ言うやつ大抵重いやつだよね。」
「あら、経験済みってこと?妬けるな~。」
 ニヤニヤ笑うながら言う新山の腕を軽く叩くと千隼は地面に落としたバックと袋を手に取った。
「今まで付き合って来た人全員、告られたから付き合ってただけでそもそも新山さんが告白してきたら別れる気でいたよ。......ってまぁ、そのくらいちゃんとおれも好きってこと...あ、この前くれたたい焼き同じ味買ってきたけど食べる?どっちがいい?」
 冷静に話す千隼の話を聞いた後、新山は嬉しそうに「え?待って今のもう一回言って。」と聞き返した。
 それに対して「たい焼きどっちがいい?」と千隼が聞くとそこじゃない、と拗ねたように下を向いた。
「......新山さん変わらずに好きでいてくれてありがとう。」
 耳元でそう囁くと千隼はあんこの方を新山に渡した。千隼の話を聞いて嬉しそうに笑いかけた。
「友達じゃないから400円払った方がいー?」
 この間自分がかけた言葉を返すように言ってきた新山に頬を膨らしてヘソを曲げるとその後千隼は不器用に笑い返した。

「恋人ならお返しは“愛”でお願いします。」


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 (一方その様子をかなり離れたところから
 見ていた佐々木と赤城)

赤城
「お前バレたら後で新山にボロカス言われるぞ。」
佐々木
「大丈夫大丈夫!あいつ目悪いし口も悪いし性格も悪いから!」
赤城
「...今の録音したからあいつに送っとくわ。」
佐々木
「お前新山と同じくらい性格悪りぃな。お、抱きついたぞ。あいつらやってんねぇ!...つかお前もそろそろまた恋愛してもいいんじゃね?俺茶化したいし。」
赤城
「作ろうと思って作るもんじゃないでしょ、恋人なんて。まぁ上手くいけば万々歳だけどね。」
佐々木
「ほ~ん...?ってことは気になってるやつは居んだ?」
赤城
「...さぁね。」
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